【インタビュー】真田広之、ドラマ『SHOGUN 将軍』に「本物の日本」が宿る意義

0

2024年03月01日 13:00  ORICON NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ORICON NEWS

ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』(ディズニープラス)主演・プロデューサーの真田広之(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
 動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」の「スター」で27日から独占配信が始まったディズニーが持つ製作会社の一つ「FX」によって制作されたドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』(全10話)。「誤解された日本を描く時代を自分の世代で終わらせたかった」とハリウッドへ移住し、自らの手で活躍の場を開拓してきた俳優・真田広之が、約20年かけてたどり着いた一つの到達点であり、未来への第一歩でもあるこん身の一作だ。

【動画】『SHOGUN 将軍』|本予告

 原作は、映画『大脱走』や『いつも心に太陽を』の脚本などでも知られるジェームズ・クラベルが1975年に発表した小説『将軍』。日本の戦国時代を舞台に、徳川家康ら歴史上の人物からインスパイアされた登場人物たちによる覇権争いに、海を渡って日本にやってきた英国人、アジア圏の貿易を独占していたポルトガルの宣教師や商人らも絡んで、関ヶ原の戦いに突入していくさまを描く。1980年には米国でドラマ化され、三船敏郎などが出演。絶大な人気を博し、欧州や日本では再編集版が劇場公開されて大きな反響を集めた。

 約40年を経ての再映像化となる本作への期待は非常に高く、米大手レビューサイト「Rotten Tomatoes」では「100%」の高評価、「2月に観たいテレビ/ストリーミング番組リスト」のトップに挙げられた。真田が主演兼プロデューサーとして本格的に制作にも加わっていることも、期待と安心感につながっている。

 「戦国時代の日本を初めてに近い形で紹介したのが原作小説だったと思うんです。80年代のドラマも日本の文化に興味を持つ人が増えるきっかけの一つになった。それから時代が進んで、街なかのスーパーマーケットでも寿司が販売されるようになって、ネットで少し調べれば日本の情報に触れられる。なので今回は、物語を信じて、集中して観てもらうために、すべてをオーセンティックに作り込む必要があると思いました。カルチャーギャップを面白がるのでもなく、ステレオタイプな侍を描くのでもない、普遍的なドラマを目指しました」。

■いち俳優としてできることに限界を感じていた

 真田と本作の旅が始まったのは、本作がまだ企画段階だった2016年頃。「最初、俳優として主人公・吉井虎永役のオファーをいただきました。引き受けるにあたって、日本人の役は日本人がやり、日本から時代劇専門のスタッフを呼ぶことを求め、それを言い続けていたら、ジャスティン(エグゼクティブプロデューサー/ショーランナーのジャスティン・マークス)やレイチェル(エグゼクティブプロデューサーのレイチェル・コンドウ)から、プロデューサーとして力を貸してくれないかという話になったんです」。

 映画『ラスト サムライ』出演をきっかけに、「誤解された日本を描く時代を自分の世代で終わらせたかった」とハリウッドへ移住し、「日本を正しく描きたい」と孤軍奮闘してきた真田にとって、プロデューサー兼務の要請は願ってもないことだった。「いち俳優としてできることはこれまでもやってきたが、限界がありました」。

 本作では、プロデューサーとして堂々と辣腕(らつわん)をふるっていく。「まず脚本作り。歴史的、文化的に適切であるように歴史考証を徹底し、僕がキャラクターに合わせて直すこともありました。英語から日本語、日本語から英語への翻訳にも目を光らせ、何度もキャッチボールをしながら作っていきました。ユニバーサルな人間ドラマにするために、西洋風にも現代風にもならないよう意識しました」。

 スタッフ集めでも。「40年ちかく共に時代劇を作ってきた仲間たち、結髪や衣装、セットデザインの職人に声をかけて、参加していただきました。所作や殺陣の指導は、統括1人と侍専門、女性専門の3人体制を整えました。キャスティングについて意見を聞かれたら、自分の意見と理由を述べることもありました」。

■初めてのプロデューサー業に全力「今までにない幸せを感じました」

 撮影は、カナダのバンクーバーで9ヶ月にわたって行われた。現地のスタッフと日本の専門家やアドバイザーたちが、日本を舞台とした物語を忠実に映像化すべく力を合わせた現場で、「橋渡し役」として縦横無尽に活躍していたのが真田だった。

 都内で行われた配信記念試写会では、登壇したキャストからプロデューサー・真田への称賛が相次いだ。英国人航海士ジョン・ブラックソーン(按針)役のコズモ・ジャーヴィスは「聞きたいことがある時、常にそこにいてくれた」。虎永と敵対する石堂役の平岳大は「ご自身の出演がない日でも毎日、最初から最後まで現場にいて、エキストラの衣装や髪形を直すことまでしていた」と証言。厳寒の夜の撮影で、馬上の平が家来と話すシーンでは、「離れた温かい場所にいる監督からの僕へのダメ出しを、真田さんが行き来して伝えてくれて、芝居どころじゃなくなるくらいお世話になりました」と、笑いながら明かしていた。

 真田は「初めて海外での撮影に参加する人も多く、勇気を持って飛び込んできてくれたので、ときに通訳をしたりしながら、彼らの最大限の良いパフォーマンスを引き出すのが自分の仕事だと思っていました。稽古(けいこ)、リハーサル、本番と、できる限りのことをし、モニターを毎カットチェックして、いいパフォーマンスができてその場にいた全員が『いいね!』と一致した時の喜びたるや、今までにない幸せを感じました」。

 前述の配信記念試写会で「長い旅路の果てにようやく日本の観客の皆さまにお披露目できる日が来たことをうれしく思います。ここにいる、そしてここにいない多くのスタッフやキャストの情熱の結晶を見ていただける日がきてうれしいです」とあいさつした真田。インタビューでも、「日本人の役は日本人がやり、日本から時代劇専門のスタッフを呼ぶ。今までなかなかできなかったことが、今回は実現できた。プロデューサーという役割をいただけたからできたことでもあり、僕にとって初めての経験になりましたが、いやぁ、楽しかったですね。何より、ジャスティンやFXスタジオが日本の俳優や職人たちを信じて、認めてくれたというのは大きな一歩だと思います」と笑顔をのぞかせた。

 真田の目は、日本だけでなく、世界にも向けられている。「家康は、戦乱を終わらせ、260年にわたる平和な時代の土台を築いたヒーロー。悲しいことに、この作品の撮影中に新たな戦争が起こり、ポストプロダクションの間にまた違う戦争が起き、ますます家康のようなヒーローが必要な時代になってしまった」と吉井虎永のモチーフになった徳川家康に思いを馳せる。

 「虎永と按針のストーリーと、このドラマが作られた過程、メイキング・オブ・『SHOGUN 将軍』がオーバーラップします。洋の東西の壁を乗り越え、文化、宗教、目の色の違うスタッフ・キャストが集まって一つのことを成し遂げる。人々が互いを認め合って、尊重し合っていけば、奇跡は起こるんじゃないか。それが、世界配信されるこのドラマの大きなメッセージになった気がします。より良い未来のために何か感じ取ってもらえたら」と、言葉に熱が乗っていた。

 ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』は2月27日より動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」の「スター」にて独占配信中。初回は2話配信、その後毎週火曜に1話ずつ配信。最終話は4月23日。

ヘアメイク:高村義彦(SOLO.FULLAHEAD.INC)
    ニュース設定