天空がポータブルPC「AYANEO Flip」の予約販売を開始 実機を国内でお披露目 ハンズオンで作りの良さを実感

0

2024年03月29日 11:51  ITmedia PC USER

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia PC USER

「AYANEO Flip DS」(左)と「AYANEO Flip KB」(右)

 天空は3月29日、AYANEO製ポータブルゲーミングPC「AYANEO Flipシリーズ」の国内予約販売を開始する。予約販売時の価格(税込み)は「AYANEO Flip DS」が16万9800円、「AYANEO Flip KB」が16万3000円で、特典としてAYANEOオリジナルの専用ケースが付属する。


【その他の画像】


 このことに伴い、同社は報道関係者向けに「お披露目会」を開催した。お披露目会には同社の山田拓郎社長の他、オンラインでAYANEOのジャン・アーサーCEOが登壇し、本機の魅力を語った。


 この記事では、お披露目会の模様をお伝えする。


●ゲームに熱中しても熱くならない本体


 AYANEO Flipシリーズは、レトロゲーム機やレトロPCから着想を得たデバイスを送り出す「AYANEO REMAKE」構想に基づく製品群の1つで、AYANEO初のクラムシェル型ポータブルゲーミングPCだ。本シリーズには、基部にサブディスプレイを搭載した「DS(デュアルスクリーン)」とキーボードを搭載した「KB(キーボード)」の大きく2モデルが用意されており、両モデル共に基部の両脇にゲームコントローラー(パッド)を備えている。独立した光学式ポインティングデバイスもあるので、マウス操作も可能だ。


 DSとKBのいずれも、PCI Expressバスを外部接続するための「OCuLink端子」を搭載しており、OCuLink規格対応の外付けGPUボックスを接続することで、ゲームプレイや動画編集などの重い処理をより軽快にこなせる。


 APU(GPU統合型CPU)は「Ryzen 7 7840U」(8コア16スレッド/3.3GHz〜5.1GHz)を搭載しており、これを効率的に冷やす大型のベイパーチャンバーヒートシンクプレートも備えている。これにより、定格TDP(熱設計電力)の28Wで安定して駆動可能だ。


 なお、メモリは32GB(LPDDR5X規格)、ストレージは2TBのSSD(PCI Express接続)を搭載している。


●色再現性が高く、高速な液晶ディスプレイを搭載


 ディスプレイは、タッチ操作対応の7型フルHD(1920×1080ピクセル)液晶で、リフレッシュレートは最大120Hzとなる。色域はsRGB比で120%、DCI-P3比で100%をカバーしており、色再現性も高い。


 DSに搭載されているサブディスプレイはタッチ操作対応の3.5型で、パネル解像度は960×640ピクセル、リフレッシュレートは60Hzとなる。当初、サブディスプレイには同社独自のユーティリティアプリ「AYA Space 2.0」の一部情報(ファン回転数/リフレッシュレート/電源プロファイル)のみ表示できるようにする予定だったが、利用範囲を拡大して、通常のサブディスプレイとしても使えるようにしたという。


 天空の山田社長は、「ゲーム起動中やマッチング中などの待ち時間にサブディスプレイで動画を視聴したり、ゲームプレイ中にサブディスプレイで攻略サイトを見たりするなど、楽しみ方の幅が広がる。もちろん、AYA Space表示に切り替えれば、ゲームのパフォーマンスが見やすくなるでしょう」と活用方法を提案していた。


 ボディーの基本設計は、KBとDSで大きな違いはない。ただし、DSにはサブディスプレイに表示する内容を切り替えるための「Dual-Screen Keys」ボタンが追加されている。


 このボタンは、1度押すと「AYA Space(ダッシュボード)」と「Windowsのデスクトップ」を切り替えが可能で、素早く2度押すと「メインディスプレイとサブディスプレイのコンテンツ配置のリセットと拡張デスクトップモードへの復旧」が行え、長押しすると「サブディスプレイのオン/オフ切り替え」を行える。


 当然だが、サブディスプレイを使うと電力消費量は増える。バッテリー駆動時間を延ばしたい場合は、このボタンをうまく使うと良いだろう。


 ディスプレイの開閉角度は「120度」「150度」「180度」の3段階で、それぞれの角度でカチッと止まるようになっている。ディスプレイを閉じると、マグネットで固定されるので、バッグの中で中途半端に開くという事故を防げる。


 なお、ディスプレイは思ったよりも勢いよく閉まる。その際にディスプレイを傷つけないように、基部にゴムが仕込まれている。長く美しい状態を保てそうだ。


●ポート類は必要十分


 本体のポート類は、Oculink端子の他、USB4端子、USB 3.2 Gen 2 Type-C端子、microSDメモリーカードスロット(最大毎秒300MBアクセス対応)、3.5mmイヤフォン/マイク端子を備える。USB Standard-A端子は備えないが、ポータブルゲーミングPCとしては必要十分だろう。


 電源ボタンには、指紋センサーを搭載している。Windows Helloで指紋認証を設定しておけば、起動からログイン(サインイン)までをスムーズに行える。


 ボディーサイズは両モデル共に約180(幅)×102(奥行き)×29.8(高さ)mmで、重量は約650gとなる。カラーは「ミルキーホワイト」と「シャドウブラック」を用意する。


