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前回からの続き。私(ハルカ)は夫のマサシと5歳のアン、2歳のシュンとの4人家族で暮らしていました。夫が持病の悪化でこの世を去ると、葬儀に「夫の不倫相手」だという永野エミコが現れます。憔悴しきっていた私に代わり、兄や義両親が不倫相手と交渉しカタを付けてくれたのでした。しかし5年後、私は見てしまうのです。義両親が笑顔で永野エミコを受け入れていたところを。そして脇にはマサシとの子どもがいました。再び失意のどん底に落とされてしまった私。兄とともに義実家を訪れると、義両親は観念したように今までの経緯を語りはじめたのです。「もう会わないから」と謝ってくれた義両親でしたが、私の心が戻ることはありませんでした。
「……だって、あの子はあの人たちの孫だもの」「だからって……」「話し合いのときは妊娠しているなんて分からなかったんだから、仕方ないでしょ」
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「何もしていないのに。ただマサシくんを信じて結婚生活を送っていただけなのに……。マサシくんの両親とも縁を切ることになったんだよ! あんたが現れたせいで」「そんなの……」「もちろん、あんただけのせいじゃない。マサシくんの両親も同罪だ。でもな、はじめから分かっていただろ? 産めば子どもに不自由な思いや寂しい思いをさせることになるって」
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「子どもに不自由で寂しい思いをさせたとしても、その埋め合わせを誰かに託すんじゃなくて、自分で与えてやれよ。それくらいの覚悟を持って産めよ。それが不倫の代償だろ? 甘えてんじゃねーよ!!」
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「でも、認知はしていませんよね。もし本当にマサシの子どもだというなら、どうして死後認知の手続きをしなかったんですか?」
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「だったら、私にとってはなかったと同然です。あなたの子どもに罪がないことは分かっています。けれど罪のない子どもを産んだのはあなただし、それを受け入れられるほど私も人間ができていません。だから全部なかったことにします」私はそう言って、幸せそうに笑う私たち4人の家族写真を彼女の目の前に置きました。
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本当は永野エミコに会いに行くべきか最後まで迷っていました。正直なところ夫が亡くなってしまっている今となっては、不倫の有無を語ることすら不毛な気がしていたからです。ただ義両親に決別宣言をした以上、前に進むためには彼女とも決別したかった。永野エミコがどんなに騒ごうとも私はマサシのれっきとした妻だったし、彼は私と家族でいることを選んだ。その事実をしっかりと伝えておきたかったのです。加えて私の大切な子どもたちに近づくことがないように、しっかりと釘を刺しておかねばという思いがありました。永野エミコと別れた私は、マサシが亡くなってから5年間抱えてきた肩の荷が少し軽くなった気がしたのでした。
参考:e-Govポータル|民法 第787条(認知の訴え)「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。」
【第11話】へ続く。
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