今、プロジェクションマッピングが熱い! パナソニック コネクトが「イマーシブ」に入れ込むワケ

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2024年03月12日 20:51  ITmedia PC USER

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最大輝度1万ルーメン以上の業務用プロジェクターからデジタルシネマ用を控除すると、パナソニック コネクト製品は販売金額シェアで10年連続1位をキープしているという

 パナソニック コネクトは3月12日、「イマーシブ(没入体験)」に関する記者セミナーを開催した。同社がイマーシブソリューションとして開発/販売している高性能プロジェクターやメディアプロセッサ(※1)、これらを効率良く運用するためのサービスについて市場の現状と今後の取り組みについて説明を受けた後、同社がイマーシブソリューションをクリエイターやパートナー企業と検証/開発するための拠点「東雲共創ラボ」(東京都江東区)の見学ツアーが実施された。


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 昨今ニーズが高まっているというビジネス向けのイマーシブソリューションにおいて、同社はどのような立ち位置にあり、どのような戦略を描くのだろうか。


(※1)複数のプロジェクター(またはディスプレイ)を連携させてストリーミング映像を再生するためのコンピュータ。単に複数のプロジェクターに映像を同期送出するだけでなく、プロジェクター間で生じる「幾何学ゆがみ」「色味のズレ」「スクリーン重なり(エッジブレンディング)」などを自動補正することもできる(自動補正機能を使うには同社が指定するニコン製一眼カメラを接続する必要あり)


●“明るい”業務用プロジェクターでの地位を確固たるものに


 パナソニック コネクトは、さまざまなスペックの業務用プロジェクターを世に送り出している。そのうち、最大輝度が1万ルーメン以上の高輝度製品に絞ってグローバルシェア(販売金額ベース)を調べてみると、同社のシェアは2013年から2022年まで連続して1位をキープしているという(※1)。


(※1)PMA Researchによる調査レポート「PMA_2023CYQ2_WorldwidePJCCensusRevenues」の結果から1万ルーメン以上の輝度の業務用製品を抽出した上で、デジタルシネマ向け製品を除いた結果


 この地位を確固たるものにすべく、同社が目を付けたのが冒頭にも挙げた「イマーシブ」市場だ。


 最近では、美術館/博物館やテーマパーク、アミューズメント施設、劇場/映画館といったなど幅広いLBE(※2)施設で「プロジェクションマッピング」、つまり光と色を使った3D映像投影技術の利活用が進んでいる。デトロイト・トーマツの資産によると、プロジェクションマッピングに関連するLBE市場におけるチケット収入は、2023年の4390億ドルから2028年までには6660億ドルにまで成長する予想だという。年率平均にすると8.5%の成長だ。


 一方で、パナソニックコネクトは、2023年度のLBE市場におけるプロジェクターへの投資総額を5億7000万ドルと見込んでおり、それに合わせて1万ルーメン以上の輝度のプロジェクターの販売台数の目標を2022年度比で1.19倍に引き上げているという。


(※2)Location Based Entertainment:特定の場所で提供される(提供場所まで出向かないと体験/体感できない)娯楽


 プロジェクションマッピングというと、従来は「壁面に絵画を映し出す」といった“静”の展示が多かったが、最近は、投写するコンテンツが人やモノの動きと連動する“動”の展示も増えている。少し言い換えると、リアル空間を“補足する”存在から“彩る”存在へとシフトしている。


 そのため、プロジェクションマッピングに関わるニーズがいろいろな側面で高度化している。例えば制作者(クリエイター)にはより「リアル」かつ「滑らかな(遅延のない)」映像が求められるようになってきた。また、コンテンツの制作までのリードタイムの短縮も求められがちだ。


 一方で、プロジェクターを始めとする投影機器を運用するSIer/オペレーターの立場からすると、扱う機器の多様化が進み、投影先への映り具合の調整などに時間を大きく取られるようになってしまった。機器(とコンテンツ)一式をキャラバン方式で持ち運んで運用する場合、機器の運搬や設置/解体を何度も繰り返すことになるため、負担も大きい。「調整や管理だけでも、リモートである程度できないか?」とのニーズもあるという。


