何かと“ちょうどいい”ハイエンドGPU「Radeon RX 7900 GRE」が日本上陸 実力をチェック!

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2024年02月26日 23:11  ITmedia PC USER

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Sapphire Technology製グラフィックスカード「NITRO+ AMD Radeon RX 7900 GRE GAMING OC 16GB」

 WebページでPCパーツの情報をつらつら眺めていると、なじみのない型番やモデルに出会うことがある。AMDのデスクトップ向けGPU「Radeon RX 7900 GRE」は、そんなものの1つだろう。


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 このGPUは同社のWebサイトに情報が掲載されているものの、一部の国/地域限定で展開されている。そのため、この記事を見て初めて存在を知ったという人もいるかもしれない。


 そんなRadeon RX 7900 GREだが、同GPU搭載するグラフィックスカードが2月27日(米国太平洋時間)から、全世界で販売されることになった。米国における想定販売価格は549ドル(約8万2600円)で、日本でも近日中に発売される予定だ。


 発売に先駆けて、AMDからSapphire Technology製グラフィックスカード「NITRO+ AMD Radeon RX 7900 GRE GAMING OC 16GB」を借りることができたので、その実力をチェックしていく。


●Radeon RX 7900 GREの仕様を確認


 まず、Radeon RX 7900 GREのスペックをチェックしてみよう。


 名前の通り、このGPUはRDNA 3アーキテクチャを採用する「Radeon RX 7000シリーズ」のラインアップの1つで、シリーズ上位モデルの「Radeon RX 7900 XTX」「Radeon RX 7900 XT」と同じコア「Navi 31」を採用している。スペック的にはRadeon RX 7900 XTと「Radeon RX 7800 XT」の間に入る製品だ。


 当然ながら、Radeon RX 7900 XTXやRadeon RX 7900 XTと比べると、性能は抑えられている。しかし、その代わりに最大消費電力が260Wと、300Wオーバーの上位製品と比べると低めだ。


 ゲーミングにおけるターゲット解像度は1440p(WQHD/2560×1440ピクセル)となる。ただし、超解像技術「FidelityFX Super Resolution(FSR) 2.1」をサポートしているため、タイトルによっては2160p(4K/3840×2160ピクセル)解像度でも十分なフレームレートを実現できるという。


 主なスペックは以下の通りだ。


・演算ユニット(CU)/レイアクセラレーター:80基


・AIアクセラレーター:160基


・ストリームプロセッサ(SM):5120基


・ゲームクロック:1880MHz


・最高クロック:2245MHz


・グラフィックスメモリ:16GB(GDDR6規格/18Gbps/256bit)


・Infinity Cache(L3キャッシュ):64MB


・映像出力:DisplayPort 2.1(UHBR10対応)/HDMI 2.1a


・接続バス:PCI Express 4.0 x16


・GPU補助電源:8ピン×2


・消費電力:最大260W(推奨電源容量:700W以上)


●レビューするグラフィックスカードをチェック!


 冒頭で触れた通り、今回のレビューはSapphire Technology製の「NITRO+ AMD Radeon RX 7900 GRE GAMING OC 16GB」を使って実施する。というのも、Radeon RX 7900 GREにはリファレンスデザインの(AMDが設計した)グラフィックスカードが用意されないからだ。


 Radeon RX 7900 GREを搭載するグラフィックスカードは、主要なパートナー企業から発売される予定だが、いずれも3連ファンを備える3スロット厚で、全長は300mmを超える。本カードの場合、具体的な寸法は約110(幅)×276(奥行き)×51(厚さ)mmとなる。


 3連構成のクーラーはもちろん、バックプレートもかなりしっかりしたものが装着されている。7900 XTX/XTと比べると下位モデルかもしれないが、Radeon RX 7000シリーズ全体から見れば“上位モデル”なので、当然といえば当然なのかもしれない。


 GPUの補助電源は、定格仕様と同じく「8ピン×2」構成となっている。また補助電源コネクターの隣には、RGBイルミネーション用の3ピン端子も用意されており、対応マザーボードと接続することで本カードと他のLEDイルミネーションを連動してコントロール可能だ。


 ディスプレイ出力は、DisplayPort 2.1端子が2基(UHBR13.5対応)、HDMI 2.1a端子が2基の計4基となる。カード単体で最大4画面の出力を同時に行える。


 ハイエンドモデルらしく、大きさや外観は豪華だ。Radeon RX 7900XTX/XTの下位モデルとはいっても、上位パーツで組んだPCらしい見た目に仕上げられるだろう。


 次のページからは、ベンチマークテストを通してRadeon RX 7900 GREの実力を試していく。


●ベンチマークテストで実力をチェック


 ここからはRadeon RX 7900 GREの実力を各種ベンチマークテストを通じチェックしていく。


 今回は機材調達の都合から、Intelの「Core i7-12700F」を搭載する自作PCでテストを実施した。グラフィックスドライバーは、AMDから提供された「バージョン23.40.19.01」(テスト版)を利用している。


