中嶋一貴TGR-E副会長が分析する宮田莉朋のFIA F2での現状と今後の可能性「個人的な感想では期待以上」

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2024年04月25日 14:00  AUTOSPORT web

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中嶋一貴TGR-E副会長とWEC第2戦イモラ6時間ではTOYOTA GAZOO Racingに帯同した宮田莉朋
 2024年シーズンから活動拠点をヨーロッパに移し、FIA F2、そしてヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)にレギュラー参戦する宮田莉朋。特に全戦がF1のサポートレースとして開催されるFIA F2では、前年の全日本スーパーフォーミュラ選手権、スーパーGT GT500クラスのダブルチャンピオンという実績もあり、大きな注目を集めている。

 そんな宮田のFIA F2挑戦を影から支えているのがトヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ(TGR-E)の中嶋一貴副会長だ。FIA F2序盤3大会/6レースを終えた宮田の奮闘と、今後への期待を聞いた。

 デビュー戦となった第1戦サクヒール(バーレーン)では予選で5番手に入る速さを見せつつも、決勝では2レースとも順位を下げる展開に。それでも粘り強い走りを披露し、メインレースであるフィーチャーレース(決勝レース2)で9位に入り、開幕大会から初入賞を飾った。

 しかし、ストリートサーキットを舞台に開催された第2戦ジェッダ(サウジアラビア)では苦戦を強いられ、2レースとも後方に沈むことに。ただ、続けて迎えた第3戦メルボルン(オーストラリア)では、2レースとも5位入賞を果たすなど、海外レース初年度ながら奮闘をみせている。

「(前戦メルボルンは)現地で見ることはできませんでしたが、その前のジェッダのときから何となくいい気配というか……難しいながらも『少し良いきっかけになりそうだな』という雰囲気はありました」と中嶋副会長。

「(宮田に)『きっとメルボルンはジェッダより難しくはないよ』と言って送り出しました。本人的には『まだまだ』と思っているようですが、それでも良い結果を出してくれましたし、流れも良かったと思います。でも、それは流れを引き寄せる走りをしたからこその結果だと思うので、すごくポジティブに捉えています」とメルボルンでの2レース連続の5位入賞を振り返った。

 基本的にレース前後のミーティングなどはチーム(ロダン・モータースポーツ)に任せているという中嶋副会長。とはいえ、時間があれば常に連絡を取り合い、先述のとおり第2戦ジェッダには現地にも帯同したという。

「ただ、(TGR-Eとして)かしこまって“ミーティング”というかたちでやっているわけではなくて、(宮田との)会話のなかで(レースの振り返りなどの)話はしていますし、チームからもどういう状況だったかという話は聞くことができます。基本的には本人とチームに任せていて、そこでしっかりとやってもらえればと思います。僕はどちらかというと経験者目線で『こういうふうにやったほうが良いと思うよ』ということしか言うつもりはないです」

 開幕から3大会6レースの結果に対しては「ルーキーにも関わらず良くやっている」という声もあれば、「スーパーフォーミュラのチャンピオンなのだから、もっと頑張ってほしい」など、さまざまな意見がネット上で飛び交っている。

「いろいろな声があるのは、たぶんそのとおりだろうなと思いますし、スーパーフォーミュラのチャンピオンだから頑張ってほしいという声に関しては、本人も結構そういうつもりでやっているところはあります」と、中嶋副会長。序盤戦を終えた宮田の評価については、「僕としてはすごく頑張ってくれていて、それに見合った結果を出してくれていると思いますけど、本人はまだまだ満足してないだろうなというのも感じています」とのこと。ただ、今のFIA F2が参戦初年度のドライバーにとっては少々厳しいものになっているのは確かなようだ。

「やはり今のFIA F2は僕自身が走っていたころ(2007年/当時の名称はGP2)に比べても、ルーキーというかピレリタイヤやサーキットを知らない人にとってはハードルが非常に高いなと思っています。僕たちが走っていたころとはタイヤの特性が違っていて、連続でプッシュできない(編注:2010年まではブリヂストンがタイヤを供給)。走行時間が(昔と)同じだったとしてもプッシュできる時間は半分くらいです」

 これを加味した上で、中嶋副会長は改めてジェッダで宮田が置かれていた状況を振り返る。

「ジェッダのときもそうでしたが、あの“ややこしいコース”で(フリー走行中に)赤旗出て走行時間が半分になった。その上にプッシュラップとクールラップを繰り返している状態だと、実質的に3周くらいしかプッシュできていない状態で予選に臨まなければいけません。それは正直、めちゃくちゃ難しい状況だと思います」

「ジェッダを見ていて驚きましたけど、今は1秒以内に18〜19台がひしめいている状態で、やはりFIA F2に来るドライバー自体のレベルが高いなと思います。そこに割り込んでいくということは皆さんが想像している以上に、非常に難しいチャレンジをしていると思います」

「だから、スーパーフォーミュラでの経験は“別物”だと思わないと、本人にとっては非常にフェアではない状況だろうなと思います」

 この難しい状況を踏まえた上で、中嶋副会長は「(FIA F2は)けっこう荒れがちなレースでもあります。そのなかで走行時間を稼ぐというのはやはり、すごく大事なことなので『まずはちゃんと走り切ることを最優先にやった方がいいよ』という話はしています」と、宮田にアドバイスしたという。それを宮田本人もしっかりと理解してレースに臨めているようで、そこが今後への期待を膨らませているひとつの要因でもあるという。

「本人が若干マージンを取って走っている部分もあるとは思うので、ちょっと物足りなく映るところもあったりはするかもしれないですけど、今はしっかり経験を積む時期だと思います」と、中嶋副会長。

「ヨーロッパラウンドを迎えると、走ったことないところで走るということに変わりはないですけど、もう少し普通の(尖った特徴の少ない)サーキットになります。そうなったときに、彼が持っているマージンを少しずつ削り取っていけば、よりパフォーマンス見せてくれるんじゃないかなと思っています。僕自身の個人的な目線で言えば期待通り……期待以上にやるべきことをやってくれていると思います」

 先日スペインのバルセロナで行われたELMSでは見事優勝を飾った宮田。この勢いで5月の第4戦イモラから始まるヨーロッパラウンドでどんな走りをみせるのか、ますます目が離せない。

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