大谷翔平 VS パドレス投手陣を徹底分析 ドジャース戦に強いダルビッシュ、過去無安打の変化球投手、強力左腕リリーフ陣をどう打ち砕くか?

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2024年03月19日 07:30  webスポルティーバ

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■打者・大谷翔平の対戦チーム投手分析2024「カモと苦手」:サンディエゴ・パドレス編

 今季、打者に専念する大谷翔平はどの投手を得意とし、苦手としているのか? 対戦チームの投手陣との相性を過去の実績から振り返りつつそれぞれの特徴、大谷との対決の見どころを紹介していく。今回は韓国・ソウルでの開幕2連戦、4月13日から15日までホームでの3連戦を戦うサンディエゴ・パドレスの投手陣を分析する。

【韓国で迎える"ビッグツー"初対決】

 ロサンゼルス・ドジャースとサンディエゴ・パドレスの韓国での開幕シリーズ、多くの日本人ファンにとって、一番の注目ポイントは大谷翔平とダルビッシュ有の初対決ではないだろうか。

 言うまでもなく野球は1対1の勝負ではないことが前提だが、まず頭に入れておきたいのはダルビッシュがメジャー30球団の中でドジャースに最も良い結果を残しているという点だ。12試合に先発、75.2イニングを投げ、通算防御率2.38、92奪三振である。10試合以上対戦しているチームの中では防御率はトップ。ダルビッシュは以前から「ドジャース戦は特別」と話し、モチベーションも高くなると認めている。1番ムーキー・ベッツもダルビッシュには通算で打率.194、出塁率.265、長打率.387と打てていない。4番を予定されるウィル・スミスも打率.190とお手上げだ。5番のマックス・マンシーも29打席で12個の三振、ベテランのジェイソン・ヘイワードは12打数1安打、ユーティリティ選手のクリス・テーラーにいたっては13打数0安打。打っているのは3番フレディ・フリーマンくらいである。

 そのため、2番・大谷がダルビッシュを攻略し、フリーマンにつなげられるかどうかが開幕戦のカギを握ることになる。大谷は右投手には非常に強い。通算打率.327、出塁率.431、長打率.701、OPSは1.132だ。

 ダルビッシュは先日、対大谷について訊かれると、「ドジャース全体と対戦するのが先なので、もちろん楽しみにはしていますけど、これからしっかりベッツだったりほかのいい選手も含めて、勉強して試合に臨みたいと思います」と話している。

 最近のダルビッシュは好んで「勉強」という言葉を使う。チームのデータベースを閲覧し、対戦相手の傾向を詳しく調べ、ラップトップで自らゲームプランを練って試合に臨む。球団のスカウティングレポート担当とも仲が良いそうで、初球から打ってくるのか、どのコースなら振ってきやすいのか、得意な球種、苦手な球種など、丸裸にしていく。スイングの特徴も映像で確認し、その上でフォーシーム、ツーシーム、カッター、スプリット、スライダー、スイーパー、カーブなど多彩な球種を駆使して弱点を突いていく。彼ほど武器の多い投手はメジャー全体を見渡してもほかにいない。「ゲームの中でいろんなピッチャーになっていけるのが自分の強み」と話す。

【大谷に強くドジャースに弱いマスグローブ】

 ダルビッシュにとって参考になるのは第2戦先発の同僚、ジョー・マスグローブかもしれない。大谷とは過去に7度対戦しており、すべて討ち取っている。実はメジャーリーグ全体でも右の先発投手の中では最も優秀な戦績だ。

 初対決は2021年の8月27日で、この試合ロサンゼルス・エンゼルス相手に3安打完封、9奪三振と圧倒した。一番打者の大谷も第1打席、内角のカッターで空振りの後、カーブに浅い左飛。2打席目も内角低めのカーブに空振りのあとカーブに二ゴロ。3打席目はカッターで空振りのあと、カーブで浅い中飛。4打席目は内角高め直球に中飛だった。

