56歳貯金1600万円。夫が50代で亡くなり、将来が不安で仕方がないです

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2024年03月20日 22:21  All About

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家計の悩みにお答えする「マネープランクリニック」。夫が50代で亡くなり、お金を遺してくれたものの将来が不安だという56歳のパートの女性に、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

現在はパートで働いておりますが……

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回の相談者は、夫が50代で亡くなり、お金を遺してくれたものの将来が不安だという56歳のパートの女性です。息子さんにお金を遺したいと思っていますが、自宅の修繕費用もかかるといいます。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

相談者

じょん子さん(仮名)
女性/パート・アルバイト/56歳
東北/持ち家(一戸建て)

家族構成

一人暮らし、老犬1匹(9歳)、息子は独立している

相談内容

夫が亡くなり、将来が不安で仕方がないです。夫が50代で亡くなりました。遺してくれた預貯金は2000万円弱。そのうち1000万円を将来、一人息子に残そうと思い、別預金に移しました。

残りの1000万円から葬儀・病院支払いなどを引いた金額で生活を再開しました。現在1日7時間のパートで働いております。週休2日制です。

最初の5日間は7時間でトライしてみましたが、体がついていかず、次週の最初の月曜日は体調不良で休みました。翌日から午前中4時間で調整しており、数カ月先まで、この状態で契約をしています。

7時間勤務を希望しております。7時間勤務ですと、協会けんぽ、厚生年金に加入できます。体も少しずつ慣れてきましたので、頑張れるのではないかと考えています。この場合、週休2日制になります。会社からは体に無理をせずに、と言われています。

ダウンサイジングしながら暮らしているつもりですが、やはり毎月大赤字です。収入は遺族年金の月10万円強とパート収入です。パート収入は月8万円ぐらいの見込みです。

保険料が高額で、夫は生前、なるべく継続したほうがいいが、続けられなくなったら1本だけ解約してもいい、と言っていました。現在は継続中です。犬を飼っており、9歳ですが持病の数が多く、検査代・薬代などで毎月3万円ぐらいの出費です。いつ急変してもおかしくない病気も持っています。

私自身も通院しており、毎月1万5000円ぐらいかかっています。サプリも月6000円ぐらいで、かかりつけの医師からは高いけど続けたほうがいい、と言われ続けています。

買い物は週末1回で1週間分をまとめ買いです。家計簿をつけるのが苦手で、食費と生活必需品(トイレットペーパーやシャンプーなど)とまとめた金額を食費にしてあります。自宅のメンテナンスをまったくしてこなかったので、これからはあちこち壊れては直し、の連続と思われます。費用の捻出のイメージが持てません。

息子は県内で転勤する形態です。請負の会社で正社員ですが、夫によると大卒にしては安い給料だとのこと。息子からの援助は受けるつもりはないです。奨学金の返済は毎月1万4000円強を私が返しています。あと10年ぐらい返済が続きます。息子に少しでもお金を貯めてほしいからです。

夫の両親は他界しており、私の母も亡くなり、父が認知症のためグループホームに入所しております。私の両親がコツコツとお金を貯めていてくれたおかげで、これまでも今後も、両親のために私や兄弟がお金を出すことはないので助かっています。

家計収支データ

じょん子さんの家計収支データは図表のとおりです。
相談者「じょん子」さんの家計収支データ


家計収支データ補足

(1)収支について(相談者コメント)
手取り月収は、遺族年金20万2720円(2カ月分)、もし7時間勤務が無理として、4時間×週6日×月4週間勤務として記入しています。

国民年金のままです。ボーナスは出るとのことですが、私の場合、1年後のボーナスが最初となるそうです。金額はその都度決まるとのことです。

(2)住居費について(相談者コメント)
住居費4600円は、固定資産税を月割した額になります。修繕が必要となりそうな場所は、物干し場の波板屋根、トイレの床(踏むとへこむ)、居間の畳の下(踏むとへこむ)、今のところ心配なのはそんなところです。

今すぐというわけではありません。家は息子に相続させようと考えています。家を残すか処分するかは、息子に任せようと思っています。

(3)奨学金について(相談者コメント)
奨学金について、借入額240万円、利息の合計は15万1357円、返済期間はあと9年。毎月1万4227円の返済です。

(4)年金について(相談者コメント)
年金は65歳から年93万269円受け取れるようになっています。経過的加算は63歳から年平均15万円もらえます。しかし、遺族年金のほうが高いので、私の年金も経過的加算ももらえないのだろうと思います。

(5)加入保険について
本人/10年確定年金(定額型、年金開始年齢60歳、年金年額88万円)=毎月の保険料1万275円
本人/10年確定年金(定額型、年金開始年齢60歳、年金年額75万円)=毎月の保険料1万282円
本人/医療終身保険(無解約返戻金型、終身。65歳まで払い込み、6大生活習慣病追加給付あり型、入院給付日額1万円、基本給付金額1万円、がん検診給付金額100万円、抗がん剤(腫瘍用薬)治療特約給付金10万円、先進医療一時給付金額5万円)=毎月の保険料1万8876円
本人/変額保険(終身型、65歳払済、死亡保険金額(基本保険金額)300万円)=毎月の保険料1万1673円

FP深野康彦の3つのアドバイス

アドバイス1:奨学金は一括返済して、収支の赤字を解消すれば大丈夫
アドバイス2:65歳まで無理なく、今のペースで働くことが安心につながる
アドバイス3:70歳まで貯蓄も増え、100歳まで心配なし

