第96回アカデミー賞大予想! 『オッペンハイマー』が圧勝か?『ゴジラ-1.0』は快挙なるか?

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2024年03月08日 20:51  All About

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第96回アカデミー賞授賞式が3月11日(月)に迫ってきました! ということで、映画ライターの筆者が「アカデミー賞予想」をしてみようと思います。独断と偏見による予想なのでどうかご容赦ください!
第96回アカデミー賞授賞式が3月11日(月曜日:日本時間)に開催されます。今年度は日本からも3作品が候補入りしているので、ドキドキが止まりませんね! 筆者の個人的な好みも加わった予想です。

まずは最近のアカデミー賞の傾向から予想へとつなげていきたいと思います!

アカデミー賞の変化と新ガイドライン

2023年第95回のアカデミー賞では『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が席巻! 監督賞(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート)、主演女優賞(ミシェル・ヨー)、助演男優賞(キー・ホイ・クァン)、助演女優賞(ジェイミー・リー・カーティス)などを受賞し、大いに盛り上がりました。

全員初受賞でしたし、ミシェルなどアジア系俳優が重要賞を受賞したことも時代の変化を象徴していました。

そして今年はアカデミー賞の新ガイドラインが発表され、人種、性別、性的マイノリティー、障がい者の差別をなくし、平等であるように配慮したガイドラインになりました。そんなガイドラインの傾向も頭の片隅に置きつつ、候補作、候補者の中から「本命」「対抗」「大穴」を選んでみたいと思います。

作品賞の大本命は『オッペンハイマー』

(C)Universal Pictures. All Rights Reserved.

ピューリッツァー賞受賞作『オッペンハイマー』(ハヤカワ文庫刊)をクリストファー・ノーランが映画化。天才科学者オッペンハイマーが極秘プロジェクトに参加し、原子爆弾を発明。アメリカ政府は第二次世界大戦で日本を降伏させるために利用する……。

全米の各映画賞を多数受賞しており、重要賞といわれる全米製作組合賞、第81回ゴールデングローブ賞も受賞。アカデミー賞では最多13部門もノミネート! もはや受賞確実と言ってもいいかも。

対抗:『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

画像提供 Apple/映像提供 Apple

マーティン・スコセッシ監督が、アメリカの歴史に残る先住民の連続殺人の闇を暴いた作品。実際に起こった事件をひも解いていくミステリアスな展開とそれに関わった人々の野心、悪意、殺意、苦悩がスリリングな語り口でつづられる傑作。206分の長尺でも全く飽きさせない演出は見事!

導入から本題への流れが見事で、そのまま観客の心をつかんで離さず一気に見せ切ってしまう素晴らしさ! しかし、『オッペンハイマー』が強すぎて望みは薄いかな。それでも個人的には対抗はこの作品しかないと思っています。

大穴:『バービー』

(C)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

どんでん返しがあるとしたら『バービー』でしょう。すべてが完璧なバービーの体と生活に異変が起こり、その原因を探るべく彼女は人間界へ。そこで役割を押し付けられている不自由な女性の生き方と対峙するのです。

女性だけでなく、男性も役割を押し付けられていると描いたところがキモ。メッセージ性は強いけれどポップでファッション性が高い絵作りとユーモアのセンスも抜群。グレタ・ガーウィグ監督の個性が発揮された1本です。

その他の作品賞候補作

『アメリカン・フィクション』
『落下の解剖学』
『関心領域』
『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
『マエストロ:その音楽と愛と』
『パスト ライブス/再会』
『哀れなるものたち』

監督賞予想はクリストファー・ノーラン

(C)Universal Pictures. All Rights Reserved.

ほぼ決まりと言っていいのではないかと思います。『ダンケルク』(2017)以来の監督賞候補。巷の予想もクリストファー・ノーラン一択といった感じです。いまだ世界で戦争が終わらないことを思えば、今、オッペンハイマーを描くことはとても大きな意味があったのではないかと。人間ドラマとしても秀逸だし、文句なしですね。

対抗:マーティン・スコセッシ『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

ヨルゴス・ランティモスと悩みましたが、80歳を過ぎてもハイクオリティーな作品をリリースしているスコセッシ監督を対抗に。『ディパーテッド』(2006)で受賞していますが、 『ディパーテッド』以上に受賞に値する映画だと思うので。

大穴:ヨルゴス・ランティモス『哀れなるものたち』

作品を発表するたびに高評価のヨルゴス・ランティモス監督。おそらく近いうちに受賞すると思います。本作も自身の世界観を映像、美術のセンスを駆使して完璧に作り上げています。他の誰にも作れない映画を作り上げたと思うので大穴で!