 2度目の対戦は2023年の7月4日。この時もマスグローブはエンゼルス相手に7回3安打1失点11奪三振の好投を見せた。3番大谷に対し、第1打席は高めの直球で攻め、高めのカッターで空振り三振。2打席目はカーブに浅い左飛。3打席目は真ん中カッターに一ゴロだった。マスグローブは直球が全投球の24%程度で、球速も速くはないが、多彩な変化球を駆使し、ボール球を振らせることができる。

 マスグローブはメジャー最初の5年間は成績が芳しくなかった。それが2021年にダルビッシュとチームメートになったシーズンから変わった。以前は直球主体だったが、曲がり球主体のピッチングに転換。そこには6歳年上のダルビッシュのアドバイスもあった。

「ジョーはスライダーとカーブが両方鋭いのでベストピッチ。真っすぐの、いわゆるピッチトンネルに乗っている(複数の球種を投じる際、途中まで同じ軌道で通すこと。打者の判別が難しくなる)。一方で真っすぐの球質はあまり良くなく棒球という感じだけど、カットボールをうまく併用するようになった。打者はどちらかわからなくてファール、ファールになる。ピッチデザインでもっとこうしたいと(ほかの投手が)言った時に、僕は結構意見を求められるし教えられることもある。(過去に)試行錯誤をしてきたけど、それが役立っている」(ダルビッシュ)

 こんな背景もあり、マスグローブvs.大谷の対決は自分のことのように注視していただろう。それを今回は生かすはずだ。

 だが、そのマスグローブ、実はドジャース相手の通算成績は11試合に先発し0勝7敗ととても相性が悪い。ダルビッシュとはそこは真逆。ベッツ、フリーマン、マンシーにも打率.350以上とよく打たれている。4勝1敗、防御率2.53とお得意様のエンゼルスとは違う。ゆえにエンゼルスの大谷に対して投げるのと、ドジャースの大谷に対して投げるのでは気持ちの上で相当変わってくるだろう。この差が第2戦、どんな結果になって現れるのかも興味深い。

【大谷にパワー対決挑む2番手以降候補】

 ダルビッシュは開幕戦の球数が75球くらいになると明かしている。長く投げてもせいぜい5イニングだ。3月という早い時期、2試合の短いシリーズでの登板で首脳陣は無理をさせたくないし、米国本土での次の公式戦まで1週間近くも間隔が空くため、リリーフ投手を総動員できる。

 パドレスのマイク・シルト監督は先発ローテーション3番手のマイケル・キングのリリーフ起用もあると明かしている。トレードで獲得したばかりのホワイトソックスのエース、ディラン・シースについては、大リーグ公式サイトはソウルでは投げないと報じているが、首脳陣は使えるものなら使いたいだろう。シースの対ドジャースの戦績は2試合、10イニングで18奪三振と圧倒的だ。

 個人的にとても楽しみなのが大谷とこのふたり、キングとシースとの対決だ。ともに直球が滅法速く、決め球の変化球も英語でいうところの「Nasty(えげつない)」な曲がり方をする。ふたりはこれまで大谷に力勝負を挑んできたし、大谷もフルスイングで応えてきた。やるか、やられるかだ。キングとは5度対決し、2本塁打、2三振。シースとは11度対決し、2本塁打、4三振である。四球は一度もない。

 キングの武器はスイーパーだ。2023年はメジャーの平均的なスイーパーよりも3.4インチ(約8.6cm)余分に曲がり、空振り率39.5%だった。空振りさせた時、バットとボールが平均でどれだけ離れていたかを示す指標でも、ブレイク・スネル(パドレス)のカーブの10.4インチ(約26.4cm)、タイラー・グラスノー(今季からドジャース)のカーブの9.6インチ(約24.4cm)に次ぐ、9.1インチ(約22.9cm)だった。

