35万円切りの2画面ノートPC「ASUS Zenbook Duo」は、デスクトップPCとしても抜群の使い勝手だ

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2024年03月04日 11:11  ITmedia PC USER

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約7cmのスタンド幅でも安定して自立します。省スペースでも気兼ねなく配置して使うことができますね。スタンド自体は16cmくらいまで広げられます

 ASUS JAPANのノートPCにはさまざまな形態のラインアップがあり、その中でも2画面モデル「Duo」シリーズはかなりユニークです。以前にレビューした「Zenbook Pro 14 Duo」もその1つでした。私はデスクトップ環境で5つのディスプレイを使うほど画面の広さや使い分けにこだわりを持っているので、純粋にたくさん画面があるデバイスはワクワクします。


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 そして今回、2024年モデルとして「ASUS Zenbook Duo(UX8406M)」(以下、Zenbook Duo)が発表されました。3月4日から予約を受け付け、13日に発売されます。価格は34万9800円(税込)です。早速、実機をいち早く試す機会を得たので、大きな特徴である2画面の機構を中心にレビューしていきます。


●ユニークなモデルであってもパフォーマンスは十分に確保


 まずは本体のスペックから見ていきましょう。試用機はインテル「Core Ultra 9」を搭載しています。先日に試したHP Spectre x360と同じく、“AI PC”とブランディングされている最新のプラットフォームです。オフィス利用の用途であれば、正直オーバースペックともいえます。


 AI活用という意味ではソフトウェアがまだまだ追い付いていませんが、長く使うことを考えるなら、最新のCore Ultraシリーズを選ぶべきでしょう。メモリは32GB(LPDDR5X)を搭載しており、余裕があります。


 ディスプレイは14型のOLED(2880×1800ピクセル、リフレッシュレート120Hz)が2枚構成となっています。タッチ対応で、専用スタイラスペン「ASUS Pen 2.0」も使えます。


 インタフェースはThunderbolt 4(USB Type-C)×2基、USB 3.2(Standard-A)×1基、HDMI×1基、マイク/ヘッドフォンジャック×1基と、一般的なビジネス利用で困ることはあまりないでしょう。給電や充電もUSB Type-C(65W)経由で可能なので汎用(はんよう)性は高いです。


 あえて言うなら、「SDメモリーカードスロットがない」「スタイラスペンを収納する仕掛けがない」といったあたりでしょうか。個人的には完全なモバイル用途として利用するならSIMスロットも欲しいところです。


 バッテリー駆動時間はデュアルディスプレイ使用時で、公称値が約10.7時間(JEITAバッテリ動作時間測定法Ver.3.0/Bluetoothキーボードなし/アイドル時)となっています。実際に使用した体感では5〜6時間といったところです。なお、ディスプレイは輝度を最大まで上げていました。使い方によってはもう少し長持ちしそうです。長時間持ち歩く場合は充電器(出力65WのUSB Type-C充電器が付属)を忘れないようにしたいところです。


 ポジティブに感じるところも多々あります。今までのデュアルディスプレイ搭載モデルはクリエイター向けを想定したものが多く、バッテリー持ちや排熱に悩まされることも少なくありませんでした。一般的なオフィス用途では不要なスペックであり、デュアルディスプレイが欲しいだけのケースでは手を出しづらいものだったのです。しかし、今回のZenbook Duoは、そうしたデメリットを解消してきたと感じます。


●目玉機能のデュアルディスプレイは実用性十分


 Zenbook Duoの目玉機能であるデュアルディスプレイですが、これは非常に面白く、実用性も高いと感じました。縦配置で使うのは、デュアルスクリーンモードと定義されています。


 あまり慣れない縦配置かもしれませんが、特に問題は感じません。私はデスクトップ環境で縦にもディスプレイを配置して使用しているため、慣れもあるのかもしれません。横配置よりも目線移動が楽です。


 一方で、こうしたデュアルディスプレイのデバイスに対してまず感じてしまうのは、「通常のノートPC+モバイルディスプレイで良いのでは?」といったところです。もちろんこの使い方はアリで、私も出張でPC作業が多くなる時はそのように使っています。


 ただし、モバイルディスプレイの場合は横に画面を配置するので、デスクに広いスペースが必要です。さらにUSB Type-Cケーブルやスタンドのようなものも準備しなければなりません。移動時には、画面を傷つけないようにと何かしらのカバーも必要になるでしょう。


 Zenbook Duoの場合、そうした準備はまったく不要です。物理キーボードを外すだけで2画面になります。本体にスタンドを内包しているので、そうした持ち物も不要です。縦配置なので狭いスペースしかないカフェ等でも使えるのはメリットですね。


 なお、外出先でノートPCを利用する場合は「プライバシーフィルター」を装着する方も多いと思いますが、これについては注意が必要です。プライバシーフィルターは正面から見える仕組みですが、デュアルスクリーンモードで使う場合、上画面が目の高さくらいになります。


 つまり、プライバシーフィルターを装着していてもカフェなどで後ろに座っている人から見えてしまう可能性があります。壁を背にするなど、より気を遣う必要があるでしょう。特にデュアルディスプレイは物珍しいため、ジロジロと見られてしまうリスクもあります。


 この「上画面が目線の高さぐらい」になる点ですが、その他のメリットも感じました。それはオンライン会議です。カメラが一番上部に来るので、カメラに対して自分の顔が正面になります。通常のノートPCだと顔の下からカメラが見上げる形で映ってしまうのがイマイチですが、Zenbook Duoだとそれが自然に解消します。


