◆Roy Ayers Quartet「Unchain My Heart」
次はレイ・チャールズの歌で有名な「アンチェイン・マイ・ハート」。演奏するのはロイ・エアーズ・カルテット。メンバーはロイ・エアーズのヴァイブ、ソニー・シャーロックのギター、ミロスラフ・ヴィトウスのベース、ブルーノ・カーのドラムズーー要するに当時のハービー・マンのグループから親分のマンさんが抜けた編成ですね。これは彼らが来日したときに、日本コロムビアが制作したレコードですが、契約の関係でマンさんは参加できなくて、サイドメンだけで演奏しました。でもね、親分抜きでもこれがずいぶんいいんです。ノリが黒くて、グルーヴィー。とくにこの頃のロイ・エアーズって、脂が乗っています。
録音も素晴らしい出来です。ダイレクト・カッティングの上に45回転盤なので、音がクリアで、ダイナミック・レンジも向上しています。
昔はオーディオ・ショップに行ってスピーカーなんかの試聴をすると、よくダイレクト・カッティングのレコードをかけてくれました。でもこれがちょっと問題でして、それほど大したことないスピーカーでも、録音がいいものだから、音がすごくきれいにダイナミックに聞こえちゃうんです。で、機械を買って帰ってうちで聴いてみると、「なんだ?」みたいなことになったりします。
だから僕なんかはオーディオ装置の試聴をしたいときには、よく自分のうちのレコードを持っていきました。スタン・ゲッツの昔のモノラル盤とか、普通の音質の普段聴き慣れたものを持っていくんです。そうすると機械の特性みたいなのが、シビアにわかります。あまり良い顔はされないみたいでしたけど。
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次はボーカルをいきます。アン・バートンの歌う「雨の日と月曜日は(Rainy Days And Mondays)」。ロジャー・ニコルズの作った名曲です。アン・バートンはケン・マッカーシーのピアノだけをバックに、しっとりインティメイトに歌い上げます。
このアルバムは1977年に彼女が来日したときに、東京のパイオニア・スタジオで録音されました。当時はダイレクト・カッティング技術に関しては、日本がずば抜けて優秀だったんです。
ダイレクト・カッティングって、いろんな現実的困難を乗り越えなくてはならない、苦労を伴う作業だったと思うのですが、現場のみなさんがよくがんばっていたみたいで、素敵な優秀な録音が数多く残されています。日本の技術者の人って、きっと一生懸命努力するのが得意なんでしょうね。じっと聴いていると、そういう真剣な空気がひしひしと伝わってきます。にじみ出てくるというか。
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3月31日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 4月8日(月)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:村上RADIO〜ダイレクト・カッティング特集〜
放送日時:3月31日(日)19:00〜19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
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