あす発表!アカデミー賞ノミネート『君たちはどう生きるか』海外の映画ファンはどう見たか

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2024年03月10日 13:00  ORICON NEWS

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宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』(C)2023 Studio Ghibli
 スタジオジブリ宮崎駿(※崎=たつさき)監督の10年ぶりの新作映画となる『君たちはどう生きるか』。米ロサンゼルスの現地時間10日夜、日本時間で11日午前に授賞式が開催される「第96回アカデミー賞」長編アニメーション映画部門にノミネートされている。海外の映画ファンは、『The Boy and the Heron』をどう見たのか?英語圏レビューサイト(Letter Boxd)では賛否両論!?多くの共感を呼んでいるレビューを紹介する。

【画像】映画『君たちはどう生きるか』場面カット

■『君たちはどう生きるか』ここまでの歩み

 『風立ちぬ』が日本で公開されて間もない2013年9月、宮崎監督は長編映画製作からの引退を発表。しかし、本作へつながる創作意欲が抑えられず、引退を撤回して、新作に取り組むこと約7年。10年ぶりの新作長編作品として23年7月14日に公開された。「観客にまっさらな気持ちで見てもらいたい」(鈴木敏夫プロデューサー)と、公開まで映画の内容に関する情報を明らかにしない異例の対応でも注目を集めた。

 24年3月10日時点でいまだ劇場にて上映中。24年1月末時点で興行収入88.4億円の大ヒットを記録。先日8日に発表された「第47回日本アカデミー賞」では最優秀アニメーション作品賞を受賞した。

 海外展開に目を向けると、英題『The Boy and the Heron』は、クリスチャン・ベール、デイヴ・バウティスタ、ジェンマ・チャン、ウィレム・デフォー、カレン・フクハラ、マーク・ハミル、ロバート・パティンソン、フローレンス・ピューなど、超豪華な英語吹き替え版キャストが話題となるなど、公開前から大きな注目を集めて来た。

 昨年9月「第48回トロント国際映画祭」に“邦画として初”、アニメーション作品としては“世界で初めて”オープニング上映作品に選出されたのをはじめ、海外の国際映画祭への出品も相次いだ。

 昨年11月22日からニューヨーク、 ロサンゼルスの4館で先行上映を敢行し、アメリカでの宮崎駿監督作品の劇場平均興収として過去最高成績を記録。ニューヨーク・タイムズやロサンゼルス・タイムズなど、観客を後押しする好意的なレビューが各メディアから出され、全米公開前にもかかわらず、12月1日発表のニューヨーク映画批評家協会賞でBest Animated Filmを受賞した。

 12月8日からアメリカ&カナダで2205館で公開されると、公開初日から3日間(12月8日〜10日)でオープニング興収(先行上映含む)約1297万ドル(約19億円)を記録し、日本映画オリジナル作品としては初となる、北米週末興行収入ランキング第1位を獲得した。

 12月10日にはロサンゼルス映画批評家協会賞のBest Animationとボストン映画批評家協会賞のBest Animated Film、年が明けた1月7日には日本作品としては初となる「第81回ゴールデン・グローブ賞」のアニメーション映画賞を受賞。2月17日の「アニメ界のアカデミー賞」と呼ばれる「第51回アニー賞」では、最も権威ある長編作品賞を『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』に譲ったが、長編部門の絵コンテ賞とキャラクターアニメーション賞を受賞。2月18日の「第77回英国アカデミー賞」では、日本の作品として初めてアニメ映画賞を受賞した。

 そして、世界最高峰の映画賞「第96回アカデミー賞」に、宮崎駿監督作品としては、2002年米公開の『千と千尋の神隠し』、05年米公開の『ハウルの動く城』、14年米公開の『風立ちぬ』に続く4度目のノミネートを果たした。日本作品で初受賞した『千と千尋の神隠し』以来、2度目の受賞に期待が高まっている。

■海外の映画ファンのレビューを紹介

 英語圏レビューサイト(Letter Boxd)で多くの共感を呼んでいるレビューは賛否両論。「この映画は私には合わなかった!」というレビューと、「宮崎監督が私たちに何を言っているのかを把握しようとし、『君たちはどう生きるか』という問いに答えようとした」というレビュー、両方に共感が集まっているところが傑出している証ではないだろうか。

 ロンドンの映画館で働くスタッフに取材した感想としては、作品の評価云々よりも世界中に影響を与えている日本のアニメーションを長年けん引してきた宮崎監督を功績を、その唯一無二の存在を称えたい気持ちが充満しているようにも思えた。