その他の候補者

ジョナサン・グレイザー『関心領域』
ジュスティーヌ・トリエ『落下の解剖学』

主演男優賞予想は、キリアン・マーフィー推しで!

(C)Universal Pictures. All Rights Reserved.

本命:キリアン・マーフィー『オッペンハイマー』

数々の映画賞を本作で受賞し、全米俳優組合賞も受賞しているので、キリアンに受賞してほしいと思っています。映画も見ましたが、オッペンハイマーとして生き抜く姿に震えるほど感動しました。表情1つひとつが繊細で……。これでアカデミー賞を受賞できないとかあり?と思ってしまうほど。

個人的に応援してきた俳優なので受賞を願って大本命!

対抗:ポール・ジアマッティ『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

Seacia Pavao / (C)2023 FOCUS FEATURES LLC.

各映画賞の後半戦、次々と主演男優賞を受賞して存在感を示してきたジアマッティ。対象作ではちょっとひねくれているけど魅力的なキャラを巧みな芝居で見せているようです。常に結果を残してきた俳優ですし、俳優仲間の尊敬を集めていると思うので、キリアンの強敵といえば彼しかいません。

大穴:ブラッドリー・クーパー『マエストロ:その音楽と愛と』

監督と主演の1人2役で結果を残すのは本当にすごい! ブラッドリーはコメディーもシリアスもできるし、スター性もあり、賞レースの常連。すでに4度目のアカデミー賞主演男優賞候補。ただ何度も候補に上がる人って受賞しにくいんですよね……。とはいえ、大穴はブラッドリーしかいないと思います。

この部門、レオナルド・ディカプリオ(『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』)にいてほしかったです。ブラッドリーとレオで「大穴はどっち?」と迷いたかったなあ。

その他の候補者

ジェフリー・ライト『アメリカン・フィクション』
コールマン・ドミンゴ『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』

主演女優賞はリリーvsエマの一騎打ちか

画像提供 Apple/映像提供 Apple

本命:リリー・グラッドストーン『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

主演女優賞はリリーとエマ・ストーン『哀れなるものたち』の一騎打ちになりそう。それぞれ全米の各映画賞を多く受賞しているので、どちらが受賞しても驚かないのですが、全米俳優組合賞を受賞したリリーが僅差ですり抜けるのではないかと。

難を言えば、リリーは主演じゃなくて助演のポジションだよね?ってことくらい。

対抗:エマ・ストーン『哀れなるものたち』

(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

もし、リリーが助演女優賞にまわっていたら、エマが主演女優賞確定だったんじゃないかというくらいの怪演でした。お腹の子どもの脳を移植して、大人の体で赤ちゃんから大人の女性までを演じ切ったパワーには脱帽。性に目覚めていくプロセスではセクシーなシーンも多く(ちょっと多すぎだと思ったけど)渾身の芝居を見せています。

大穴:ザンドラ・ヒュラー『落下の解剖学』

(C)LESFILMSPELLEAS_LESFILMSDEPIERRE

亡くなった夫の殺人容疑で裁判にかけられる人気作家の役で高評価。夫婦喧嘩のシーンで夫を論破していく姿は残酷で怖いくらいでした。クールな佇まいから、次第にエモーショナルな芝居へと変化していく姿は目を見張るほど。

個人的に、彼女が演じたヒロインのことは好きになれなかったのですが、素晴らしい女優であることに変わりはありません。どんでん返しがあるとしたらザンドラですね。

『バービー』のマーゴット・ロビーが候補に上がっていたら大穴だったのですが、まさか候補落ちするとは……!

その他の候補者

アネット・ベニング『ナイアド 〜その決意は海を越える〜』
キャリー・マリガン『マエストロ:その音楽と愛と』

助演男優賞はライアン・ゴズリングvsロバート・ダウニー・Jr.

(C)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

本命:ライアン・ゴズリング『バービー』

巷では、ロバート・ダウニー・Jr.の受賞予想が多いと思うのですが、あえて筆者はライアン・ゴズリングを推したい! マーゴット・ロビーの主演女優賞、グレタ・ガーヴィクの監督賞候補落ちの同情票が集まるかもしれない。

何より単純でピュアなケンの苦悩が明らかになる映画後半は泣けちゃうほどでした。というわけで、ライアンに1票です。

対抗:ロバート・ダウニー・Jr.『オッペンハイマー』

(C)Universal Pictures. All Rights Reserved.

