【漫画】深夜のゴミ捨て場で出会った人懐っこい隣人、別れは突然にーーSNS漫画『リトルトーキョー』が描く“現実”

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2024年03月14日 08:30  リアルサウンド

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『リトルトーキョー』より

 趣味で小説を書く主人公と隣人との出会い、そして別れが描かれる漫画『リトルトーキョー』が2024年2月にXで投稿された。2人で過ごす時間を重ねるなか、突如として訪れた別れのとき。最後の時間を主人公たちはどのように過ごしたのか。


(参考:漫画『リトルトーキョー』を読む


 作者の秋本さん(@parainu)によると、本作は「2人組がモノを投棄する」というテーマを元に創作された作品なのだという。創作のきっかけ、このテーマに込めた思いなど、話を聞いた。(あんどうまこと)


ーー本作を創作したきっかけを教えてください。


秋本:2024年の3月に開催される九州コミティア(一次創作物の即売会)への出展が本作を創作したきっかけです。「2人組がモノを投棄する」というテーマを元に、私含め数名で作品を持ち寄って合同誌を制作しました。


 今まで既存の作品の二次創作を通して執筆活動をしてきましたが、本作は一次創作として初めて制作した漫画でした。作品を読んでくれる人がいるか不安もありましたが、感想をいただいたりなど、自分の作品に関心を持っていただけたことが嬉しかったです。


ーー「2人組がモノを投棄する」というテーマにした背景は?


秋本:テーマの参考になった作品はいくつかあり、その1つが売野機子先生の『かんぺきな街』(ウィングス・コミックス)に収録されたエピソードです。大人の男性に想いを寄せる女子生徒と出会った主人公が、2人で一緒に亡くなった金魚のお墓を作るために出かける……というお話なのですが、すごく印象に残っていて。


 “何かを捨てる”というアクションに対し、そこに人物が2人いると「なぜ捨てるのか」といった会話が生まれると思います。捨てることでなにかと決別しつつ、新たな1歩を踏み出す。そんなドラマが面白いと思い「2人組がモノを投棄する」というテーマで合同誌を制作しようと思いました。


ーー決別したあとの新たな1歩として、本作で主人公の背中を描いた思いを教えてください。


秋本:本作では必要ないと思い描写をしていませんが、トリさんは地方都市に住んでいるルサンチマン的なキャラクターであり、完璧な善人とは思っていません。この短編の2人には描いていない側面があり、あえて全部は見せないことが一種の人間らしさや他人らしさかと思ってます。そして私が今話した「物語であえて語っていないこと」を作品の解釈に反映する必要もありません。


 そうした背景もあり、後ろ姿のシーンについては解釈の余地を多く残しています。私の思いの一部を語ることは可能ですが、それを語ることで読まれた方が私の意思を汲み取って、作品の解釈が1つの方向性に収束されるかもしれないのは、少し惜しい気持ちがあります。


 限度はもちろんありますが、作品を誤読すること、人と違った感想を持つことそのものは自由であり、作品に触れる楽しさの1つだと個人的には思ってます。……少し気恥ずかしい表現ですが、読んでいただいたあなた自身の感情や余韻が、私や他の人が語るものと違っても、その気持ちを無かったことにはせずに大事にしてもらえたら嬉しいです。


ーー印象に残っているシーンを教えてください。


秋本:“苦労した”という意味で印象に残っているのは、トーストや鍋など、料理が登場するシーンです。これらは実際に調理し撮影した写真を利用して描いていますが、絵が写真すぎないように調整したり、美味しく見えるよう仕上げることに苦労しました。


 何気ないコマであるため一瞬で見終わりますが、その裏側では試行錯誤してるので味わって見て欲しいです。


ーー別れの一幕としてポン酢に関するエピソードを描いた背景は?


秋本:トリさんが苦手な水炊きを美味しいと思わせてくれたポン酢がヒナモリくんへ受け継がれたり、ポン酢の美味しさに共感してもらえたり。そういった気持ちのやりとりは創作活動の魅力の1つに似ているように感じます。


 創作とそれ以外の活動との類似点を掲示することで、自分の感情の折り合いを付けるきっかけは創作活動だけじゃないんだよ、とクリエイターではない人たちとの連帯の気持ちを肯定的に表現したいと思っていました。


ーー秋本さんの考える創作活動の魅力とは?


秋本:創作する人は限られているため、基本的には創作活動は孤独だと思っています。とくに東京ではなく地方に住んでいると、クリエイターで集まることも困難です。ときに真っ暗なところを1人で歩いていかなきゃいけない寂しさも感じます。


 ただSNSではいろんな地域のクリエイターとつながることができ、そのつながりが光のようにも感じられます。光に向かって歩けば誰かと出会えて、自分が表現したものを拾ってくれる人がいました。その光をつかみたい、忘れたくないといった気持ちを語ったり、記録できることは、創作の魅力だと思います。


(あんどうまこと)


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