 受賞者を決定する主催団体「映画芸術科学アカデミー(AMPAS)」の会員(映画業界人)たちはどの作品に一票を投じるのか。日本時間で明日の発表に期待したい。

●Letter Boxdの人気レビュー(★★★★★)

 宮崎作品のノスタルジーが随所に感じられ、夢の中で同じ風景を歩いたような既視感もある。私は頭の中でタイトルを繰り返し、行間を読み、宮崎監督が私たちに何を言っているのかを把握しようとし、「君たちはどう生きるか」という問いに答えようとした。

 それは、生と死、世界のむごたらしい残酷さ、そして希望を持ち、残されたわずかな美しさにすがりつき、それを守ろうとする願望への抱擁だった。限りあるものと時の流れを優雅に受け入れる。伝説とのほろ苦い別れと、新しい若い世代への勇敢な歓迎。聖火は受け継がれた。

●Letter Boxdの人気レビュー(★★★★★)

 忘れることは普通だ。忘れて前に進むことを事実上非難されるほど、私たちは全てを覚えていなければならないという強迫観念を持っている。全てを覚えておくということは実際には非現実的であり、そして、それを他人に求めるのは不公平だ。真人は(現実の我々も)忘れてしまうことに罪悪感を感じるべきでない。

 キャリアを終えようとしている巨匠からのメッセージであることを考えれば、なおさら痛烈なメッセージに思える。

●Letter Boxdの人気レビュー(★★★1/2)

 『君たちはどう生きるか』は、その抽象的なイメージを維持し、まとまりのある構造に変換するのに苦労している。テーマ的な意味では濃密かもしれないが、その多くはすでに語り尽くされている。つかみどころがないとか不可解だとも言えるが、それは、脚本が描きたいテーマを意味のある形で映像化するのに適していなかったのだと私は思う。脚本が映画の役に立っていないのだ。新鮮な驚き(あのインコたち!あのワラワラ!)はたくさんあるのだが、目の前のストーリーの中でうまく機能していない。その多くが忙しない作業のように感じられた。

●Letter Boxdの人気レビュー(★★★)

 可能な限り絵画的な方法で描かれ、とてもゴージャスだ。しかし、感情の旅とその鼓動は必要とされる形で現れなかった。この感動的な物語には、悲しみへの瞑想、私たち自身が選択し、受け継ぐことを拒否するもの、そして母親の役割などが描かれている。しかし、それを全て表現しきるほど深くは描かれていない。とても楽しめたユーモラスな場面もあるが、この映画が心に響く感動的なものを目指している場面では、登場人物たちと心のつながりを感じることができず、冷めた気持ちになってしまった。それでも、考えさせられることの多い美しい作品であるが。

●Letter Boxdの人気レビュー(★★1/2)

 もちろん、芸術的な映像は素晴らしく、野心的なイマジネーションにあふれているが、私は宮崎監督があまりにも多くの世界への入り口を開きすぎていて、最終的にはそれほど感情的に共鳴できるものではなく、ただ行き当たりばったりなものになったと思う(一方、『千と千尋の神隠し』は素晴らしい)。この映画は私には合わなかった!たくさんの要素を詰めすぎるという点で、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が頭に思い浮かんだ。

■映画館スタッフ(1)

 『君たちはどう生きるか』は、今年、日本だけでなく世界的にも成功を収めた。超自然的な存在、家族、逆境や葛藤に直面するこどもたち、そしてそれを克服するために築かれる型破りな同盟関係。数十年にわたる宮崎監督の作品は、すでに多くの人々に親しまれていたが、新しい世代が今、その魅力に気づいている。若者には少し頭でっかちな作品に見えるかもしれないが、年配の観客の興味を引き、他の人と一緒に楽しみ共有できる作品なのだ。結局、日本語、英語などの言語の壁を超え、また、文化の隔たりを超え、宮崎駿の映画は統一されたテーマを持っている。宮崎監督の作品が今年成功を収めたのは、作品が観客の心を打ったからだけではなく、今の世代が多様な表現を信じているからだ。

■映画館スタッフ(2)

 『君たちはどう生きるか』は、鮮やかな色彩で、その世界観を構築する伝承は、無形だが極めて美しい。本作は、これまでのスタジオジブリの象徴的なヒット作たちの図像学のようにも感じられる。これまでの作品で「こぼれ落ちたもの(語りきれなかったもの)」のようにも思える。監督が観客に直接語りかけるメッセージのようだ。

日本語訳:Yuki Yoshikawa

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