 そこでパナソニック コネクトは、クリエイターとSIer/オペレーター両方のニーズに応えるプロジェクター/メディアプロセッサやサービスを取りそろえることでイマーシブ分野で成長を果たし、「高輝度プロジェクター販売金額シェア世界ナンバーワン」を目指す。


 次のページでは、同社の新製品を紹介する。


●2024年度投入予定の新製品


 ここからは、パナソニック コネクトが2024年度に投入する予定の新製品を簡単に紹介する。


映像出力だけでなくプロジェクター間の調整も行う「メディアプロセッサ」


 2月に発表された最新のメディアプロセッサ「ET-FMP50」は、HDMI出力を4基備えており、フルHD(1920×1080ピクセル)/60pの動画を4台、4K(3840×2160ピクセル)/60pの動画を1台のプロジェクターに出力できる。LANポート(1000BASE-T対応)を介したスケール運用も可能だ。一部スペックを変更して価格を抑えた「ET-FMP20」という兄弟モデルと共に、2024年度第1四半期(2024年4〜6月)の発売を予定している。


 なお、メディアプロセッサには「ET-FMP50」という新製品も登場する。Intelが定めた「Intel SDM(Smart Display Module)」を備えるプロジェクター/ディスプレイに直接装着するボードタイプの製品で、SDMスロットを備える自社製プロジェクターにも装着可能だ。


 投影デバイスに直接取り付けるタイプであるため“箱”が外に出てこないことが大きなメリットだが、外部への映像出力は備えていないので注意したい。ET-FMP20/50から遅れて、2024年度第3四半期(2024年10月〜12月)に発売される予定だ。


高リフレッシュレートの業務用ハイエンドDLPレーザープロジェクター


 業務用ハイエンドDLPレーザープロジェクターの新製品「PT-REQ15」は、「200V電源を確保できない場所でも、明るく投影したい!」というニーズに応えて、一般的な100V電源でも最大1万5000ルーメンで表示できるようになったことが特徴だ。


 また、「プロジェクションマッピングをより滑らかに」というニーズにも応えるべく、フルHD/240Hzの高速駆動(遅延約8ミリ秒)にも対応した。同社独自の「クワッドピクセルドライブ」技術も引き続き搭載しており、疑似的ながらも鮮明な4K表示も実現している。


 本製品には、高速駆動機能やクワッドピクセルドライブを省いて価格を抑えた兄弟機「PT-REZ15」も用意されている。両機種共に、2024年度第1四半期にデビューする見通しだ。


 なお、今回紹介する業務用ハイエンドDLPレーザープロジェクターは全て投影用レンズユニットがオプション(別売)となるので、利用環境に応じて装着/換装して運用することになる。


 「PT-RQ7」も、業務用ハイエンドDLPレーザープロジェクターの新たに仲間入りするモデルだ。現行の同等モデル(PT-RZ890シリーズ)比で容積が29%、従量が16%削減されており「2人でも十分運べるサイズ感と重量」を備えた。


 先に紹介したPT-REQ15と同様に、本製品もフルHD/240Hzの高速駆動と、クアッドピクセルドライブによる4K表示に対応する。


 本製品には、最大輝度を7500ルーメンから6500ルーメンに削減した「PT-RQ6JL」、そこからさらにクワッドピクセルドライブによる4K表示を非対応とした「PT-RZ6JL」という兄弟機も用意されている。3モデル共にいずれも2024年度第2四半期(2024年7月〜9月)に発売される予定となっている


超短焦点レンズ


 先述の通り、今回披露された新しいプロジェクターは投影用レンズがオプションとなる。昨今、数あるレンズの中でも、狭い場所でも画面を大きくできる短焦点型レンズのニーズが高まっているという。


 今回発表された新プロジェクターでも、短焦点レンズを利用できる。2025年内には、新しい短焦点レンズをもう1種類発売されるそうだ。


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