やはり対抗はロバート・ダウニー・Jr.。『アイアンマン』のイメージが強すぎるので、それ以外の作品でのお芝居が評価されにくかった人ですが、実は『チャーリー』(1992)でアカデミー賞主演男優賞、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(2008)で助演男優賞の候補になっているのです。

今回はいよいよオスカーに王手! 前哨戦の強さを維持できれば勝てるでしょう。

大穴:ロバート・デ・ニーロ『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

画像提供 Apple/映像提供 Apple

マーティン・スコセッシ監督作で、表向きは穏やかだけれど、やってることはクズで最悪な男を怪演したロバート・デ・ニーロ。甥っ子(レオナルド・ディカプリオ)を懐柔して、とてもナチュラルに悪の道に引きずり込んでいく様は見応え十分。もしかしたらサクッと受賞する可能性もなくはない?

その他の候補者

スターリング・K・ブラウン『アメリカン・フィクション』
マーク・ラファロ『哀れなるものたち』

助演女優賞は、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフで決まり?

Seacia Pavao / (C)2023 FOCUS FEATURES LLC.

本命:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

全米各映画賞の助演女優部門はほとんど彼女が受賞していると言っても過言ではないほど圧倒的な強さ。

この結果だけでも映画で彼女を見るのが楽しみになります。90%以上の確率で受賞しそうです。

対抗:エミリー・ブラント『オッペンハイマー』

(C)Universal Pictures. All Rights Reserved.

オッペンハイマーの妻・キティ役。どんと構えた意志の強さがスクリーンから伝わってきました。この映画の縁の下の力持ち的な存在。『プラダを着た悪魔』『クワイエット・プレイス』などヒット作の多いエミリーですが、アカデミー賞は初候補。13部門ノミネートの作品パワーで逆転受賞もあり?

大穴:ジョディ・フォスター『ナイアド 〜その決意は海を越える〜』

筆者は少女時代からジョディの映画を見てきたので、再びアカデミー賞の授賞式で彼女を見ることができるなんてうれしい! 『ナイアド 〜その決意は海を越える〜』は女の友情物語。いい感じに年を重ねたジョディの安定感あるお芝居を堪能できます。

ちなみに彼女は『告発の行方』(1988)、『羊たちの沈黙』(1991)でアカデミー賞主演女優賞を受賞しており、すでにオスカー受賞者。でも希望込みであえて大穴に。

その他の候補者

ダニエル・ブルックス『カラーパープル』
アメリカ・フェレーラ『バービー』

日本映画史上初の視覚効果賞受賞なるか?

さて、主要部門の予想をしてきましたが、第96回のアカデミー賞は、日本映画3作品が候補になっているので、受賞の可能性を見ていきましょう。

視覚効果賞『ゴジラ-1.0』

(C)2023 TOHO CO.,LTD.

日本映画史上初の視覚効果賞候補になったゴジラ! 山崎貴監督&スタッフの皆さんがハリウッドで認められたわけです。おそらく製作費はハリウッド大作映画よりもずーっと少なかったはず。それでも候補になり受賞の可能性も見えてきたのは、視覚効果スタッフの才能とスキルの賜物です。

最大のライバルは『ザ・クリエイター/創造者』ですが、受賞の可能性はなくはないと思います!

長編アニメ映画賞『君たちはどう生きるか』

前哨戦では、ライバルの『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が受賞数では圧倒的に優位。ただし、ハリウッドで尊敬を集める宮崎駿監督作。ハリウッドの映画人が投票するアカデミー賞だからこそ受賞する可能性はありだと思います。

国際長編映画賞『PERFECT DAYS』

(C)2023 MASTER MIND Ltd.

ヴィム・ヴェンダース監督作、役所広司主演。トイレ清掃員の何気ない日々を描きながら、ひとりの男の人生を浮かび上がらせた作品が候補に上がりました!

ただ、受賞は難しいかも。イギリス映画『関心領域』は作品賞、監督賞も候補入りしているので、『関心領域』がサクッと受賞しそうです。

授賞式をショーとして楽しもう!

今年もアカデミー賞授賞式はWOWOWで生中継します。授賞式前のレッドカーペット、インタビュー、スタジオでの候補作、候補者の紹介と予想など、映画ファンの楽しみが詰まった授賞式になりそう!

LIVEは同時通訳ですが、当時の夜には字幕付きの授賞式のリピート放送もあります。どちらも必見です。

ぜひ皆さんも予想しながら授賞式をご覧ください。

第96回アカデミー賞授賞式

生中継:2024年3月11日(月)午前7時〜(2カ国語、同時通訳)
リピート放送:2024年3月11日(月)午後9時〜(字幕版)
放送:WOWOW
(文:斎藤 香(映画ガイド))
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