どうする書店不況 ジュンク堂「稼ぐ」サイネージ設置 “過小評価”を払拭せよ

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2024年04月23日 12:31  ITmedia ビジネスオンライン

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書店が姿を消している(写真はイメージ)

 書店不況は深刻だ。出版科学研究所によると、2022年の日本の総書店数は1万1495店舗で、2003年時点では2万880店だった。約20年間でほぼ半減した形だ。


【画像で見る】ジュンク堂書店に設置されたサイネージ


 書店という業態を存続させるには、書籍販売以外に収益の柱をつくることが欠かせない。そんな課題を解決するために、丸善ジュンク堂書店は、リテールメディア(小売り店が提供する広告媒体)の運用に乗り出している。


 同社は2月から、書店の入り口にサイネージを設置し、広告を配信している。広告の内容はオンライン英会話の商材だ。書店に訪れる人の「学びたい欲求」と親和性の高いものを選んでいる。「書店の数は減り、本の売り上げも右肩下がりが続く中で、本と文具に続く事業を開発していかなければならない」と、丸善ジュンク堂書店で新規事業開発を担当する坂本恭亮氏は話す。


 同社が導入したリテールメディアの仕組みはこうだ。書店に訪れた人がサイネージに表示されたQRコードを読み込み、広告主のサービスに会員登録をすると、ジュンク堂書店で使えるクーポンが付与される。こうした仕組みで、広告を見た後のアクションを後押しする。これは「AdCoinz」という、実店舗空間に特化したテック企業、LMIグループ(東京都港区)が提供するサービスだ。


●Web上のアフィリエイト広告に代われるか


 クーポン発行の原価は広告主からの広告費でまかなわれる。店舗側はサイネージを設置する場所を提供することで設置代を受け取れ、設置にかかる初期費用はかからない。来店客がクーポンを使用し、追加購買をすることで売り上げ増も見込める。


 広告を見た人がその広告のサービスを購入した場合、店舗側にもレベニューシェアが行われる。サイネージにはAIカメラが搭載されており、サイネージの前を通った人の属性データは店舗側、広告主側に提供されるようになっている。


 AdCoinzの広告効果は、Web広告よりも高い可能性があるという。LMIグループがカラオケ業態の企業で実証実験を行ったところ、一般的なアフィリエイト広告の3倍に相当するアクション数が得られたという。


●小売りは“過小評価”を受けている


 LMIグループの望田竜太副社長は、小売り業を展開する企業は市場から“過小評価”されているのではないかと指摘する。


 「GAFAに代表されるようなメガテック企業は、膨大な生活者の行動データを抱えている。そのデータが市場から高く評価され、時価総額に表れている。一方でリテールビジネスもまた消費者の膨大なデータを持っているはずなのに、同様の評価は受けていない」


 他方、Web広告ビジネスの先行きも順風満帆ではない。サードパーティークッキーの廃止によって、データを収集すること自体が難しくなった。「生活者のデータを収集し、広告によって何かしらの行動をおこしてもらうには、Web以外の世界に出ていく必要があると思っている」(望田氏)


 姿を消しつつある「まちの本屋さん」を惜しむ声は少なくない。書店が持つ空間の特性を生かし、いかに付加価値を生み出すかが、書店とリテールメディアの腕の見せ所だ。


このニュースに関するつぶやき

  • すげぇ小さい事なのは常に背負ってる&きっと無知を守ってるから可能な道としてやってるが、残ってほしい場所を決めたらそこで何とかしたり買うようにしてる=確かに、これだなぁ‥でも前よりちょっと拓けた
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