鳥居みゆきが発達障害の診断を受けない理由「何かしら診断名がつくのはわかってるけど…」

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2024年04月27日 15:50  女子SPA!

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 Eテレで放送中の子ども向け番組『でこぼこポン!』(Eテレ)への出演を契機に、児童発達支援士、発達障害コミュニケーションサポーターの資格を取得した鳥居みゆきさん。

 同番組は公式サイトで「発達が気になる子を楽しくサポート!特別支援教育番組」と紹介されています。

 前編、中編に続き、後編ではEテレの番組に出るきっかけになった甥っ子さんへの思いや、療育(発達支援)などについての考えについて聞きました。

◆甥っ子は、私より「でこりん」に夢中

――『でこぼこポン!』に出演したのは、Eテレに出ることで甥っ子に喜んでもらいたかったからだそうですが、実際に番組に出て反応はどうでしたか?

鳥居:甥っ子たちと一緒にいるときにテレビで『でこぼこポン!』が流れると「わあ! みゆきちゃんだ」と言ってくれます。でも隣に本物の私がいるのに、テレビ画面の「でこりん」ばっかり見るんです。私が伊達メガネを引っ張り出してきて、「解決するのだ!」ってでこりんの決めセリフをやっていると「今でこりん見てるから邪魔」って、ひどいんですよ(笑)。

6歳の甥っ子とはよくゲームをしてます。大人の立場としては接戦して負けてあげるのがいいと思うんですけど、私は本気で頑張ってるのに負けちゃうんです。そうしたら「みゆきちゃんがやったことないゲームだから元々3点持ってていいよ」ってハンデをくれるようになりました。最近は甥っ子の方が大人になりましたね。

甥っ子孝行はもうできたから、これからは知り合いの子どものために、悩んだりモヤモヤしていることがあったら気軽に相談してもらえたらいいなと思ってます。

――子どもたちの発達などについて支援したいという気持ちになったのは、甥っ子さんが産まれてからなのでしょうか。

鳥居:そうですね、でも甥っ子が産まれるまでは子どもがあまり好きじゃなくて「仲良くなれるのかな?」と思ってたんです。

◆発達障害について、もっと気軽に話してもいいはず

――そうだったんですね。甥っ子さんが産まれてからはどうでしたか?

鳥居:実際に甥っ子が産まれてみたら、子どもに対してフランクに接することができるようになりました。周りを見ていると、お子さんがいても自分の子どもだけが大事で他の子は大事じゃないみたいな人が結構多くて、よその子どもに対して寛大に見られない人も多いなと思います。

子どもがいても仕事ばかりして子育てに関わっていなかったり、人によってはつらい経験があることで、子どもに対して温かく見られないこともあると思うんです。そういう人の存在を全否定してはいけないし、「あなたの思いも理解するから、子持ちの人の気持ちも理解してね」って感じでいけばいいのかなって思ってます。大人だってみんな子どもだったんだし、誰の味方でもなく神目線で考えてます(笑)。

――資格を取ったことで、相談を受ける機会は増えましたか?

鳥居:「発達障害について話せる人」みたいなイメージになったみたいでよかったです。本来は気軽に話してもいいはずのことなのに、「今までは喋りづらかったんだね」って思いました。

「発達障害だと言ったら、どう思われるか分からない」というのもあるかもしれないし、そうやって抱え込んじゃうお母さんはいるんだろうと思います。「ママ友には言ってないんだ」とか「療育に行ってるのは内緒にしてるんだよね」と言ってる方もいます。

◆「子どもは宝だし、社会のみんなの子ども」

――相談された時は、どんな回答をしているのですか?

鳥居:私が知って「いいな」と思った知識は広めていきたいんですけど、「この子はこうだから、絶対に療育したほうがいい」とは言わないようにしてます。これは私自身の考え方なんですが、「療育をしたら良い方向に向かいますよ」みたいな綺麗事だけじゃないと思うんです。

療育がすべてじゃないし、合う合わないもありますから。それこそ「療育に行ったのに治らなかったじゃないか!」となるのは違うし、波長の合う支援者を見つけるまでが大変なんじゃないかな。大人の私でも誰とでも仲良くはなれないので、子どもだったらもっと難しいと思う。

大事なのは、子どもの1番身近にいる人が困っていることに気づいて心を支えてあげることですよね。親が気づけないときは周りにいる人が気づいてあげたり。私は子どもは宝だし、社会のみんなの子どもだと思ってるから、支援者以外の人達にもっと知識を広めて、皆が協力して見守っていけばいいんじゃないかと思っています。

ただ、ときには「療育を受けたほうがいいんじゃないかな」と言うこともあります。

◆「絶対に療育には行かせたくない」はエゴ

――どんなときに、療育を勧めることがあるのでしょうか?

鳥居:知人のお子さんに吃音が出ていたんですけど、私は「そのうち治るんじゃないかな」と思っていました。でも親御さんが子どもが話すのを待たずに「こういうことが言いたいの?」と言ってしまう人だったんです。

「頑張って」とか「焦らないで」という声かけは子どもを本当に焦らせてしまうし、吃音は焦っているから言葉が出ないわけじゃないので。誤った関わり方をするくらいだったら療育に行ったほうがいいんじゃないかなと思いました。

――子どもを療育に行かせることに抵抗を感じる親御さんもいますよね。

鳥居:子どもが行きたくないと思っているならそれでいいと思うんですけど、「絶対に療育には行かせたくない」というのは親のエゴ。お子さんの表情を見て、困った顔をしているなら療育を検討したほうがいいんじゃないかと思います。

◆発達障害の診断が「いらない」理由

――発達障害については、これからも勉強を続けるのですか?

鳥居:もっと知りたいと思ってます。私にとってこの資格は「知識がほしい」という気持ちの延長なので、別に資格が家に送られてこなくてもよかったんです。

最近は、発達障害やいろいろなチックの症状のある方が発信しているものを「全部受け取ろう」と思って、毎日YouTubeなどを見ています。実際にその人達に会って、普通に「一緒に遊ぼう」ってしたいです。

――ご自身で、発達障害などについて診断を受けてみようとは思ったことはありますか?

鳥居:私が病院に行ったら何かしら診断がされることは分かってるんですけど、もし「こういう発達障害でした」と発表したら「鳥居って変だな」って言われなくなっちゃう。「発達障害だからイジるなよ!」となると思うから、私は診断はいらないです。自分の中で折り合いをつけて病院に行きたくないなら行かない、行きたいなら行くという風に考えられたらいいなと思います。

◆子どもがつらくないことが第一

――子どもの発達に悩む親御さんたちにメッセージをお願いします。

鳥居:発達障害は、軽い、重いはあると思うけど、誰しも当てはまりますよ。それを「うちの子はおかしい」と思わないでほしい。「おかしい」っていう人がいたらそれこそ偏見だと思うし、そんなこと言ったら皆おかしいから、あまり考え込まないでほしいです。

お子さんの表情を見てあげて、「今つらいんだな」と察してあげてほしい、つらそうだなと思ったら療育に行ってみるのもいいし、相談できる人に話すのがいいのかな。子どもがつらくないことを第一に考えて、自分のプライドは一回捨てましょうという感じですね。

自分1人で悩んでいると「重い病気かも」と思ったり、どんどん落ち込んでしまう。そうするとお子さんに正しい接し方ができなくなってしまうので、吐き出す場所として相談に行ったり、ときにはカラオケに行ったりしてみるのもいいと思います。

<取材・文/都田ミツコ 撮影/山田耕司>

【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。
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