 比較として、過去にテストを行ったRadeon RX 7900 XTX/XTや「GeForce RTX 4070 SUPER」のテスト結果も掲載する。一部パーツ構成が異なるものもあるため、あくまでも参考値として捉えてもらえると幸いだ。


3DMark


 まず、3Dグラフィックスのパフォーマンスをチェックする「3DMark」で幾つかのテストを実行してみる。今回はDirectX 11ベースのFire Strikeシリーズと、DirectX 12ベースのTime Spyシリーズ、リアルタイムレイトレーシング(RT)の性能をチェックするPort Royalを実行した。総合スコアは以下の通りだ。


・Fire Strike(フルHD描画)


・Radeon RX 7900 GRE:3万5321ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:4万1594ポイント


・Radeon RX 7900 XT:4万383ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:3万5720ポイント


Fire Strike Extreme(WQHD描画)


・Radeon RX 7900 GRE:2万5123ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:3万2910ポイント


・Radeon RX 7900 XT:2万9961ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:2万3216ポイント


Fire Strike Ultra(4K描画)


・Radeon RX 7900 GRE:1万4477ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:1万9649ポイント


・Radeon RX 7900 XT:1万7030ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:1万2407ポイント


Time Spy(WQHD描画)


・Radeon RX 7900 GRE:2万1117ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:2万6668ポイント


・Radeon RX 7900 XT:2万4479ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:1万9942ポイント


Time Spy Extreme(4K描画)


・Radeon RX 7900 GRE:9909ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:1万3700ポイント


・Radeon RX 7900 XT:1万2404ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:9435ポイント


Port Royal


・Radeon RX 7900 GRE:1万2296ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:1万5624ポイント


・Radeon RX 7900 XT:1万3801ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:1万2911ポイント


 結果的には、おおむねAMDが想定している“仕様通り”となった。Radeon同士で比較すると、単純に各種コアの数に比例して性能が変動するといった感じだ。


 一方で、同じ1440pをターゲットとするGeForce RTX 4070 SUPERと比べると、それよりは着実に高い性能をマークしている。なお、AMDではRadeon RX 7900 GREのライバルとしてGeForce RTX 4070 SUPERや「GeForce RTX 4070」をターゲティングしているようだ。


FF14/15ベンチマーク


 続いて、実際のゲームタイトルをベースとするベンチマークテストアプリを使ってパフォーマンスをチェックしてみよう。


 まず、少し軽めの「ファイナルファンタジーXIV : 暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」をフルHD/WQHD/4Kの3つの解像度の最高画質でスコアを測った。結果は以下の通りだ。


・フルHD


・Radeon RX 7900 GRE:2万7313ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:3万2363ポイント


・Radeon RX 7900 XT:3万2379ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:2万8726ポイント


WQHD


・Radeon RX 7900 GRE:2万3661ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:2万9492ポイント


・Radeon RX 7900 XT:2万8261ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:2万4482ポイント


4K


・Radeon RX 7900 GRE:1万4052ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:2万170ポイント


・Radeon RX 7900 XT:1万7567ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:1万5118ポイント


 Radeon同士の比較は、3DMarkと同じく7900 XTXや7900 XTに次ぐ第3位だった。注目したいのがGeForce RTX 4070 SUPERとの比較で、こちらは3DMarkとは異なり、スコア面で逆転されてしまっている。


 ご存じの通り、FF14はNVIDIA製GPUに最適化されている。当然ながら、同じグラフィックスエンジンを用いるFF14ベンチマークも、同社製GPUの方がスコア面で“有利”だ。そのため、このスコア差も想定の範囲内ではある。


 ただ、7900 GREと4070 SUPERの差は、それほど大きくはない。極端に「こっちの方が高性能」ということもないので、単純に値段だけを考えれば7900 GREは1440pゲーミングを手頃に快適化できるGPUだと言ってもよいだろう。


 負荷がより重い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(FF15ベンチマーク)」も試してみた。こちらも、FF14同様にNVIDIA製GPUに最適化されているので、順当に行けば4070 SUPERの方がスコア面で有利な予感もする。


 結果は以下の通りだ。


・フルHD


・Radeon RX 7900 GRE:1万7424ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:2万1304ポイント


・Radeon RX 7900 XT:2万252ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:1万8842ポイント


WQHD


・Radeon RX 7900 GRE:1万3641ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:1万7436ポイント


・Radeon RX 7900 XT:1万5913ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:1万4824ポイント


4K


・Radeon RX 7900 GRE:7713ポイント


・Radeon RX 7900 XTX:1万528ポイント


・Radeon RX 7900 XT:9007ポイント


・GeForce RTX 4070 SUPER:8522ポイント


 予想通り、FF14ベンチマークと同様に7900 GREは4070 SUPERに負けてしまっているが、WQHD解像度でゲームを楽しむという観点では十分なスコアを確保している。条件的なハンディを考えれば健闘しているといえるだろう。


 より負荷の高いゲームや、クリエイター向けアプリのパフォーマンスもチェックしていこう。


重量級のゲームタイトルで超解像技術の効果を確認!


