ドラマ『沈黙の艦隊』で存在感示し、3月はシェイクスピア戯曲に挑む俳優・前原滉「自分がどれだけその作品に必要とされるかはどこまでも追求しなきゃいけない」

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2024年03月04日 17:31  デビュー

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デビュー

トライストーン・エンタテイメント所属・前原滉(撮影/厚地健太郎)
 2023年はNHK朝の連続テレビ小説『らんまん』波多野泰久役の好演が大きな反響を呼んだ俳優・前原滉。大作映画『沈黙の艦隊』で主要キャストを演じ、今年3月にはシェイクスピア戯曲(パルコステージ『リア王』3月8日〜東京芸術劇場プレイハウスほか)に挑むなど、今や演技の世界で着実にポジションを築いている。そんな彼の原点は所属事務所が運営する俳優養成/演技研究所「トライストーン・アクティングラボ」だが、つい最近も初心に帰る出来事があったとか。2024年もさらなる飛躍が期待される若き名バイプレイヤーに話を聞いた。

【写真】多くの作品で必要とされる俳優・前原滉

■前原滉インタビュー

──先日、Xで「家族が増えました」と公表されていましたね。

「そうなんですよ。4ヵ月の女の子の猫で名前はボス。うちに来たばかりの頃は先住猫のルイージ(13歳・オス)がシャーシャー言っていたので、寝る時はケージに入れていたのですが、だいぶ慣れたみたいなのでこないだ出したんです。だけどやっぱり心配で3時間に1回くらい起きちゃって。したことはないですが、子育てに近いのかなって思いました(笑)」

──3月には舞台『リア王』が控えていますので、体調もお気をつけください。映像の仕事が充実する中、毎年1作ペースで舞台にも出演されていますが、舞台にはどんなやりがいがありますか?

「舞台は経験値もまだまだですし、小手先の芝居では通用しないことをいつも痛感します。映像はカメラがあるので視点の置き場もある程度わかるんですが、舞台はいわばお客さんの目がカメラ。下手に計算しても全部見られているわけで、結果、今はまだとにかく剥き出しに芝居するという方法にしか至れてないです」

──映像とは似て非なるものなんですね。

「映像で演技をしている時って、役に100%なりきれているわけではないんです。どこか演出のことを考えている自分もいるし、カットがかかったら感情も切り替えなければいけない。最近は"役と自分の一番いいバランス"ってどこだろう? と考えることが増えました。そういう意味では舞台は幕が上がったら素の自分に戻る瞬間がないので、映像演技にも通じるヒントが何かしら掴めるような気もしています」

──『リア王』ではリアを陥れるオズワルドを演じます。初のシェイクスピア戯曲に挑む思いはいかがですか?

「段田安則さんがどんなリア王を作り上げるのかワクワクしますね。段田さんとは舞台『セールスマンの死』でもご一緒しましたが、お芝居がとてつもなく素晴らしくて。また演出がショーン・ホームズさんなので、一筋縄ではいかないシェイクスピアになるんじゃないかと楽しみです。ちなみにショーンさん演出の舞台はこれが4作目(『FORTUNE』『セールスマンの死』『桜の園』)。もはや"ショーンの劇団員"って思っています(笑)」

──キャリアを重ねると再共演や再タッグも増えると思いますが、やはりうれしいものですか?

「もちろんです。だけどなぜ呼んでくれるのかぜんぜんわからなくて。一応、ショーンさんにも聞いたんですけど、『滉さんは乗り物に乗るのが上手だから』とジョーク? で返されました(笑)。もしかしたら僕の前世が(ショーンと同じ)イギリス人だからなのかな、と思ったりもするんですけど」

──前世がイギリス人!?

