「おい看守 粗暴言辞は お前だろ」 受刑者たちが日常を表現した「刑務所アート展」

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2024年03月25日 18:21  弁護士ドットコム

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東京都内で一風変わったイベントが開かれている。会場に並んでいるのは、日常生活を送る中でわき上がってくる感情や未来に向けた思いを表現した俳句や絵など計133点。


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●身体拘束される中での表現

「終戦と 牛肉メニュー 願う日々」



この文章は、展示されている作品の一つだ。日々の平穏な様子がつづられているようにも見えるが、刑務所に服役中の受刑者が書いた。



長い時間、身体を拘束され続ける環境下で、牛肉を使った食事を欲する気持ちが抑えられなくなっている状況が思い浮かぶ。





刑務所での日常も赤裸々によまれる。



「詐欺で来た うけ・かけ・だし子 どの係?」



「先生に怒られている同囚を横目で見てる次は僕」



「年寄りは 冬の入浴 命懸け」



「おい看守 粗暴言辞は お前だろ」





やはり思い出すのは平和に暮らしていた頃なのか。家族への愛慕もつづられていた。



「母おいて 秋思に濡らしむ ふがいなさ」



「背を向けて途中で断ちた面会に残した母の訃報手にする」



「抱っこして」アクリル板の向こう側吾子は無邪気に伸す両の手



会場にはほかにも、青色のボールペンだけで描かれた猫の絵や、オリジナルストーリーの漫画、独特な字体で書かれたエッセイなど、全国29の刑事施設にいる受刑者52人の個性豊かな作品が展示されている。





この「刑務所アート展」を主催する任意団体「PAC(Prison Arts Connections)」によると、展示会は昨年2月に初めて実施し、今回が2回目。



●刑務所への偏見を越えて

刑務所と聞くと、事件発生直後に流れるニュースに引きづられ、犯罪に手を染めた悪人が入る場所というイメージが社会では先行する。しかし、事件を起こした人がその後どのように過ごしているかはあまり知られていない。



刑務所アート展は、そうした物理的、心理的な壁をアートによって乗り越え、塀の中と外にいる人が何らかのコミュニケーションを取る機会を創出しようと企画された。





PACの代表、風間勇助さん(32)は「刑務所の中は見えないが故に『受刑者は怖い人たち』となってしまう。でも、当たり前のことですが、受刑者といっても一人一人違う存在で、アートを通すことでそれが分かります」と話す。



●社会の見る目も問い返される

来場者からは「意外と鮮やかな絵が多かった」などといった感想が寄せられているといい、風間さんは「作品を通して私たちの社会が刑務所や受刑者をどう見ているのかも問い返されることになります」と説明する。





来場者の感想は出品した受刑者にフィードバックしているという。



刑務所アート展は3月30日までで、時間は午前11時〜午後7時。入場無料。場所は東京都足立区千住仲町49−11の「BUoY(ブイ)」2階ギャラリー。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)


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