寡黙で力強い女性像描く初期2作&最新ドキュメンタリー「ニナ・メンケスの世界」予告編

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2024年04月11日 18:01  cinemacafe.net

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『マグダレーナ・ヴィラガ』©1986 Nina Menkes ©2024 Arbelos
男性中心の社会に映画を通じて一石を投じるニナ・メンケス監督の『マグダレーナ・ヴィラガ』『クイーン・オブ・ダイヤモンド』、現時点での最新作ドキュメンタリー『ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー』が「ニナ・メンケスの世界」として上映。この度、予告編が解禁された。

自らプロデューサーや撮影を務める特異な作品づくりと、そこから生み出される研ぎ澄まされた映像世界によって、多様なアメリカ映画界の中でも唯一無二の存在として1980年代初頭から現在まで活動を続けてきた女性監督、ニナ・メンケス。

近年、初期作品がレストアされるなど評価の機運が高まり、日本でも昨年国立映画アーカイブで開催された特集「アカデミー・フィルム・アーカイブ 映画コレクション」にて代表作『クイーン・オブ・ダイヤモンド』が上映。シャンタル・アケルマンやケリー・ライカート、ウルリケ・オッティンガーといった女性監督の上映、再発見に続き、最も注目を集めているといっても過言ではない。

今回解禁となった本予告は劇映画2本、初の長編『マグダレーナ・ヴィラガ』と代表作『クイーン・オブ・ダイヤモンド』、そしてドキュメンタリー『ブレインウォッシュ』の二部構成。

初期の劇映画はどちらもメンケス監督の最大の協力者にして実の妹、ティンカ・メンケスが主演。『マグダレーナ・ヴィラガ』では社会から隔絶された娼婦の役を、『クイーン・オブ・ダイヤモンド』ではラスベガスのディーラーの役を演じ、どちらも孤独なキャラクターながら力強くもある女性像を類まれな存在感で圧倒する。

真紅のネイルや指輪にウエディングドレス、ネオンの煌めきからターコイズブルーのプールサイドと、メンケス自身のキャメラがとらえる詩的な映像美も魅力だ。また、1本の木が燃え盛るさまを映した『クイーン・オブ・ダイヤモンド』での驚異のロングショットのシーンも確認することができる。

そして『ブレインウォッシュ』は現時点での最新作で、現在に至るまで映画がいかに「Male Gaze=男性のまなざし」に満ち、その描写がいかに我々の実生活にも影響をもたらしているか、多くの映画のクリップを用いて解き明かしていくドキュメンタリー。

予告編でもアルフレッド・ヒッチコック『めまい』、クエンティン・タランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、ポール・トーマス・アンダーソン『ファントム・スレッド』などのクリップが登場。映画という視覚言語がもつパワーについて、そして男性中心の社会に溢れる問題をめぐって投げかけるメンケスの問いと対話は見逃せない。

さらに、フェミニズム映画に詳しい明治学院大学教授・斉藤綾子からコメントも到着している。

【斉藤綾子(明治学院大学教授)コメント】
公開から30年。私たちはやっとニナ・メンケスのイメージに出会える幸運を味わえる。
スロット・マシーンの音が鳴り響くラスヴェガスのカジノ。真っ赤な爪が光り、黙々とカードを配るディーラーをじっと見つめるカメラ。色鮮やかなウィール・オブ・フォーチュンの前にじっと立つ監督の妹、ティンカ・メンケス。バーバラ・ローデン、シャンタル・アケルマン、ウルリケ・オッティンガー、アニエス・ヴァルダ、ジェーン・カンピオンの孤独なヒロインたちと同じく、ティンカは寡黙だ。内なる抵抗を、怒りを表す女たちの沈黙。ネヴァダの砂漠、ロサンジェルスのモーテル。
メンケスが描く荒涼としたアメリカ西部にジョン・ウェインはいない。
そのカラフルでミニマルな映像を一度目にしたら、決して脳裏に焼き付いて離れない。

「ニナ・メンケスの世界」『マグダレーナ・ヴィラガ』『クイーン・オブ・ダイヤモンド』『ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー』は5月10日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開。




(シネマカフェ編集部)
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