村上亮太手掛ける「ピリングス」、サザビーリーグの"仲間"になる パリでのショー開催も視野に

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2024年03月01日 10:01  Fashionsnap.com

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左:村上亮太 右:根岸由香里

Image by: FASHIONSNAP
 村上亮太が手掛ける「ピリングス(pillings)」が、サザビーリーグと事業譲渡契約を締結したことを発表した。2023年12月に契約を締結し、既にピリングスの事務所を東京・千駄ヶ谷のサザビーリーグ本社内に移転。株式譲渡は行わず、株式会社ピリングスは現状のまま残る。2024年秋冬シーズンから、サザビーリーグの運営とサポートのもとで村上がデザイナーとしてコレクション製作を行い、パリでのショー発表も視野に入れながら、ブランドのさらなる拡大を目指していく。

 ピリングスは、2014年に前身となる「リョウタムラカミ(RYOTAMURAKAMI)」としてブランドをスタート。当初は母・村上千秋と2人で手掛けていたが、2018年春夏コレクションから村上亮太が単独でデザインを担当し、日本国内の多数のハンドニット職人とともにコレクションを製作している。様々な人たちと協業することで起こる化学反応がブランドの魅力に繋がっていることから、2020年にブランド名を摩擦によって生まれる"毛玉たち"を意味する「ピリングス」に改名。「ものづくりの愛おしさ、背景を創造性を持って表現していくこと」をコンセプトに、ハンドニットアイテムを中心としたコレクションを展開している。現在は、サザビーリーグのリトルリーグカンパニーが運営するセレクトショップ「ロンハーマン(Ron Herman)」をはじめ、国内外約10店舗で取り扱っている。

 ロンハーマンでは、2023年春夏シーズンからピリングスの取り扱いをスタート。買い付けを担当したロンハーマン ウィメンズディレクターの根岸由香里は、「TOKYO FASHION AWARD 2022」の受賞デザイナーとして村上が2023年9〜10月のパリファッションウィーク期間中に参加した展示会を訪れた際、「ピリングスの他にはない面白くてずば抜けたクリエイションに惹きつけられ、その場で買い付けを決めました。そして、もっとブランドとしての体力をつけて仕組みを整えればさらなる上のステップを目指していけるのではないか、そのバックアップをサザビーリーグができるのではないかと思い、声を掛けさせて頂きました」と、今回の事業譲渡契約に至った経緯について説明する。
 同社のカンパニー会社であるリトルリーグは、これまで15年にわたって海外ブランドを日本で展開する事業を軸にしてきたが、新しい取り組みとして日本の才能ある若手が次のステップを目指していくためのサポートなど、海外との既存のパイプやアパレルメーカーとしてのノウハウや仕組みを生かした、日本ブランドの輸出事業を画策しているタイミングだったという。今回の村上とのタッグは、サザビーリーグにとっても将来に向けた新たな挑戦となる。

 今後は村上のクリエイションやブランドの良さを生かしながら、これまでは人的・資金的理由で実現できなかった部分をサザビーリーグがバックアップし伸ばしていく。具体的には、従来の村上とスタッフ1人の計2人体制での運営母体に、リトルリーグの生産・MD・PR・セールス部門などがサポートに入るほか、1シーズン20程度だった型数を30〜40に拡大していく予定。また、ピリングスの強みであるハンドニットを制作できる新たなニッター人材の募集・育成を進めるとともに、村上のクリエイションの個性やテイストは残しつつも、自動機を用いて価格を抑えた、より多くの人にリーチできるアイテムのバリエーションも増やしていきたい考えだ。現状、直営店や路面店などの出店は考えておらず、今後はロンハーマンをはじめ、ブランドの良さを理解し長く付き合っていける卸先を見極めながら、国内のセレクトショップや百貨店などでの取り扱いを増やしていく。

 社内的な売上目標はあるとしながらも、サザビーリーグとピリングス双方が第一に目指しているのは「数字」ではなく、あくまで個性豊かでユニークな村上のクリエイションをいかにより多くの人に知ってもらい、広げていくかという部分だという。村上は「数字や利益的な面よりも、ピリングスのクリエイションやブランドとしてやっていきたいと考えていることに『面白そう』と共感して一緒に取り組もうとしてくれているので、とてもありがたいし安心しています。今後も表現すること自体は変わらずにやりつつも、これまで自分一人ではできなかった部分を、会社と話し合いながら広げていきたい」と期待を込めて話す。
 サザビーリーグからの後ろ盾を得た村上が将来的に目指しているのは、「ニット工房の立ち上げ」と「パリでのショー発表」だ。村上は、これまでもアトリエ「K'sK」代表の岡本啓子と共同でニットスクール「アミット(AMIt)」を開校するなど、ニッターの活躍の場を増やすような活動を行ってきた。深刻な高齢化が進む業界の中で、今後は若いニッターの人材育成とともに、ニッターの魅力や職業としての地位を向上させられるような取り組みを行っていくという。
 村上は「ハンドニットは趣味や手芸という印象が強く、工賃も割安になってしまっているのが現状。若い人たちにニッターをもっとかっこいい仕事と思ってほしいし、それをブランドとしても打ち出していきたい。将来的には、工房を立ち上げてブランド自体をニットスタジオのようにし、そこで働く職人たちと外部から来たクリエイターとの間で面白いものが生まれるような場所を作れたらと考えています。その最終目標に向けた道筋として、より多くの人にブランドや僕の表現の面白さを知ってもらえるようにパリにも進出したい」と意気込みを語る。明確な時期は未定だとしているが、日本での基盤を固めたのちに、2025年秋冬シーズンを目標にパリでのショー開催を目指すという。


■ピリングス:公式サイト
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