JALニューヨーク線・最新ファーストクラス 飛行機であることを忘れさせる空間とは?【搭乗レポート(前編)】

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2024年02月28日 12:11  TRAICY

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日本航空(JAL)は1月24日、約20年ぶりの新たな国際線フラッグシップとなるエアバスA350-1000型機の運航を開始した。筆者は、このエアバスA350-1000型機のファーストクラスに搭乗し、JALが自信をもって送り出した新旗艦機の実力を探ることにした。

本当に飛行機?今まで見たことがない空間の衝撃

筆者が搭乗したのは、ニューヨーク/ジョン・F・ケネディ発東京/羽田行のJL5便。エコノミー・プレミアムエコノミー・ビジネスの各クラスはほぼ満席の盛況。ファーストクラスは6名の定員に対して3名が搭乗していた。

今回は、L2ドア(左前方の前から2つ目のドア)からの搭乗。ビジネスクラスの区画の中央付近からの搭乗だ。

客席に入ると、まず、約132センチのビジネスクラスの客室の”壁”に圧倒される。この壁は単なるプライバシーを確保するための仕切りではなく、空間を創出するための”壁”だと直感した。

最近は個室や半個室のビジネスクラスが増えたものの、壁は様々な制約のなかでプライバシーを確保することに重きを置かれがちであったが、A350-1000型機のそれは全く違う。一人ひとりの乗客を包み込む空間を作るためにあるのだと感じた。

ただ、今回筆者が利用するのは、そのビジネスクラスではなく、さらに上級のファーストクラスなのである。

ファーストクラスは全6席で「1-1-1」配列。通路からはとても高い”壁”が視界を覆い、深紅の座席が少し見える。これが飛行機の座席なのか、と筆者は文字通り絶句した。

筆者はJALの他路線で運航しているボーイング777-300ER型機のファーストクラスの搭乗経験があるが、その経験をはるかに超えるファーストインプレッションだ。思わず圧倒される。

客室の詳細などはファーストクラスを取り上げた「別記事」に譲ることとして、実際に乗客として、ファーストクラスで何を体験し、何を感じたかを記していこう。

現実とも、飛行機とも思えない、空間にただただ戸惑うばかり

最近では飛行機の客席にディスプレイがあることはそこまで珍しいことではない。だが、このファーストクラスは見慣れた「飛行機のディスプレイ」ではない。いや、画面があるというところは同じであるが、それ以外全部違うのだ。

ファーストクラスで作り出される自分だけの空間のなかで、飛行機と思えない大きな、それでいて繊細な4K個人モニターを眺める。43インチのディスプレイも存在自体は特に珍しくないが、飛行機では最大級のサイズであり、さらにそれが全く画質の粗さを感じさせない4K解像度であるから、いよいよ自分が飛行機の中にいるかわからなくなる。

わからなくなった後、プライベート空間の心地よい閉塞感や、シートベルト、エンジンなどの音で、飛行機の中にいることを確認させられて、機内の中にいるという認識に引き戻される。

ディスプレイに限らず、ファーストクラスの様々な要素が、今までのファーストクラスの客席の知識・経験や飛行機の体験と乖離していて、はっきり言えば、短時間で理解することが難しい。この記事を書きながら理解しつつあるが、それでも、あの空間に本当にいたのだろうか、と時折夢見心地になる。

本当にあの空間は何だったのだろうか。

空の上であう日本らしさ 完成された食事を通して気付いたこと

JALのファーストクラスの食事は、世界的にも高い評価を獲得し続けている。今回は和食を選んだが、その評価を裏付けする非常に完成度の高いものであった。

今回選んだ座席では、2つの窓から外を眺めることができた。窓からの景色が期待できない状況でも、大画面のディスプレイで機外カメラやフライトマップを眺めてよいかもしれない。

ちなみに、筆者は窓からの景色も、ディスプレイでのコンテンツも楽しんだが、ある程度楽しんだところで、気づいたことがある。

それはこの、「全く飛行機にいると思わせない空間」で、「飛行機にのり、空を飛んでいる」ことを実感することが食事のスパイスであり、おそらくこの状況のなかで最も料理を引き立てる物質の一つである、ということである。

にわかに信じられないことかもしれないが、他の人の存在を感じさせない空間で、大きなディスプレイを消すか、変化のない機外カメラの映像を眺めつつ、静かなエンジンに耳を澄ませながら、上空での喫食のために味付けされた食事を楽しむこと、それ自体が最大の贅沢であると感じた。

エコノミークラスからファーストクラスまで、さまざまな飛行機の客席に座ってきたが、そんな感情になることを想像したことすらなかった。飛行機の空間なんて、ぶっきらぼうでいろいろな物音がして落ち着くとは程遠い環境だと思っていたが、その既成概念を覆される空間が、ファーストクラスにはあった。

多彩なアラカルトとドリンクメニューで楽しむ贅沢な時間

JALの長距離国際線の場合、ビジネスクラス以上ではアラカルトメニューを楽しむことができる。それぞれのメニューがどれも手が込んでおり、メインメニューとしても遜色ないような多彩なメニューを楽しむことができる。

ニューヨーク発の場合、期間限定で「宮崎キャビア1983プレミアム」を楽しむことができる。キャビアは質の悪いものであると、臭みを感じ、独特な風味と相まって、おいしく味わうことができないこともあるが、今回のキャビアはそんな記憶を覆す、味わい深いものであった。キャビアの小さい粒から想像できないほどの熟成された旨味があふれ出てくる。本当に魚卵なのかと疑いたくなるようなクリーミーさも特徴だ。是非一度は味わいたい逸品であることは間違いない。

また、お酒を含む多彩なドリンクを嗜むこともできる。

シャンパーニュや日本酒も楽しんだが、筆者が個人的に今回のファーストクラスで楽しんだのは、ROYAL BLUETEAの「Queen of Blue Deluxe」だ。最高級青茶の「東方美人」を贅沢に使用したお茶として知られ、JALのファーストクラスで提供されるこだわりの逸品の一つ。機内では気圧の関係で味覚などが衰えると言われるが、その独特な、とはいえ飲みやすい甘みを交えた風味や、高貴な香りに思わず呑み込まれる。

このQueen of Blue Deluxeを筆者が気に入った理由としては、他の飲み物と比べ、料理を選ぶことなく、ほとんどの料理にあうという事実だ。和食にも洋食にも、前菜にも甘味にも合う料理を邪魔しない存在でありながら、それ自体の魅力も充分に味わえる、主役にも脇役にもなる存在であることに惹かれたのである。

JALの最長路線だから味わえる、ファーストクラスの”真髄”とは?

いままで綴ってきた体験は、JALの最長路線、ニューヨーク線のファーストクラスのほんの一部だ。JALが19年ぶりに刷新した新旗艦機・A350-1000型機の、最上級クラスを語るには、まだ触れていない重要な点がある。後編では、余すことなくその”真髄”を触れていくことにしよう。(後編に続く)

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