 なお、今回登場するAYANEO FlipシリーズはRyzen 7 7840Uを搭載しているが、AYANEOはAPUを最新の「Ryzen 7 8840U」(8コア16スレッド/3.3GHz〜5.1GHz)とした“強化版”を発表済みで、近日中に日本向けのクラウドファンディング販売も始まる予定だ。


 この点について山田社長に聞いたところ、「同じ32GBメモリ/2TB SSDという構成にすると値段はそれなりに上がる」とのことで、純粋にゲームを楽しむならRyzen 7 7840Uモデルでも十分だと考えているという。「(7840Uモデルは)価格とスペックのバランスがとても良い。どちらにするかは、Ryzen AI(AI処理に特化したNPU)の要/不要という観点から選ぶといい」とのことだ。


 さて、先に触れた通り、AYANEO FlipシリーズはAYANEO REMAKE構想の一翼を担う。ということは、何らかのゲーム機やPCから着想を得て開発されたということになる。果たして、何にインスパイアされて開発されたのだろうか……?


●「ニンテンドーDS」に着想を得たAYANEO Flipシリーズ


 特にAYANEO Flip DSを見れば分かるかもしれないが、AYANEO Flipシリーズは「ニンテンドーDS」や「ニンテンドー3DS」から着想を得てデザインされている。ただし、ニンテンドーDS/3DSではサブディスプレイを使うことが前提の専用ゲームが用意されていたのに対して、本シリーズでは“普通の”PCゲームを1画面に表示してプレイすることになる。


 「(AYANEO Flip DSのサブディスプレイは)表示サイズが小さく、タッチできるといっても難しい。ニンテンドーDSのようなタッチペンを付けることを考えなかったのか?」とある記者から質問を受けたAYANEOのアーサーCEOは、「AYA Spaceを表示することを前提として開発していたので、考えなかった。次があれば、そのアイデアを取り入れるかもしれない」と回答していた。


●AYANEO Flip DSのサブディスプレイについて“深掘り”


 Windowsの設定画面を見ると分かるが、AYANEO Flip DSのサブディスプレイは、「2つ目の画面(ディスプレイ)」として認識されており、メインディスプレイとの相対的な位置も変えられる。


 ただし、画面サイズが小さく解像度も低いせいか、サブディスプレイの投影解像度や表示倍率の設定は変更できないようである。本当は変えられるのかもしれないが、じっくりと試すほどの時間はなかったので、容赦いただきたい。


 サブディスプレイに表示する内容の切り替えは、先述のDual-Screen Keysボタンおかげでスムーズに行えた。


 メイン/サブ両方がもう少し大きな画面で、同じ機構を備えるPCがあれば「仕事用のPCとしても大活躍するのでは?」と思った。というのも、出先で仕事をした際に、「人の気配を感じたらサブディスプレイに表示した『マル秘情報』を隠す」という用途にも使えそうなレベルでサブディスプレイのオン/オフがスピーディーに行えるからだ(この際、外でマル秘情報を見ることの是非は考慮しないこととする)。


●持ちやすい本体デザイン


 ボディー全体は丸みを帯びており、握りやすいデザインとなっている。グリップ操作するだけあって、左右側面にはポート類を搭載していない。多くは背面に集約されている。


 一方で、前面にはステレオスピーカーと3.5mmイヤフォン/マイク端子を搭載している。最近はやっているBluetoothイヤフォン/ヘッドフォンは、無線を使うがゆえに音の遅延(ズレ)が生じることもある。特に音楽ゲームを楽しむゲーマーにとって、イヤフォンやヘッドフォンを有線接続できるのはうれしい仕様だろう。


 なお、グリップは取り替え可能で、表面が滑らかなタイプとザラつきのあるタイプの2つがパッケージに付属するという。オプションで買わなくていいのがうれしい。


●AYANEO Flip KBのキーボードの押し心地は?


 AYANEO Flip KBのキーボードは、「カチカチ」というより「プチプチ」とした押し心地だ。柔らかいながらもしっかりした押下感があるので、押したか押せなかったかわからないということはないだろう。独立したFnキーがあるのもうれしい。


 なお、左右にコントローラーがある関係で、男性でも通常サイズの手の持ち主であれば、中央のキー(「G」や「H」)をグリップから手を動かすことなく押すのは難しいかもしれない。


 キーボードにはRGB LEDバックライトが搭載されており、暗がりでも間違うことなくキーを押せる。短時間のハンズオンでは確認できなかったが、ライトカラーや明度はカスタマイズ可能とのこと。実機をじっくりレビューする機会があれば試してみたい。


●重量差がほとんどない「KB」と「DS」


 ハンズオンの最中に、記者の1人から「DSのほうが重く感じる……」との感想が聞こえてきた。そこで山田社長ははかりを用意して実測した所、公称値の通りに両者の重量にほぼ変わりはなかった。


 AYANEO Flip DSはサブディスプレイを搭載しているのに、重量差がそれほどないことにむしろ、報道関係者一同は驚いていた(筆者も驚いた)。


 AYANEOでは今後もさまざまなデバイスを開発、発表していくとのことで、すでに発表されている「AYANEO Pocket S」の公開も控えている。


 アーサーCEOは、そのお披露目とAYANEO Flipシリーズの紹介のため5月に来日予定だという。5月であれば、予約したAYANEO Flipが購入者の手元に届いているはずなので、AYANEO Flipシリーズの強化版の紹介を兼ねているのかもしれない。


    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定