 総合的なデメリットとしては、常に2画面を持ち運ぶことになるのでどうしても「重くなる」という点でしょうか。とはいえZenbook Duoの重量は約1.65kgです。「MacBook Pro 14インチモデル(2023)」は約1.55kgからなので、そんなに大差があるわけではありません。私が完全なモバイル用として割り切って使っているPCが800g台なので、どうしてもそれと比較してしまうというのはありますが……。


●細かな点で惜しいと感じるところも


 Zenbook Duoのデュアルディスプレイの虜になりそうな私ですが、惜しいなと感じる点もありました。それはキーボードまわりです。


 通常のノートPCモードの場合、物理接点で接続できるので、いわゆる普通のキーボードと同じです。


 しかし、デュアルディスプレイを使うためにキーボードを取り外すと、Bluetooth接続に切り替わります。キーボードの配置が自由になりますが、バッテリー管理やワイヤレス接続の煩雑さが気になってしまいます。デュアルスクリーンモードでも物理接点で使えたらなと感じました。


 そして、分離したキーボードは薄っぺらいため、やはりキータッチは一般的なノートPCのキーボードに比べて劣ります。私は角度をつけてキーボードを使いたい派です。せめて日本マイクロソフトのSurface Proシリーズのように、キーボードが少し浮くような機構があるとありがたいです。そうなると、ますます物理接点で接続したくなってしまいます。


 キーボードの裏にスタンドのようなものがあればいいのですが、下側ディスプレイの上に置くキーボードでもあるのでさすがに難しいでしょう。持ち運べる小型のノートPCスタンドを使うのが最善手でしょうか。


 なお、キーボードの配列は若干窮屈なキーがあるものの、ほぼオーソドックスなJIS配列です。個人的には困る点はありませんでした。


●その他のモードは、あまり利用用途は思い付かず


 デュアルディスプレイであるがゆえのアイデアをASUS JAPANは提案しています。しかし、個人的にはそこまで強い魅力はないかなと感じました。もちろんこれは利用者次第かと思います。


 まず、横に置いて使うデスクトップモードです。本体の向きを変えれば自動で画面の向きも変わります。本体に厚みがあるため、垂直では自立させることもできます。しかし、縦配置のデュアルスクリーンモードとは異なり、特にスタンドは内蔵していないため不安定です。


 2つのディスプレイ間には段差があるため、この奥行きのズレは意外と気になりました。縦配置の場合だと段差はあまり気にならないのは面白いものですね。


 本のように使えるなとは思ったのですが、重さもあるので「そこまでして使うものでは……」といったところでしょうか。


 共有モードという、対面の方に向けてディスプレイの向きを変えるモードがあります。こちらもあって困るものではありませんが、相手との距離が近くなりすぎる感じがあり、使いどころに悩みます。ここはモバイルディスプレイの方が使い勝手がよさそうです。


 ノートPCモードの1つとして、下画面をバーチャルキーボードとする使い方もあります。物理キーボードが不要になるので軽くできるということだと思いますが、それならば普通の軽いPCでいいのではと感じてしまいますね。


 もちろんこれらは全て付加機能です。使いづらければ使わなければよいだけです。機能があって困るものではありません。


●デスクトップPCとしての利用が秀逸


 デュアルスクリーンモードに感銘を受けた私ですが、さらなる真打ちがデスクトップPCとしての利用でした。


 最近はノートPCをクラムシェルモード(画面を閉じて外部ディスプレイに表示)や、PCスタンドを使ったノートPCのディスプレイ+外部ディスプレイのように、デスクトップPCのように使う方法を目にします。しかし、Zenbook Duoであれば、2画面をフル活用したトリプルディスプレイのデスクトップPCとしての使い方ができます。


 この使い方が素晴らしいのは、Zenbook Duoの本体表面が全てディスプレイであり、かつ頑丈なスタンドを備えているためです。外部ディスプレイ側がUSB Type-C給電に対応していれば、Zenbook Duo自体への給電も含めてケーブル1本で完結です。デスクトップPCとしての利用であれば、お気に入りのキーボードやマウスを接続して使えばいいでしょう。


 私自身、ノートPCの画面も生かそうと考えてノートPCスタンドを使ったことがあります。しかし、どうしてもノートPCのキーボード部分が邪魔です。場所も取りますし、デスクの見た目も好きではなく、結局はやめてしまいました。


 手持ちのモバイルディスプレイを追加で使うということもあるのですが、なかなかいいスタンドに巡り会えていません。スタンドがスペースを取り過ぎるか、安定性がないかのどちらかなのです。


●真の“モバイル”も“デスクトップ”も、これ1台で実現


 デュアルディスプレイを求めてZenbook Duoを選択するのもアリですが、デスクトップPCとしての利用まで視野にいれると、一気に“唯一”の選択肢となります。本体スペックも申し分ありません。真の意味でモバイルもデスクトップも、これ1台で実現できると感じます。


 画面の広さは生産性に直結します。Zenbook Duoは、どこでも2画面を使える上に、デスクトップPCとして使う際もスマートにフル活用できます。唯一、モバイルを考えた時の「重さ」をどう判断するか、というところでしょうか。通常のノートPCとしても全く問題なく使用できる、間違いなくオススメできる1台だと感じました。


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