Y!mobile初の縦折りタイプのスマートフォン「Libero Flip」。2024年2月29日に発売され、Y!mobileオンラインショップ価格が6万3000円(税込み、以下同)と、7万円を切る安さに驚いた。
【訂正:2024年3月21日11時25分 初出時、Libero Flipの発売日に誤りがありました。おわびして訂正いたします。】
しかも、新規契約、またはMNPで乗り換えて料金プラン「シンプル2 M/L」に加入した場合、端末代金から2万3200円が割り引かれ、3万9800円で購入できる。
なぜソフトバンクがY!mobileで激安折りたたみスマートフォン市場に挑むのだろうか。その理由や戦略について、ソフトバンクで戦略面や端末事業に関わる3人に聞いた。
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・LINE&Y!mobile事業推進本部 Y!mobile事業推進統括部 統括部長 宮崎仁氏
・LINE&Y!mobile事業推進本部 Y!mobile事業推進統括部 企画管理部 部長 長井祐貴氏
・モバイル事業推進本部 パートナービジネス統括部 パートナービジネス2部 1課 課長 山田哲也氏
●Liberoというブランドとは? Libero Flipのターゲットは?
―― そもそもLiberoというブランドは、どのような意味を持ち、またどのような位置付けになりますか?
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山田氏 Liberoは、ソフトバンクでスマートフォンを出していたときに付けていたブランドです。Y!mobileでの製品展開時にも同じブランド名にした方が分かりやすいと判断し統一しました。
―― Liberoブランドのターゲットはどのような年齢層ですか?
山田氏 Liberoの名を冠した製品は、お求めやすい価格ですから、若年層の方から年配層、もっといえば、初めてスマホ持たれる方にはちょうどいいブランドだと思います。
―― Liberoとしても折りたたみスマートフォンは初めてでしょうか?
山田氏 初めてです。
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―― ZTEとしても、このモデルの発売は、今回が初めてでしょうか?
宮崎氏 そうです。
―― Libero Flip投入の狙いを教えてください。
宮崎氏 Y!mobileを開始してから、基本的にはそのお客さまの大半が価格コンシャス層、ファミリーの30〜40代くらいの人が多いですが、われわれとしては今後、裾野を広げるべく、20〜30代の人を狙っていきます。事前調査でも、この形のスマートフォンが若年層に受けていたと認識しています。若年層に向けた折りたたみスマートフォンの第1弾モデルとして、Libero FlipをY!mobileで発売するに至りました。
―― その調査は御社として行われたのでしょうか?
宮崎氏 はい。ソフトバンクによる調査です。海外では折りたたみスマートフォンが伸びてきていますが、日本では約1〜2%しか折りたたみスマートフォンを持っていないため、これからなのかなという肌感です。折りたたみスマートフォンに手を出さない理由を調査すると、大半の人が「高額だから」と答えました。それを何とか打破したいという狙いもあり、ZTEのLibero Flipを投入しています。
―― 若年層というところをもう少し教えてください。
宮崎氏 先ほども申し上げた通り、20〜30代ではありますが、その中でもスマートフォンの使い方をすごく熟知してらっしゃるような方々になります。そういった方々をターゲットとしていきたいと思います。調査では、男女を問わず20代ぐらいの方々の反応がすごくよかったです。性別関係なく若年層を取り込んでいきたいと考えています。
―― どれくらいの期間に実施した調査でしょうか?
長井氏 どういったリサーチなのかによって期間は異なります。調査自体は1カ月程度ですが、準備期間を含めると3カ月程度です。基本的には市場全体なので、ソフトバンク以外の機種も持っているような方を対象としています。
―― なぜY!mobileで取り扱うのでしょうか?
宮崎氏 少し前にソフトバンクでも「motorola razr 40s」という端末を出しましたが、Y!mobileのいわゆる価格コンシャス層でも持てる、というメッセージを打ち出したかった。いずれこの市場が広がりを見せると見越して先手を打った形です。
―― Libero Flipをソフトバンクで販売される予定はありますか?
宮崎氏 今のところありません。
●価格は6万円台となった理由 省令改正の影響を受けた割引額
―― Libero Flipのような価格帯のスマートフォンは今後、ソフトバンクではなくY!mobileで販売されていくのでしょうか?
宮崎氏 そのあたりは、各ブランドで出した端末に対するお客さまの反応を見ながら、検討していきたいと思います。
―― 「電気通信事業法第27条の3」に関わる総務省令が改正されたため、割引額が2万3200円となったのでしょうか。
宮崎氏 はい。おっしゃる通りです。
―― 改正前は2万2000円でしたよね。
宮崎氏 そうですね。
―― 改正前と後で1200円の差がありますが、3万円台に収めたかったという意図でしょうか。
宮崎氏 こちらもおっしゃる通り、仕上がり(割引適用後)の価格を意識した設定です。
―― 割引による効果はありましたか?
宮崎氏 まだ初めの週(インタビュー実施日が発売して間もない日)なので、これからだと見ています。
長井氏 新規契約の方がLibero Flipを購入しているようです。
宮崎氏 1台目としてはもちろんですが、2台目需要も満たせる端末なのかなと考えています。新規が多いので、その兆しがあるような気はします。
―― 一括6万円台という価格で採算は取れるのでしょうか?
宮崎氏 はい。
―― ZTEで設計を工夫されたり、スペックを抑えたりしたのでしょうか?
山田氏 恐らく頑張っていると思います。他のメーカーさんですと、チップセットといわれる部分には、ミッドハイのものを使われています。そのあたりはZTEさんにも頑張っていただいたのかなと思います。
●ZTEの端末は故障率が低く信頼度が高い
―― なぜZTEのモデルを採用したのでしょうか?
