アプリリアで初優勝を遂げたビニャーレスが2023年に撒いていた種/第3戦アメリカズGP

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2024年04月16日 06:00  AUTOSPORT web

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アプリリアでついに初優勝を飾ったビニャーレス(左)と、アプリリア・レーシングCEOマッシモ・リボラ(右)
 アメリカズGPは文字通り、マーベリック・ビニャーレス(アプリリア・レーシング)が席巻した週末だった。スプリントと決勝レースで優勝を飾り、予選では2分00秒864というオールタイムラップ・レコード更新タイムでポールポジションを獲得した。決勝レースでは、14周目に2分2秒575を記録して、ファステストラップのレコードを更新している。

 さらには、ビニャーレスにとってアプリリアでの初優勝。2002年にロードレース世界選手権がMotoGPになって以来、3メーカーで優勝を飾った──スズキ、ヤマハ、アプリリア──初のライダーとなった。

 とはいっても、決勝レースのスタートは順調ではなく、ウオームアップで発生していたクラッチの問題がレースでも発生していたという。

ちなみに、前戦ポルトガルGPの決勝レースではギヤボックスのトラブルを抱えており、最終ラップ、3番手にポジションダウンした直後に、この転倒を喫してリタイアに終わった経緯がある。

 ただ、今回のクラッチのトラブルは、幸いにもビニャーレスの勢いを止めなかった。スタートで他者と接触したビニャーレスは、1周目を終えて9番手にまで後退していた。そこから追い上げて13周目にトップに立ったのだから、そのペースは圧倒的だ。

 ビニャーレスは後退しても、自分には追いつけるペースがあるとわかっていた。トラブルがあろうとなかろうと、この週末はビニャーレスのものだった、というほかない。

「昨年、バイクのバランスをかなり変更したんだ。だからまた速さを得ることができたし、優勝もできた。もちろん、今日みたいなレースは人生でもそうそうあることじゃないけどね」

 ビニャーレスは、レース後の会見でそう言って相好を崩す。

 2024年シーズン序盤から少なくとも今のところ、ビニャーレスは波に乗っている。その背景には何があるのだろうか。

「この自信と信念は、昨年から見出したものだよ。新しいクルーチーフのマヌエルと一緒にこのバイクと必要なことをよく理解するのに、1年かかったんだ。でも、その甲斐はあった」

 ビニャーレスが「新しいクルーチーフ」と表現しているホセ・マヌエル・カゾーは、2023年にビニャーレスのクルーチーフに就任した。

 カゾーはスズキでアレックス・リンスのクルーチーフを務め、さらにさかのぼればスズキ時代のビニャーレスと組んでいた人物で、ビニャーレスは厚い信頼を寄せているという。つまり、以前の女房役と「再びタッグを組むことになった」ということだ。

 振り返れば、ポルトガルGPで勝てるポテンシャルがあったにもかかわらず、ギヤのトラブルで転倒リタイアに終わったとき、レース後の囲み取材にやってきたビニャーレスは、意外なほど落ち着いていた。

 どちらかといえば、ビニャーレスは感情豊かなライダーなのだ。あのときの冷静さは、今、ビニャーレスが持っている自信と信頼から来るものだったのかもしれない。

「カタールから、僕はずっとトップあるいは上位をキープし続けている。もちろん、新しいバイクに乗り換えたときには容易ではなかった。でも、ポルティマオで何をすべきかよく理解できたし、今、すごく調子がいいんだ」

「要するに、自分のライディングスタイルで効果的に走ることができれば、本当に落ち着いて自信が持てるということなんだ。だから、僕たちは常にバランスを見て、いつも攻めてベストを尽くすために、こういうバランスを保つように努めなくちゃいけないんだ」

 ビニャーレスの言葉を踏まえれば、2023年はひとつの転換期だったのだろう。その取り組みは、記録尽くしの優勝という形で実を結んだ。

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