J3覇者・愛媛FCの強さの秘密を探る!影の立役者が明かすチーム改革術とは

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2024年03月03日 08:11  TVerプラス

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3月2日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25〜)は、今季からJ2に昇格した愛媛FCの取締役・村上茉利江がゲスト出演。サッカー素人の村上が取り組んだクラブ改革に迫った。

一橋大学大学院の経営学修士を取得し、日本IBMに入社した村上は、31歳のときにコンサルティング会社に転職。多くの企業の立て直しを手助けしてきた。そんな彼女に大きな転機が訪れたのは2021年のこと。父であり、愛媛FCの社長・村上忠に呼び寄せられ、クラブの取締役に就任することとなる。

愛媛FCは2019年に7500万円の赤字を計上し、翌年の2020年には父の忠が私財1億円を投入した。当時の状況について村上は「新聞記事で“1億円の私財を投入する”と発表されまして、(父から)家族LINEにも“君たちに使えるお金はなくなった”というのが来て。私にも組織づくりとかお金の管理を手伝ってほしいっていうのがきっかけですね」と回顧。MCの勝村政信からの「“これ私がやらなきゃいけないの?”みたいな感じだったんですか?」という質問には、「サッカーのことはまったくわからなかったんですけど、今まで経験のない事業に挑戦するいいチャンスじゃないかなと思いました」と、前向きな気持ちだったことを打ち明けた。

こうして愛媛FCの取締役に就いた村上は、クラブ改革の一つとして、当時のチームに蔓延していた“他責マインド”を変えるところから着手。2021年はクラブがJ3に降格したこともあり、責任のなすり合いと風通しの悪さが顕著になっていた。こうした空気を変えるために、村上は1対1の面談を実施。クラブの意思決定権を持つ村上が定期的に選手やスタッフと話す機会を設けて、気兼ねなく相談できる関係を築くことで、不満や問題の芽を摘み取っていった。

面談では選手とLINEアドレスの交換も行っており、村上は「何かあって不信感が募るくらいなら、直接連絡できる関係を作っておいたほうがいい」と主張。実際にこの日、面談を行った選手の浜下瑛は、徳島ヴォルティスから愛媛FCに加入したばかりということもあり、「(他のチームで面談の経験は)あんまりないと思います。困ったことがあったら相談できる、チームを動かせる人と連絡が取れるっていうのは、すごくいいことなのかなって思います」と語った。

また、2022年から2度目の指揮を執る監督の石丸清隆は、ムードメーカーの元日本代表・森脇良太にキャラクターを発揮できる役職を与えたり、専属のメンタルトレーナーを雇ったりといった、チームを強化するための提案がすぐにクラブの中枢に届くようになったと指摘。フロントと現場がコミュニケーション不全を起こすクラブもある中で、社長である父の忠も「一体感ができたのは彼女のおかげじゃないですかね。人の情報を引き出しながら構築していくのが、非常に長けていると思うんですよね」と評価した。

さらに、村上は伸び悩んでいるクラブの集客数を増やすために、次なる手を打っている。2023年における愛媛FCのホームの平均集客数は3674人。2021年の1854人と比べれば倍増しているものの、J3の上位チームと比べるとまだまだ集客数には大きな差があった。そこで村上は、写真撮影で選手に動きをつけたり、動画で選手同士の仲の良さを強調したりといった、女性が心惹かれるような見せ方を意識。すると、スタジアムへ足を運ぶ女性サポーターが増えだし、2年前と比べ、昨季は3倍以上の女性の集客を記録したという。

クラブに一体感をもたらし、集客に成功した村上は、チームの強化にも注力。同じ愛媛県内には、元日本代表監督・岡田武史の“岡田メソッド”を主体にチームを作るライバルチームのFC今治があり、これまでベテランに頼ると同時に、期限付き移籍で選手を獲得する手法を取っていた愛媛FCには、サポーターや営業先からも懸念の声が上がっていた。

そうした不安を払拭するために、村上はチームの確固たる指針を示す「ビジョンの確立」に取り組み、「育成と成長」を中心としたチームづくりを進めていく。ビジョンの基盤に置いたのが、堂安律も所属するドイツ・SCフライブルクとのフレンドシップ協定で、村上はチーム強化部の現地視察や、年に1名以上の短長期留学などを実現。成果は早くも現れており、昨季は愛媛FCアカデミー出身でもある20歳の黒川雷平がトップチームデビューを果たし、18歳の行友翔哉はポルトガル1部のクラブに移籍して、世界へと羽ばたいた。

チームのビジョンに共感するスポンサーも増え、収益もアップ。2年前には選手育成に欠かせないクラブハウスと天然芝のグラウンドも完成した。施設の充実によって、選手の足にかかる負担も大きく軽減した結果、開幕前から毎年10人前後いた怪我人もいなくなったのだとか。天然芝のグラウンドが一面しかないなどの課題はあるが、あくまでも前向きな姿勢の村上に、解説の北澤豪も「すごくいいですよね、話していて。今はここまでだけど、これからこうしていくっていう前向きな話が返ってくるので、所属している選手たちもやっぱり楽しくなると思いますよ」と称賛した。
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