名古屋グランパスが初勝利もJ2降格さえちらつく異常事態 稲垣祥「悪循環になってきたという印象は否めない」

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2024年03月18日 07:40  webスポルティーバ

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 開幕戦から続いた連敗は、ようやく3でストップ。名古屋グランパスが、ついに今季初勝利を手にした。

 J1第4節、柏レイソルと敵地で対戦した名古屋は、2−0で勝利。前半18分にFKからFW永井謙佑が、後半62分にはCKからDFハ・チャンレが、数少ない決定機を確実に仕留める一方で、守っては今季初の無失点である。

 待望久しかった初白星に、名古屋を率いる長谷川健太監督は、ホッとした様子で口を開く。

「選手が気持ちを出して戦ってくれた結果が、初得点と初勝利につながったと思う」

 その言葉どおり、3連敗中はすべての試合でノーゴールに終わっていた名古屋にとっては、永井の貴重な先制ゴールが今季のチーム初得点でもあったのだから、指揮官の安堵感たるや相当なものだったに違いない。

 殊勲の永井も、「3試合ゼロ(無得点)はなかなかない。FWとして責任を感じていた」と振り返り、「1点取るとリズムが生まれるし、自信も戻る」と、ようやく手にした1勝目に笑顔を見せた。

 とはいえ、長谷川監督が「内容はまだまだな部分がある」ともつけ加えているように、2−0のスコアから想像するほど、試合内容が危なげないものだったわけではない。

 今季の名古屋は、3バック+左右ウイングバックの布陣こそ従来と変わらないものの、中盤から前線にかけては選手の配置を変更。すなわち、昨季の3トップ(1トップ2シャドー)+2ボランチから、2トップ+3MF(アンカー+2インサイド)へと、開幕前のキャンプを通じて転換を図ってきた。

 ところが、「1アンカー(の新布陣)を捨てたわけではないが、なかなかここまでうまく機能しなかった」と長谷川監督。その結果、柏戦では「(昨季まで)慣れ親しんだ2ボランチで臨んだ」というのが、現状である。

 その柏戦にしても、前半のうちに首尾よく先制することには成功したものの、その後は柏の攻勢にさらされ、防戦の時間が長く続いた。前半の終盤には、柏のシュートが立て続けに2本、ゴールポストを叩いてもいる。

 試合内容に関して言えば、自分たちが狙いとしていたことをより多く表現できていたのは、柏のほうだっただろう。

 特に気になったのは、ハイプレスに迷いが見られたことだ。

 柏のゴールキック時に前からプレスをハメようとするも、誰がボールにアプローチし、誰がどうスライドしてハメきるのかがはっきりせず、プレスをはがされ、FWマテウス・サヴィオにドリブルで独走を許すシーンも見られた。

 これでは得意のカウンターにつなげるどころか、逆に失点のリスクを増大させることにもなりかねない。

 また、攻撃においても、3バックやボランチから効果的な配球がなされず、結果として相手DFラインの背後に大きく蹴るだけになってしまうことが多かった。

 長谷川監督も「我々の準備不足」と認め、「守備の構築だけでなく、攻撃の起点になるDFライン(の顔ぶれ)が(昨季とは)変わったのが大きかった」と話しているとおりだ。

 だが、名古屋の躓きは、それだけが原因だったわけではない。

「周りから見れば、『DFラインがこれだけ変わって厳しくなっているよね』と見られるのはわかるけど......」

 そう語るのは、ボランチを務めるMF稲垣祥である。

「キャンプ中の(練習)試合では、選手同士の関係性を含め、自分たちがやりたいことをいくつもできていて手応えはあった。それが、キャンプが終わったくらいからケガ人が出始め、メンバーが変わってやりたいことができなくなってきた」

 こうして迎えた、新シーズン開幕。「やることもちょっと現実的に変えて、というところで積み上げてきたものがなくなって、悪循環になってきたという印象は否めない」と、稲垣は苦しい胸の内を明かす。

 奇しくも名古屋は、昨季も同じJ1第4節で柏と敵地で対戦しているのだが、この時は3−0で勝利。内容的に見ても、FWキャスパー・ユンカー、FWマテウス・カストロ、永井の"トリデンテ"が、それぞれの能力と魅力を存分に見せつけての、実に鮮やかな快勝を収めている。

 結果的に昨季の名古屋は、夏の移籍でマテウスが去ったのをきっかけに急失速。結局は6位に終わってしまったわけだが、シーズン当初は13年ぶりの優勝をも期待させる戦いぶりを見せていたことは間違いない。

 翻(ひるがえ)って、1年後の今季である。

 客観的に見て、今季の名古屋が昨季から戦力ダウンしている事実は否定しようがない。DF中谷進之介、DF藤井陽也、DF森下龍矢ら、日本代表クラスがまとめて移籍してしまったのだから、その穴が簡単に埋まるはずがないのは当然のことでもある。

 しかし、それにしても、だ。

 開幕早々、これほどの大きな躓きは、まさかの事態と言っていい。

 第4節にして今季初勝利を手にし、ようやく臨戦態勢が整い始めたように見える名古屋だが、ここからどれだけ巻き返すことができるのだろうか。

 よくも悪くも、実力接近がJ1リーグの特徴。開幕前には優勝候補と目されていたクラブがJ2へ降格してしまうなどという異常事態も、さほど珍しいことではない。

 今季の名古屋にしても、まさかの躓きがあとを引き、そのままズルズルと低迷が続いてしまうことも、ありえないシナリオではないのだ。

 開幕から3連敗のあと、ようやく初勝利を手にしたとはいえ、その内容は1年前に比べてまだまだ心許ない。

 だからこそ、「次の1勝がとても大事になる」と長谷川監督。「長かった初ゴール、初勝利だったが、ここからはい上がっていけるようにしっかりと準備していきたい」と、早くも次戦以降に視線を向ける。

 明るい兆しは見えた。だが、ひと息つくのはまだ早い。

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