 ここまでの結果で、Radeon RX 7900 GREは1440pゲーミングを楽しむに十分なパフォーマンスを備えており、タイトルによっては4Kゲーミングも楽しめそうなことは分かった。それはより重いゲームタイトルでも同様なのだろうか。


 そこで超重量タイトルの代名詞ともいえる「Cyberpunk 2077」のベンチマークモードで、4K描画時における平均フレームレートをチェックしてみよう。画質プリセットは「ウルトラ」、他の設定も「画質優先」とした上で、FSRを無効(ネイティブ解像度描画)/有効(アップスケーリング)の両方における平均レートを計測した。FSR有効時の設定は「パフォーマンス」(フレームレート最優先)としている。


 結果は以下の通りだ。


・FSR無効(4Kネイティブ)


・Radeon RX 7900 GRE:44.36fps


・Radeon RX 7900 XTX:64fps


・Radeon RX 7900 XT:56.88fps


FSR有効(4K出力/パフォーマンス優先)


・Radeon RX 7900 GRE:134.81fps


・Radeon RX 7900 XTX:195.26fps


・Radeon RX 7900 XT:196.18fps


 4Kネイティブの描画でも平均で30fpsをマークしているので、プレイできなくはない。しかし、これだとシーンによっては30fpsを割り込みカクついてしまうので、快適かと言われればそうでもない。


 それに対し、FSRを有効にしてプレイすると平均で120fpsを余裕で上回る。これなら60Hz超の高リフレッシュレートのゲーミングディスプレイを生かすことができる。FSR対応タイトルで「ちょっと重いかな」と思ったら、FSRを有効にするといいだろう。


●動画の書き出し性能をチェック!


 最近のGPUに求められるのはゲームの性能だけではない。クリエイター向けのアプリケーションを快適に動作させるのにも、高性能なGPUは求められている。


 今回は「Adobe Premier Pro」を使った4K動画の書き出しテストのみを実施する。「GoPro HERO 10」を使って撮影した数本の4K動画を30分ほどにまとめて書き出すのに要した時間を比較した結果は、以下の通りとなった。


・Radeon RX 7900 GRE:4分56秒


・Radeon RX 7900 XTX:4分44秒


・Radeon RX 7900 XT:4分52秒


・GeForce RTX 4070 SUPER:7分41秒


 Radeon RX 7000シリーズのAV1対応メディアエンコーダーは、そのパフォーマンスの良さに定評がある。7900 GREもご多分に漏れず、上位2モデルとほぼ同じ時間で書き出せている。


 このことは、見方を変えると動画のエンコード重視の場合に上位GPUを選ぶ動機に乏しいということでもある。動画エンコードは一定水準の性能を備えることを前提として、後はどのくらいの3Dグラフィックス性能があればいいのか考えるというのが、Radeon RX 7000シリーズの正しい選び方なのかもしれない。


●ちょうどいいハイエンドGPU


 最後に消費電力だが、今回のテスト環境でWindows起動後の落ち着いた時点の「アイドル時」と、Time Spy Extreme実行時における「ピーク時」で比べると以下の通りとなった。


・アイドル時:81W


・ピーク時:391W


 推奨電源容量は、700Wとハイエンドのビデオカードの割には少ない。実測値でも、高負荷時で400Wを下回るため、既存のPCのグラフィックスボードから入れ替えた場合でも、多くの場合において容量不足とならずに動かせる。そうなると「既存のGPUからアップグレードする場合に、このGPUはどうなんだ?」という疑問が湧いてくる。


 現行のRadeon RX 7000シリーズとしては上位となる「7900」を冠するモデルにおいて、Radeon RX 7900 GREは“エントリー”という位置付けだ。先行して登場した上位2モデルと比べると、ターゲット解像度は1440pと1段階低い。「本当なら『Radeon RX 7800 XTX』くらいの名前がいいんじゃないか?」と思っていたのだが、実際に試してみると7900を冠する意味が見えてきた。


 4K解像度に対応する、ゲーミング向け高リフレッシュレートディスプレイはまだまだ選択肢が少ない上に、価格も非常に高い。一方で、フルHDあるいはWQHD解像度くらいまでなら、手の届く価格の高リフレッシュレートディスプレイが増えてきている。


 現在、アップグレード先として選ばれることの多いWQHD(1440p)をターゲットに、余裕のある性能のGPUを投入するということは、「多くの人が最上位相当の性能を享受できる」というメリットがあるのだ。動画エンコードにも強いという点も合わせると、多くは1080pで配信されることの多い「ゲーム配信」にも向いている。


 配信用解像度でゲームをプレイして快適で、さらにメディアエンコーダーを生かして軽負荷で配信も行えるとなれば、特に配信者向けの最も“ちょうどいいハイエンドGPU”といえるかもしれない。


●おまけ:Radeon RX 7700 XTは値下げ


 AMDは2月26日(米国太平洋時間)、「Radeon RX 7700 XT」の販売価格を値下げした。同GPUを搭載するグラフィックスカードは従来、想定販売価格が449ドル(約6万7600円)からに設定されていたが、改定後は419ドル(約6万3100円)からとなる。


 AMDによると、この値下げは日本市場にも適用されるとのことだが、値下げ後の価格については店頭などで確認してみてほしい。


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