「占いで言われたんです(笑)。去年の3月頃、たまたま縁が合って面白そうだなって僕も行ってみたんです。そうしたら『メガネをかけてるイギリス人が見えます』と言われまして。そのほかにもけっこう良いことを言われたので、良いことはなんとなく信じてます(笑)。昔は『占いなんて…』というほうだったんですが、30代になっていろんなことを柔軟に受け入れられるようになったのかなと思います」

──昨年3月というと『らんまん』を撮影していた頃でしょうか。波多野泰久の最終週までの好演は大きな反響を呼びました。

「もともと波多野は18週ぐらいまでと聞いていて、詳しいことはわからないのですが、波多野の存在は必要なんじゃないかと脚本に書き加えてくださったんです。思い入れのある作品や役は年々増えていきますが、『らんまん』はここ数年でも特別だったというか、現場にも共演者にもスタッフにも、そして視聴者にもすべて恵まれたご褒美のような経験でしたね。こんないい思いばっかしてちゃダメだぞ、と自分を戒めたくなったくらい幸せでした」

──いい思いばかりしてると、ハングリー精神がなくなってしまうということですか?

「悔しさがバネになることって、やっぱりあると思うんです。『らんまん』が終わった後にNHK仙台放送のトーク番組『定禅寺しゃべり亭』に生出演させていただいたんですが、そこにTSAL講師の石栗昌彦さんがサプライズVTRをくださったんです。石栗さんに教わっている頃の僕はぜんぜん目立たない受講生だったので、覚えていてくださったことがまず驚きだったんですが」

──番組ではどんなお話をされたんですか?

「石栗さんの授業で1つの舞台作品を作り、僕も小さいながらに役をいただいたんです。だけど稽古をしていくうちに、どんどんセリフや出番が削られていって。そのことを石栗さんも覚えていらして、『あの時は悔しかったと思う。申し訳ないことしたな』とおっしゃったんです」

──前原さんも当時のことは覚えていましたか?

「もちろんです。芝居もぜんぜん下手だったし、良い作品を作る上での取捨選択だったことも今なら理解できるんですが、その時はものすごく悔しかったです。だけどそれを人に悟られるのもシャクで、ひたすら役に向き合うことしかできませんでした。だけど石栗さんとお話ししていて、削る側も苦しんでいるんだなってわかったり──。いろんなことを思い出して、あの放送はなんだかグッと来ちゃいましたね」

──プロになってからも、撮影はしたもののオンエアではそのシーンは使われなかったということもあったのでは?

「ぜんぜんありますよ。作品として成立させるためにやむを得ないなど、いろんな理由はあると思うんです。だけど役者側がそれに慣れたらダメだとも思います。自分がどれだけその作品に必要とされるかはどこまでも追求しなきゃいけないし、あの時の悔しさが『らんまん』で成仏したのかなって思ったりもします。そういう意味でも、TSALできちんと悔しい思いをしておいたのは良かったですね」

──2024年も数々の作品が控えていますが、抱負を聞かせていただけますか?

「まず食べさせる家族が増えたので、今年はもっと仕事を張り切らなきゃって気持ちでいます。ちなみに今、願掛けのために米断ちをしていているんです。何を願掛けしているかはちょっと言えないんですが、一番の好物が白米なので早く食べたいんですよ……。なので今年の目標は願を叶えてお米を食べること。来年いいご報告ができるように頑張ります」

(取材・文/児玉澄子)

PROFILE
前原滉(まえはら・こう)●1992年11月20日生まれ、宮城県出身。
高校卒業後、演技未経験からトライストーン・アクティングラボ(TSAL)』入所。レッスンを経て、トライストーン・エンタテイメント所属の俳優となる。連続テレビ小説『まんぷく』(NHK)などのドラマや、各映画賞で高い評価を受けた『あゝ荒野』(前篇)などの映画に出演。2019年のドラマ『あなたの番です』(NTV)でマンションの新管理人役を演じ注目された。2023年はドラマ:連続テレビ小説『らんまん』(NHK)波多野泰久役で第7週〜最終週まで出演、『ゆりあ先生の赤い糸』(EX)小山田源役 ほか 映画:『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』カワイ役、『沈黙の艦隊』溝口拓男役 ほか 舞台:パルコステージ『桜の園』エピホードフ役(8月8日〜PARCO劇場ほか)に出演。
2024年もドラマ:『沈黙の艦隊シーズン1〜東京湾大海戦〜』(Amazon Prime Video 2月9日〜配信)、 映画:『笑いのカイブツ』(1月5日より公開中)氏家役、舞台:パルコステージ『リア王』オズワルド役(3月8日〜東京芸術劇場プレイハウスほか)に出演。
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