宮崎氏 ZTEは、ソフトバンクとすごく密に連携しているパートナー企業の1社です。Y!mobile向けには通算5種類ほど製品を納入していますし、グローバルでもかなり製品を展開していますから、価格競争力がすごくあるメーカーさんです。比較的安価なフリップ端末を出したい、というわれわれの要望に最も近い形で応えてくれました。
ZTE製の端末は故障率が低く、他メーカーさんに引けを取らないスペックですので、製品としての信頼度が高い、というのも採用理由になります。これまでは約3万円台の端末が多かったですが、新しい市場を切り開いていきたく、ZTEさんと手を組みました。
―― Libero Flipで特徴的な機能があれば教えてください。
山田氏 まずは折りたためる構造そのものだと思います。折りたたんでコンパクトにして持ち運べる点と、サブディスプレイでさまざまな情報が確認できる点です。この2点が一番大きなポイントだと思います。OSはAndroidですので、他のストレートタイプのスマートフォンから乗り換えてお使いいただくこともできると思います。
―― ハードウェアとしては、「nubia Flip 5G」と同じですか?
宮崎氏 そうですね。グローバルモデルの詳細スペックについては公開されていないので、われわれからお答えはできませんが、差はほぼないと思います(※インタビューは、国内でnubia Flip 5Gを発表する前に実施)。
―― 発売後の反響はいかがでしょうか?
宮崎氏 フリップの形はもちろん、価格のインパクトは大きいです。やはり価格についての反響はあります。Y!mobileは既に1000万契約を超えましたので、そのお客さまからの声もこれからかなり集まってくると予想しています。
―― 他のメーカーさんを新規採用するのは難しかったのでしょうか?
宮崎氏 その物自体はよくても、デリバリーの体制が整っているかどうか、という点も重要になってきます。あとは、故障やトラブルの際、すぐにご対応いただけるかどうか、ですね。メーカーさんによっては、日本拠点がなかったり、サポート体制が整っていなかったりするので、そういったメーカーさんとの長いお取引は難しいと思います。
―― Foldと名付けられるような横開きではなく、縦折りのタイプの投入に至った理由を教えてください。
宮崎氏 高価だと買わない、という結論に至ってしまうのと、若年層を意識しているため、Libero Flipを選びました。横開きのFoldとなると、20万円前後くらいと高価な端末になってしまいますから、それはやはりソフトバンクに任せて、Y!mobileとしては折りたたみ端末の中でも比較的安価ではありながら、機能としては十分使える製品をお客さまにご提案したいという考えです。
―― 今後、横開きの検討はされていくのでしょうか。
宮崎氏 お客さまの反応を見ながらになると思います。
●2〜3年の利用を想定 若年層を意識してケースのプレゼント企画も
―― Libero Flip専用の保証サービスはないのでしょうか。
長井氏 1年間の保証はありますが、専用のサービスに関しては、お客さまの声を聞きながら、何か追加できるものあれば追加を検討します。
宮崎氏 安かろう、悪かろうというイメージは払拭(ふっしょく)したかったので、既存の保証サービスなどを活用し、できるだけその辺のケアを手厚くしたと自負しています。 Y!mobileは、Libero Flipに限らずですが、いわゆる格安と表現される機種を多く取り扱ってるブランドですので、安心も売りにしたいと考えています。オプションのサービスに「故障安心パックプラス」がありますし、お店に来店いただければ、アフターフォローを手厚くするサービスも用意しています。一時費用がかかるものもあれば、月額費用を負担いただくものもあります。
ですから、安価な端末を売って終わりにするのではなく、ご購入後もお客さまとY!mobileとの長い付き合いも視野に入れたサービスを構築しています。
―― 何年くらいの利用を想定しているのでしょうか?
宮崎氏 およそ2〜3年くらいですね。他のメーカー、端末と同じ範囲の年数です。
―― OSのアップデートとセキュリティの更新はありますか?
山田氏 もちろんあります。OSは最大2年で、セキュリティは最大3年です。
―― 「Libero Flip専用ケース プレゼントキャンペーン」は、ケースメーカーさんが負担する形でしょうか?
長井氏 こちらはメーカーさんですね。韓国市場や中国市場を参考にして、ケースがあるといい、と考えた結果、ZTEとFOXの協賛となりました。キャンペーンの実施はZTEが担当しています。
―― 他の端末ですと、あまり事例がないですよね。
長井氏 そうですね。
―― ケースのプレゼントも、若年層を意識した取り組みでしょうか?
長井氏 われわれの調査では「アクセサリーが少ないから折りたたみスマートフォンの購入をためらう」という意見が出ていました。
●取材を終えて:折りたたみスマートフォンに新たな選択肢 しかも安い
今回の取材を通して感じたのは、ソフトバンクとしてY!mobileのブランドに求められていることをくみ取る形で、折りたたみスマートフォンにチャレンジしていること。あらかじめ市場やユーザーをリサーチし、昨今の折りたたみスマートフォン市場に足りていない部分を、Libero Flipで埋めたという見方ができる。
一方で、ZTEがモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2024」の初日に当たる2024年2月26日に、ベースモデルと思われる「nubia Flip 5G」を発表し、3月14日にはオープン市場向けモデルが日本で発表されたものの、一括価格が7万円台とY!mobile向けモデルよりも高く、価格としてのインパクトに欠けた。
とはいえ、これまで高価ゆえに手を出せずにいた、一般ユーザーが折りたたみスマートフォンに手を出しやすくなったのも事実。しかも、Y!mobile向けモデルなら保証サービスが用意されており、転ばぬ先のつえになること間違いなしだろう。安価な折りたたみスマートフォンで先行したY!mobileに対し、UQ mobileがどのような手を打つのかも気になるところだ。
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