 だが、大谷はそのスイーパーを打ち砕いている。2021年6月28日、当時ヤンキースにいたキングから第1打席、打球速度117マイル(187km)の弾丸ライナーを右翼スタンドに突き刺した。解説者は「ミサイルのような打球」と驚嘆していた。2023年7月17日には97マイル(155km)の速球も打ち返した。捕手は外角高めに構えていたが、外角ベルト付近に行き、大谷は会心のスイングで左中間への同点本塁打。珍しくバットを放り投げて喜びを露わにした。「2ストライクのカウントで欲が出て、必要以上に良い球を投げようとしてしまった」とキングは悔やんでいる。

 一方のシースは2022年に14勝8敗、防御率2.20の好成績で、サイヤング賞投票で2位に入った投手。武器は高速スライダーで昨季も空振り率は43.3%だ。ほかにも平均球速96マイル(約154km)の直球、80マイル(128km)のナックルカーブを駆使し3年連続で200奪三振以上をマークしている。大谷は、そのシースのベストピッチも打ち砕いた。2021年4月4日は、97マイル(155km)の高め直球をフルスイング、打球速度115.2マイル(184.3km)、飛距離137.4mの特大の本塁打となった。2023年6月26日の対戦では、捕手は外に構えていたが、スライダーが内側に入り、打球速度113マイル(181km)、136mと再び特大の一撃。シースは「脱帽だね」と舌を巻いている。2人が試合中盤に2番手で出てくればスタジアムが盛り上がるのは間違いない。

【スアレス、松井裕樹の元NPB選手との対戦も】

 試合終盤、パドレスのマウンドに立つのは元ソフトバンク、阪神の右腕ロベルト・スアレスになる。平均球速98マイル(157km)の直球、90マイル(144km)のチェンジアップが武器で大谷とは初対決となる。あるいは元楽天の左腕、松井裕樹かもしれない。松井は大谷との対戦の可能性について「アジアでの公式戦は日本人としてうれしい。しっかり準備したい」とコメントしている。

 ふたりがどの順番で起用されるかはわからない。スアレスは1回限定ではなく4つのアウトも取れるし、打者とのマッチアップを優先し、8回にスアレス、9回に松井のケースもあり得る。スアレスは「いつ起用されるかは監督が考えること。8回でも9回でも4アウトでも、自分は準備ができている」と意気込む。

 彼らと別に、パドレスには試合後半、大谷のバットを封じ込めたい時に起用できるリリーフ左腕が2人いる。ウェンディ・ペラルタとトム・コスグローブだ。ペラルタはドミニカ出身、メジャー経験8年で、平均球速96マイル(154km)のシンカーと89マイル(142km)のチェンジアップを武器にゴロを打たせる。昨年までヤンキースに所属で、対大谷は6打席で5打数1安打1四球、3三振。2021年8月30日はインコース攻めで、最後は内角シンカーで見逃し三振。2022年6月2日は、内角のチェンジアップに3度空振りしての三振だった。2023年4月19日はシンカーで追い込まれ、チェンジアップで空振り三振。20日はピッチクロック違反で1ボールからのスタートとなり、3球で四球となった。

 コスグローブは2017年のパドレスのドラフト12巡指名選手で、昨季メジャーデビューを果たした。スリークォーターから投じる角度のついた球が持ち味。2023年7月3日の初対決は直球で追い込まれ、大きく曲がる75マイル(120km)のスイーパーに腰砕けの空振り三振。その2日後の2度目の対決も2球目のスイーパーにバットを辛うじて当てたが、前のめりで、右手一本で当てただけの三飛だった。2023年の相手打者の平均打球速度は83.9マイル(134km)で、誰に対しても強い打球を許さなかった。

 シルト監督は「ブルペンに左投手で複数の選択肢があるのはとても助かる」と微笑む。もちろん大谷も、いつまでもやられてはいない。どうアジャストするか、とても楽しみだ。

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