注文から1カ月待ち 新聞紙を燃料に炊飯できる「魔法のかまどごはん」に注目集まる タイガー魔法瓶が開発にかけた思いとは

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2024年03月10日 12:03  ねとらぼ

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魔法のかまどごはん

 災害への備えが叫ばれる昨今、電気やガスを使わずに新聞紙を燃料にごはんを炊ける、タイガー魔法瓶の「魔法のかまどごはん」が好評を博しています。発売から約4カ月で年間目標数の196%を達成したという、注目の商品が生まれた経緯を聞きました。


【その他の画像】魔法のかまどご飯で炊いたご飯


 「魔法のかまどごはん」は、なべとかまどの機能をコンパクトにまとめた製品。下部へ新聞紙を定期的に入れては燃やすことで、簡単にごはんが炊けるといいます。必要な新聞紙は、3合あたり36ページ。白米は1合から5合、炊き込みごはんなら3合まで炊飯できます。


 企画は社内公募制度で採用されたアイデアをもとに、同社の創業および、関東大震災発生から100年の節目を迎える2023年に向けて進行。被災者への聞き取り調査を行うなどして、被災時に必要とされる製品を目指して開発されたといいます。


 完成した「魔法のかまどごはん KMD-A型」は、「防災の日」が翌日に控える2023年8月31日に発表。5日間で1000件を超える予約が入る人気となりました。同年10月の発売から約1カ月で年間目標数を上回り、増産をかけた2024年2月14日時点で、通算5900件を超える受注が入っているといいます。


 この反響を受けて、アウトドア施設や公共団体向けのBtoBモデル「魔法のかまどごはん KMD-B101」も4月22日に発売されます。編集部はタイガー魔法瓶を取材し、開発にかける思いや今後の展開など、詳しい話を聞きました。


●「いつでも温かく、おいしいごはんを届ける」が使命


―― 100周年記念モデルとして、防災を意識した製品を出した経緯を教えてください


タイガー魔法瓶 タイガー魔法瓶は、炊飯器に「炊きたて」のブランドネームをつけていますが、「いつも温かいごはんを食べてほしい」という思いが常にあります。アウトドアではもちろんのことですが、例えばもしものとき、電気やガスが使えない状態であっても、温かくておいしいごはんを食べてもらいたい、と考えています。


 また、創業年の1923年は、史上最大の地震災害として記録に残る関東大震災が発生した年であり、くしくもその関東大震災で商店に保管されていた「虎印魔法瓶」100本すべてが無傷で残ったとして、当社製品が注目を集めた年でもありました。祖業である魔法瓶は、創業者の「母親がいれてくれたような温かいお茶が飲みたい」という思いから生まれ、それ以後家庭に「温もり」と「幸せなだんらん」を届けるべくさまざまな製品を世に送り出してきました。100年の時を経て「いつでも温かく、おいしいごはん」を届けることは使命のように感じています。


―― 開発に当たり、「被災者のかたへの聞き取り調査を行った」とのことですが、調査でどのような意見が出て、この製品に至ったのでしょうか


タイガー魔法瓶 「魔法のかまどごはん」の開発に当たり、社員や社員の家族で過去に実際に被災されたかたひとりひとりにインタビューを行いました。被災状況はさまざまですが、「食事が唯一の楽しみだった」「温かいものを食べたときは心がほっとした」という声がありました。やはり「温かい食事、温かいごはん」に対しての重要さを再認識しました。


―― ごはんをおいしく炊くためにどのような工夫をされていますか


タイガー魔法瓶 電気やガスを使わないのが最大の特徴で、新聞紙1部(3合なら36ページ分)さえあれば「炊きたて」のごはんを炊くことができます。かまど下部の2つの穴に交互に新聞紙を入れ、火をつけます。その繰り返しによって、「はじめチョロチョロ、なかパッパ」のおいしい火かげんを再現し、慣れれば簡単に炊くことができます。


―― 「魔法のかまどごはん」という商品名に込められた意味は


タイガー魔法瓶 「新聞紙一部で本当にごはんが炊けるの?」とよく言われます。弊社は「温もりあるアイデアで、食卓に新たな常識を作り続ける。」という企業理念を掲げています。新聞紙でごはんを炊くという新たな常識を社名にも使われている「魔法」という言葉に込めました。


 炊飯には新聞紙を1枚ずつ投入しますが、はじめは火力も弱く不安な気持ちになります。投入枚数を増やすと炎が大きくなり、ごはんを炊いているワクワク・ドキドキ感を楽しんでいただき、魔法のようにおいしいごはんを提供したいのです。ごはんを食べたあと魔法のように水だけで簡単にお手入れできるのも特徴になっています。


●想定以上の反響に生産が追い付かない誤算も


―― 「約4カ月で年間目標数の196%」とのことですが、これほどの販売ペースになると予想していましたか


タイガー魔法瓶 予想を上回る反響に正直驚いています。部材手配の問題で生産が追い付いておらず、ご注文いただいたかたには商品の到着までお時間を頂戴しており、大変申し訳ない気持ちです。日本は、地震大国ともいわれておりますが、大きな震災が発生する前に1日でも早くこの商品をお届けし、少しでも皆様に安心を感じていただけるように取り組んで参ります。


―― 購入者からの反響はいかがでしょう


タイガー魔法瓶 ご購入いただいた方から、「新聞紙で本当にごはんが炊けるのか半信半疑でしたが、実際にやってみたら想像以上においしく炊けて感動しました」「子どもたちと新聞をねじって燃料を作り、ごはんを炊きました。楽しく取り組めてとても良かった」「アウトドア用に購入したが、防災グッズとして十分に使えそうで満足」といった声をいただいております。


 地震を経験された方から「電気が止まっても使用できるので、とても良いと思います。以前、地震で数日間にわたって停電が続き、不便な思いをしたことがあります。普段から備えの大切さを感じていたため、魔法のかまどごはんを購入しました。何がいつ起こるか分からないため、備えは大切だと思います」という声もありました。


―― BtoBモデルを投入する理由をお聞かせください。数量限定とのことですが、売れ行き次第での増産・再販売はあるのでしょうか


タイガー魔法瓶 魔法のかまどごはんは、私どもが補修部品として保有している炊飯器の内なべが、10年間の保有期間後に廃棄される現状から、資源の有効活用ができないかと感じたことに端を発しております。一般向けに販売している「KMD-A型」は供給の観点から新規で内なべを製造しておりますが、BtoBモデルでは、廃棄予定の炊飯器の内なべを用いていることをご理解いただいたうえで、青少年教育や防災訓練、地域の防災備蓄などの目的で取り組まれている施設、団体様へご提供させていただきます。


 廃棄予定の炊飯器の内なべには限りがございますので、ご提供できる数量を上回るご要望をいただけた場合には、お客様のニーズをもとに、今後の対応も検討して参ります。


―― 一般販売モデルの今後の売り上げはどの程度を見込んでいますか。またバリエーションの展開などは予定していますか?


タイガー魔法瓶 まずはご注文から1カ月ほどお待たせしてしまっている状況の改善に努めて参ります。春から夏にかけてキャンプシーズンが到来し、ご使用の機会も増えると考えられます。皆様のご意見を伺いながら、より良い商品に育てて参りたいと思います。


協力・画像提供:タイガー魔法瓶


このニュースに関するつぶやき

  • 最近の子は知らないかも知れないんだけど、実は昔は火でご飯炊いてたんですよ。さすがに新聞紙では無かったけど
    • イイネ!33
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