アドバイス1:奨学金は一括返済して、収支の赤字を解消すれば大丈夫

ご主人が早逝されたこと、お悔やみ申し上げます。さまざまな手続きも大変だったことと思います。生活を再開され、パート勤務もされ、十分ご立派です。どうか頑張りすぎないでください。

長時間勤務を希望されていますが、勤務先も体に無理せずと言ってくださっているのですから、健康にだけは気をつけてください。

将来が不安な気持ちは十分理解します。毎月大赤字と書かれていますが、大丈夫です。少し家計を見直すことで、赤字はすぐに解消できます。また、老後についても、過剰に不安になることはありません。ひとつずつ紐解いていきましょう。

家計管理はしっかりなさっていますので、減らせるところはないと思われるかもしれませんが、通信費と保険の見直しで赤字はなくなります。通信費はお一人にしては少し高いと思います。プランの変更や格安スマホへの乗り換えも含め、5000円程度は減らせるでしょう。

保険については、変額保険は払い済みにし、これ以降の保険料の支払いをなくします。保障はこれまで支払った保険料相当分ということになりますが、息子さんは独立していますので、それほど多くの死亡保険金は不要です。これで、毎月1万6000円ほど削減でき、赤字は解消です。

もうひとつ、奨学金についてです。息子さんに代わって返済されていますが、そうであれば、一括返済してしまってはいかがでしょうか。おそらく残りは170万円程度だと思われます。

アドバイス2で詳細は説明しますが、現在の金融資産であれば、一括返済しても問題ありません。完済すれば気持ちの整理もつきます。毎月の返済額は、貯蓄に回せますので、1万4000円で年間17万円。60歳までに68万円貯めることができます。

家計を少し整え、毎月貯蓄できれば、気持ちもだいぶ落ち着かれると思います。心のゆとりのためにも、この68万円は旅行や趣味など、ご自身の楽しみのために使ってもいいでしょう。

アドバイス2:65歳まで無理なく、今のペースで働くことが安心につながる

その上で、65歳まで現在の収入が続くとして、金融資産がどうなるか、順を追って計算してみましょう。

まず、現在の貯蓄は1600万円で、そのうち1000万円を息子さんに残したいということですが、今の段階で明確に分ける必要はないと思います。もし分けるとしても500万円で十分です。

じょん子さんに万一の時は、払い済みにした変額保険が支払われ、分けておくとする500万円と使い切らなかった金融資産も相続されるわけですから。息子さんの将来を思いやるばかりに、ご自身の生活が不安になってしまっては元も子もありません。

仮に、1600万円のうち500万円を差し引き、また奨学金を一括返済した残り930万円がじょん子さんの今の貯蓄ベースだとします。60歳までは、現状の収支で大丈夫です。赤字は解消できていますので、貯蓄からの取り崩しもありません。

60歳からは個人年金保険(10年確定年金)が収入として加算され、年額163万円は、まるまる貯蓄することができます。さらに、これまで支払っていた個人年金保険の保険料2万円も貯蓄することができ、年間で24万円、5年で120万円になります。

65歳の時点で、金融資産は、930万円+815万円(163万円×5年)+120万円=1865万円まで増やすことができるのです。

65歳時点で2000万円弱の金融資産があれば、それほど不安に思うこともないでしょう。ただ、65歳まで今のペースで働き、収入を得る前提ですので、やはり、長時間勤務ではなく、現状維持に努め、長く健康で働けることを一番に考えてほしいと思います。

アドバイス3:70歳まで貯蓄も増え、100歳まで心配なし

では、65歳以降は、どうでしょうか。

65〜70歳は、年金額は仮にじょん子さんの申告通りの金額であるならば公的年金の93万円と個人年金保険の年金163万円が収入となり、年間で256万円。

支出は、保険料の支払いなどなくなり毎月15万円とすると年間で180万円。収支差は76万円です。これも貯蓄するとしたら、5年で380万円となり、都合2245万円が70歳時点で残ります。

70歳以降は公的年金のみとなり、年間での収支は90万〜100万円がマイナスとなり、ここでようやく貯蓄から取り崩すことになります。でも、2200万円残っていますから、ゼロになるのは25年後。つまり100歳です。

いかがですか? これに息子さんのために残してある500万円と払済にした変額保険の保険金もありますから、心配する必要はありません。

自宅の修繕費用は、一度見積りを取られてみてはいかがでしょうか。歳を重ねてからの修繕工事は、気苦労が多いものです。

300万〜500万円程度かかったとしても、その後の生活がラクになるのであれば、早めに気になる部分だけでも修繕してしまったほうがいいように思います。

どうぞ、過剰に将来を不安に思うことなく、ワンちゃんと穏やかな生活を送ってください。

相談者「じょん子」さんから寄せられた感想

奨学金の一括返済、保険料を払い済みにすること、スマホを格安に変更、そしてそれらの分を貯蓄に回す、などなど、細かく丁寧に知恵を授けてくださって本当に感謝しております。読んでいて涙がこぼれました。

私一人では不安が先立ち、お金の管理・使い方の工夫を考えることができませんでした。心がだいぶ軽くなりました。これからは心身共に健康に気を付けて生きていこうと思います。それが子どものためにも一番だと気づきました。今回は本当にありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文:伊藤加奈子
(文:あるじゃん 編集部)

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