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今季J1の開幕を前に、浦和レッズを優勝候補に推す声は多かった。
昨季4位の浦和は、チーム得点王のFWホセ・カンテをはじめ、MF明本考浩、DF荻原拓也ら、複数の主力がクラブを離れたものの、それを補って余りある大型補強を敢行。とりわけ、MFサミュエル・グスタフソン(BKヘッケン/スウェーデン→)、MFオラ・ソルバッケン(ローマ/イタリア→)、FWチアゴ・サンタナ(清水エスパルス→)という豪華外国人選手の獲得が目を引いた。
高い前評判は昨季のトップ3、すなわちヴィッセル神戸、横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島をもしのぐほどだった。
ところが、いざ新シーズンが始まってみると、浦和は第1節で広島に0−2で敗れたのに続き、第2節でも今季J2から昇格してきたばかりの東京ヴェルディに1−1の引き分け。辛くも連敗を免れた東京V戦にしても、内容的に見れば多くの時間で相手が狙いどおりに進めていた試合だったと言っていい。
「厳しい結果だと思うし、今季は攻撃的にいこうというなかで、2試合を終えて(得点は)PKの1点のみ。みんなの期待を裏切る形になってしまっていると思う」
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東京V戦後、MF伊藤敦樹がそう話していたが、開幕前のムードを思えば、「期待を裏切る」という表現もあながち大げさではないのだろう。
攻守両面で不安定な状態にある浦和において、特に気がかりなのは攻撃の硬直化だ。
今季からペア・マティアス・ヘグモ監督が指揮を執り、4−3−3を採用する浦和は、DFラインからパスをつなぎ、ビルドアップを開始するのだが、そこからなかなかボールが前進しない。
たとえば、センターバックのDFアレクサンダー・ショルツがフリーでボールを持ち出したとしても、前線にパスの出しどころを見つけられないのである。
前線の3トップ+2インサイドMFは、ピッチ上に「W」を描くように立ったまま、あたかも絶対に持ち場を離れてはいけないと、きつく言いつけられているかのようだ。
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布陣の特性を生かすべく、両ウイングはライン際に開いて構えるのが基本なのだとしても、そこまでボールが届かないのでは、相手に脅威を与えられるはずもない。これではウイングにヴィニシウス・ジュニオールがいようと、三笘薫がいようと、ゴールするのは簡単ではない。
東京Vが浦和の狙いを分析したうえで、コンパクトなブロックでうまく守ったという側面はあるにしても、浦和にはそれを破るための工夫が見られなかったことも確かだ。
「もちろん(チームの)戦術には従わなければならないが、ベーシックなこと、たとえば、(DFラインの)裏に走るというようなことを忘れてはいけない。特に相手(の守備)がタイトで、何かを作れない時にはそれが必要になる」
ショルツがそう振り返ったとおりである。
アンカーを務めるグスタフソンもまた、「(コンパクトな守備を破るためには)相手をもっと間延びさせること。そのためには裏に抜ける走りが必要だった」と、同様の課題を口にした。
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浦和の新たな船出は、順風満帆どころか、心もとないものになったと言うしかない。
とはいえ、今季J1はまだ開幕から2節を終えたばかり。ショルツの言葉を借りれば、「我々は新しいコーチの下で、新しいアイデアを学ぼうとしているところ」である。このままではダメだと結論を下すのは、時期尚早だろう。
思えば、新たにマチェイ・スコルジャ監督が就任した昨季も、浦和はスタートで躓き、開幕2連敗。だが、新監督の下で安定した守備を手に入れるや、5月にはAFCチャンピオンズリーグを制し、その後はJ1でも優勝争いに割って入ろうかという勢いを見せている。
選手のコメントを聞いていても、ヘグモ監督が自らの志向する戦術で選手を縛ろうとする様子はうかがえない。むしろ、選手が新戦術に適応しようと意識するあまり、硬直化した状態に陥っている、というのが現状なのだろう。
実際、東京V戦の後半では、ポジションの入れ替えと選手交代をきっかけに選手の立ち位置に動きが生まれると、特に左サイドで攻撃が活性化されている。
ショルツは、「この試合を(修正して)よりよくできなかったことは恥ずかしい」とつけ加えながらも、「これから数週間で、改善した姿を見せられると思う」と、今後に自信をうかがわせる。解決の糸口が見つけられずにいた難解なパズルも、選手の適性の見極めや選手間の意思疎通が進めば、一気に解けてしまう可能性は十分にあるはずだ。
今季J1の優勝候補は、期待を裏切っているのか――。その答えを出すのは、もう少し先でいい。