前職の情報“不正”に持ち出し 逮捕者も…警察への「営業秘密侵害」相談最多 その背景は? 企業はどうすればいい? 専門家が解説

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2024年04月19日 20:10  TOKYO FM +

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前職の情報“不正”に持ち出し 逮捕者も…警察への「営業秘密侵害」相談最多 その背景は? 企業はどうすればいい? 専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜〜金曜6:00〜9:00)4月17日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『営業秘密』の持ち出しに関する相談が最多 その背景と必要な対策は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


※写真はイメージです



2023年に全国の警察が受理した「営業秘密侵害」に関する相談(=企業情報の持ち出しなど)は、前年比19件増の78件となり、統計を取り始めた2013年以降で最も多かったことが警察庁のまとめで分かりました。

◆「営業秘密」とは?

塚越:営業秘密とは「不正競争防止法」で、次の3点を満たすものと定義されています。1つ目は、秘密として管理している情報。2つ目が、事業などに有用な情報。3つ目が、公に知られていない情報。この3つを満たしたものが営業秘密です。これを不正な手段で取得して使用したり、第三者に開示したりすると、不正競争防止法では個人に対して10年以下の懲役、または2,000万円以下の罰金が科されることになります。

◆前職の情報を不正に持ち出し…逮捕者も

吉田:「営業秘密」の侵害では、例えばどのようなケースが報告されているのですか?

塚越:勤務先の病院から患者の個人情報およそ180人分を持ち出したとして、2023年8月に長野県警が医療技師の男を不正競争防止法違反で逮捕しています。

他にも、大手総合商社「双日」の元社員の男が以前に勤務していた競合他社の商社である「兼松」の営業秘密を不正に持ち出したとして、2023年9月に逮捕されています。前の会社の同僚をだましてアカウントを取得し、情報を持ち出したということです。

ユージ:「営業秘密」の侵害に関する相談は、どのぐらい増えていますか?

塚越:営業秘密の侵害に関する相談は前年比19件増えて78件となっており、統計をとりはじめた2013年以降で最多となっています。また営業秘密侵害での摘発は去年が26件で、最多だった2022年に次いで2番目に多かったということです。基本的に摘発件数は増加傾向にあるので、今後も増えるかと思われます。

◆転職者の増加・流動化する雇用が背景か

ユージ:「営業秘密」の侵害に関する相談が増えている背景は何なのでしょうか?

塚越:まずは転職など、雇用が流動化するなかで(営業秘密の流出防止のため)対応しなければいけない企業が増えていることが挙げられます。

転職者数は2019年に過去最高の353万人となりました。その後はコロナ禍もあって転職者は減少したのですが、今後はまた増えると考えられます。

日本経済新聞が企業を対象にした調査でも、2024年度の社員採用に占める中途採用の比率は43%と、かなり多いです。新卒だけでなく、多様な人材が転職で活躍できる環境が構築されていくのは良いと思います。

一方で、前の職場で知った技術や営業に関する秘密情報を、(労働者側が)どのように保護するかが課題になっています。相談件数が増えているのも、こうした事情が以前よりも大きな課題になっているからだと考えられます。

◆企業側はどう対策をしていく?

ユージ:転職する人が増えるなか「営業秘密」の侵害を防ぐためには、どんな対策が必要だと思いますか?

塚越:まずは基本的な対策で、社員用のパソコンやUSBメモリなどの管理を徹底したり、特に重要情報のアクセスでは記録を残したりすること。これまでもあった対応ですが、より一層、気をつける必要があります。

もう1つは、転職してきた人(特に同業他社からの転職者)に対して、前の職場の情報を持ち込まないよう、誓約書で同意を取るなどの措置も今以上に必要になるかなと思います。

先ほど話した「双日」元社員が、前職の「兼松」の営業秘密持ち出しの件も、(兼松・双日両社は秘密保持の)誓約書を作って(容疑者と誓約書を交わして)いたのですが、それでも情報を持ち出されてしまったケースもありますので、そういうことは大事だと思います。

なぜかというと、4月に改正された「不正競争防止法」では、転職者を受け入れた企業が損害賠償を請求されるリスクが高まっているからです。今回の改正では、被害側が営業秘密を不正に取得されたこと、そして、その秘密を使って生産できる製品を相手企業が作っているという2点を立証できれば、損害賠償を請求できるようになりました。

こうした枠組みは、もともと外部の産業スパイによる持ち出しに限られていましたが、今回の改正では元従業員や情報の出どころを知ったのに、情報を削除するといった対応をしなかった場合も罪に問えるようになったということです。

それでも(どこまでが秘密で、どうやって不正をしたのかなどの)侵害行為を立証するのはまだ難しいという点があります。だからこそ、被害側がこれまでよりも声を挙げやすくし、今回改正もおこなわれるということになっているので、それに伴い相談も増えてきたとのことです。

一方で、こういったことがあるから「同業他社からの転職は難しい」という事態が起こってしまうのはよくないことですし、今回のことで言うと、営業秘密は海外への流出も懸念されますよね。だからといって、労働者の国籍によって採用を止めることはよくありません。

(国籍など多様な人材を採用することで)競争や企業の価値を上げたりするので、メリハリをつけることが大事です。企業を守るのも、転職も大事です。企業は課題も増えてきているので考えることが多いですが、ぜひそうしたところを考えていただければと思います。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ



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4月17日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月25日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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