平野ルナ、単身でFIM女子世界選手権に初挑戦。未経験のヤマハYZF-R7で「日本の国旗を掲げることが目標」

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2024年04月04日 11:50  AUTOSPORT web

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2024年からFIM女子世界選手権(WorldWCR)に挑戦する平野ルナ
 2024年より新設され、スーパーバイク世界選手権(WorldSBK)との併催で争われるFIM女子世界選手権(WorldWCR)に平野ルナが参戦することになった。日本から唯一のエントリーとなる彼女だが、まだヤマハYZF-R7でのテスト走行もしておらず、5月にヨーロッパに渡るというが、どのような経緯で戦うことを決意したのだろうか。

 7歳からポケバイに乗り始めた平野は、2018年に全日本ロードレース選手権デビューを果たす。その後2021年は怪我で欠場が続いたが2022年に復帰し、2023年までの6年間をST600クラスで戦ってきた。さらに鈴鹿8耐やセパン8耐では1000ccマシンを駆りいずれも完走を果たしており、チームに貢献する走りを披露してきた。中間排気量から大排気量と多様に乗りこなしている平野は、2024年シーズンに新たな挑戦をすることを決意した。

「去年までいたTransMapRacing with ACE CAFEがちょうど5年経って(契約が)一度白紙状態になり、どうしようと考えていた時にちょうどWorldWCRの告知が出ました。初年度はわりとチャンスがあると思うタイプなので、チャレンジしてみました」

 平野の好奇心旺盛な性格から、これを機に世界に挑戦することを選択。だが、WorldWCRは新設されるカテゴリーということもあり、最初はエントリーのための手続きなどに手間取ってしまうことも多かったようだ。

「最初にエントリーの書類を手に入れるまでがすごく大変で、どこに聞いてもその情報は知らないと言われるばかりでした。最後にMFJの方に探って頂いて、締め切り1週間前くらいにやっとわかりました。でも、締め切りを早く打ち切るという告知が出て、『あと2日で締め切りだそうですよ』と急かされていました」

「個人で参戦するにはいろいろな後ろ盾がないとダメだということが結構あり、いろいろな方に協力を仰ぐのにすごく時間がかかってしまい、本当に提出日ギリギリでなんとか出せてホッとしました」

 慌ただしい状態のなか、周りのサポートもあって無事にエントリーを済ませることができた平野。そして、2月13日にFIM(国際モーターサイクリズム連盟)からエントリーリストが発表されたが、彼女が知ったのもこのタイミングだったという。

「自分もSNSでエントリーリストが出たのを知って、その後にメールで選考通過の通知が来ました。選考基準が何かは出ていないのでわかりませんが、鈴鹿8耐やセパン8耐にも出ていたので大丈夫だったのかなと思っています」

 これで平野のWorldWCR参戦が決定。6月から10月にかけ、WorldSBKの併催でヨーロッパのミサノ、イギリス、ポルトガル、ハンガリー、イタリア、スペインでレースが行われる。計24名の女性ライダーがフルエントリーしており、マシンはヤマハYZF-R7のワンメイクによって争われる。

 平野は今まで全日本ロードST600でヤマハYZF-R6を操ってきた経験はあるが、ヤマハYZF-R7は一度走行会で乗ったのみといい、実質初めてのマシンで戦うことになる。エンジンにおいてはヤマハYZF-R6は4気筒600ccなのに対し、ヤマハYZF-R7は2気筒700ccと気筒数と排気量が異なるが、平野はそこに不安な点があるようだ。

「少し乗らせて頂いた時に相当馬力がないと感じましたし、バイクが細いので少し冷や冷やしました。今まで体重は全然気にしたことありませんが、今回は減らさないといけないなと感じました。なので、どれだけアクセルを開けている時間が長いか、戻さないかという勝負になると思います」

 さらに「自分は単身で海外に行きますが、周りのライダーはチームで参加するようなので大丈夫か不安です。レギュレーションも読んでいますが、全部英語なので読むのにすごく時間がかかっています。ワンメイクでどこまでバイクをいじれるかはまだわかりません」とも語った。

 また、WorldWCRはマシンのみならず、燃料やタイヤにおいても共通で、ワンメイクとして行われる。ヤマハYZF-R7とピレリタイヤの初めての組み合わせ、そして走行経験がないヨーロッパのサーキットでの開催など初めて尽くしなことが多いなかで平野は今季を戦っていくことになる。

「自分は日本育ちなので、世界から見たらすごく良い路面しか知りません。ブリヂストンとの組み合わせで走ってきたので、海外の路面とピレリの組み合わせは全く想像がつかないですし、今まで乗ったことのないバイクになります」

「初めてのサーキットしかないので、短い時間でどう頑張ってそのコースを覚えてタイムを出すかですね。順位ももちろん上に行きたいと思いますが、想像することが難しいことばかりで怯えています」

 どのような面においても不安なことは尽きないようだが、少しずつ準備を進めているようだ。また、単身で挑むことになる平野は、日本からサポーターも数人連れ、5月のテストから最終戦の10月の約半年間はスペインに滞在する予定だという。

 そのテストでは事前にセッティングされたマシンに乗り込み、開幕戦に向けて調整を行っていくことになるとのことだ。テストや走行時間も少ないことが予想されるなかで、ほとんどのライダーはゼロの状態からスタートとなる。そのため、いかに早く適応できるかも試されそうだが、海外での開催という点においては平野にとってシーズンを通して学ぶ機会は十分にあるのではないだろうか。

 WorldWCRのなかには、WorldSSP300で二輪界初の女性ライダー世界チャンピオンに輝き、ロードレース世界選手権のMoto3クラスに参戦経験のあるアナ・カラスコも参戦している。さらにWorldSBKと併催ということもあり、間近で世界で活躍するトップライダーたちの走りを見ることができるため、平野にとっても自身のレベルアップに繋げることができる良い環境にありそうだ。

「パドックや内側から有名なライダーの走りやレースが間近で見られますし、すごく勉強になると思います。あと、いろいろな方に『日本と海外でのバイクレースは文化が全く違うから勉強になると思うよ』と言われたので、そこは楽しみですね」

 さらに「レベルが想像つかないので『表彰台に乗ります!』とは言えませんが……全日本ロードや鈴鹿8耐は経験しているので、上位を目指して怪我しないように頑張って走りたいと思います。日本の国旗を掲げることを目標に頑張ります」と意気込みも語った。

 覚悟を決めて未知の世界へと足を踏み込み、唯一の日本人ライダーとして、日の丸を背負って1年目を戦っていく。今まで日本で切磋琢磨しながら成長する姿を披露してきた平野が、世界でどのように己を成長させ、今シーズンを戦っていくのか見届けたい。

このニュースに関するつぶやき

  • 日本人の女性が参戦することにとても意味があると思います。初めてづくしで大変だと思いますが、今後の女性ライダーのために頑張って欲しい!
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