ソフトバンクが「大阪府でいちばん快適につながる」広告 優良誤認との指摘に同社の考えは?

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2024年03月22日 10:31  ITmedia Mobile

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大阪府でいちばんつながるとアピールするソフトバンクの広告

 「大阪府でいちばん快適につながるSoftBank」──。ソフトバンクがこのような広告を打っている。主に関西圏で展開されている広告で、東京都内などではこの広告は見られない。YouTubeではCMが公開されており、上戸彩さんが「ソフトバンクは快適につながる」と話している。


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 大阪府と一口にいっても、全てのエリアで快適、というわけではないようで、つながりやすいとされる場所として、「海遊館」「通天閣」「天王寺動物園」「ひらかたパーク」「梅田スカイビル」「南海なんば駅」「今宮戎神社」の7カ所が挙げられている。


 つながりやすい、とだけ聞けば、文字通り、快適に使えるのではないか、と受け止めることはできるものの、慎重深く読み解く人や、ソフトバンクの通信品質に満足していない人からすれば、いささかおおげさな表現に映るだろう。


 大阪府でいちばん快適につながるSoftBankと題したページでは、世界のモバイルネットワークのユーザー体感を分析している英Opensignal(オープンシグナル)と、ソフトバンクのグループ会社であるAgoopによる調査をもとに「つながりやすい」と訴えかけている。


 Opensignalが2023年9月15日〜12月13日に分析したデータをもとに、ソフトバンクが作成したグラフを見ると、ソフトバンクはA社(82.24)、B社(81.71)、C社(83.04)よりも高い86.07というスコアを獲得。調査リンクは貼られていないため、詳細を見ることはできないが、4社のうちソフトバンクは「一貫した品質」のトップスコアを記録したという。


 ソフトバンクがつながりやすいとする7カ所については、Agoopによる2023年12月時点の調査が根拠となっている。こちらも注釈に「MNO4キャリア比較」とあり、4社の中でソフトバンクが最もつながりやすいという。


 ソフトバンクがつながりやすい、という声は関東圏でも聞く。実際に筆者の行動範囲である都内でも通勤時間帯に最も快適と感じるのはソフトバンクだし、プラチナバンド取得までは圏外だった横須賀線の地下駅では問題なくYouTubeの動画を視聴できるようになった。


 また、OpensignalがJR山手線の主要駅でどのキャリアがつながりやすいのかを調査したところ、「一貫した品質」「5G利用率」「5Gゲーム・エクスペリエンス」という項目でソフトバンクが首位だった。


 なぜこうした評価につながっているのだろうか? 


 ソフトバンクは基地局のデータを端末側のデータで補完し、「細かいメッシュの中で、どこに通信の不安定さが残っているのかを分析する」(ソフトバンク常務執行役員兼チーフ・ネットワーク・オフィサーの関和智弘氏)手法を取っているという。


 また、品質改善のプロセスにAI・機械学習を活用し、つながりづらくなる問題が起きる前に対策している他、ユーザーから寄せられた声をもとにつながりづらい、またはつながらない場所を特定し、対策を実施しているという。


●それでもおおげさな表現 優良誤認との指摘も ソフトバンクはどう考える?


 ただ、それでもおおげさな表現であることは間違いなく、NTTドコモ 常務執行役員 ネットワーク本部長の小林宏氏は2月2日の記者会見で、「どういった調査での根拠をもとに、大阪府でいちばんつながる、とおっしゃっているのかが分からないのが、正直なところ」とし、この広告が「優良誤認に当たる」のではないか? との懸念を示す。


 そこで、ITmedia Mobileはソフトバンクに対し、そもそもなぜこのような広告を打ったのか、総務省のガイドラインに従って調査していないのはなぜか、など疑問をぶつけてみた。質問と回答は次の通り。


―― なぜ「大阪府でいちばん快適につながるSoftBank」との広告を打ち出したのでしょうか。


ソフトバンク 大阪エリアでもしっかりとネットワーク対策を進めてきた結果として、Opensignal社やAgoop社の客観的な分析データでNo.1の評価を確認できたためです。


―― 「いちばん」という言葉の選定理由を教えてください。


ソフトバンク No.1を表現するコピーとして、消費者への伝わりやすさを考慮し適切な言葉を選定しております。


―― Agoop社による7カ所での調査=大阪府でいちばんとはならないはずですが、どのようにお考えでしょうか。


ソフトバンク 前提として、大きく分けて2種類のNo.1表現があり(下記参照)、Opensignal社とAgoop社の2社による客観的な分析データを根拠として引用しています。


 前述の2社に「いちばん快適につながる」などの表現は分析データを正確に引用した記載である旨を確認の上、広告媒体にはそれぞれの根拠を明記しており、適切な広告表示となるよう留意しています。


 なお、いずれも「通信速度」を比較したものではなく、「ユーザー体感(快適性)」に関する評価である点、ご理解いただけると幸いです。


1. 大阪府でいちばん快適につながる という表現:Opensignal社が実施した調査において、「一貫した品質」という評価でMNO4社のうち弊社がNo.1であることが確認できました。詳細はLPにある通りですが、分析エリアは大阪府、分析期間は2023/9/15-12/13で確認しています。


2. ランドマークごとのNo.1(例:海遊館や通天閣など):Agoop社独自の分析データによる、通信開始から応答までの時間(の短さ)を測定して比較した結果に基づくものです。対象はMNO4社、分析期間は2023/9/15-12/13で、一定期間を設けて統計的に評価されたデータにおいて、各施設でNo.1であることが確認できました。なお、Agoop社のデータについて、7カ所のランドマークだけでなく、大阪府全体でも同様の評価基準でNo.1であることを確認しています。


―― 速度調査は総務省が定めた方法を使うべきではないでしょうか?


ソフトバンク 弊社は通信ネットワークを構築する上で、ユーザー体感(快適性)という点を大事にしており、今回はその観点で比較できる、Opensignal社やAgoop社の結果を引用しました。


 ソフトバンク広報からの回答をまとめると、OpensignalとAgoopの調査データに基づく広告であり、無根拠、根拠薄弱ということではない。ソフトバンクが2社に対して調査を引用した記載の許諾を得ていることも分かった。


 一方で、気になるのはソフトバンクがユーザー体感を重視している点だ。つながる=最も通信速度が高速、というわけではないし、ソフトバンクもいちばん高速、とは記載していない。


 優良誤認か否かは消費者庁の判断になるが、調査の詳細、つまりどのようにして調べたものなのかが見えづらい広告であるのも事実だ。OpensignalとAgoopの調査の詳細を見れるようにしてあれば、ドコモが「どういった調査での根拠をもとにしたもの(広告)なのか」と批判することもなかったのではなかろうか。


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