朝ドラ『虎に翼』岩田剛典、35歳の学生服姿は違和感ある?意外な判断ポイントとは

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2024年05月01日 09:10  女子SPA!

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『虎に翼』より。岩田剛典演じる花岡悟 ©︎NHK
 1週、2週……。待てど暮らせど、登場しない。連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合、午前8時放送)第3週第15回ラストで、岩田剛典が初登場した瞬間には思わず歓喜した。

 岩田扮する花岡悟は、主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)と同じ明律大学法学部の学生。なるほど、35歳の岩田剛典が学生服に身を包むとは、驚きじゃないか。なのに全然、違和感がないというのは。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、本作の岩田剛典が学生服を着ても違和感がない理由を解説する。

◆体幹がブレない演技

 映画初主演作『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(2016年)以来、本腰入れて岩田剛典の演技を見てきた。驚くべきは、彼の演技の体幹がこれまで一度たりともないブレたことがないこと。

 岩田自身がターニングポイントになったと話す『去年の冬、きみと別れ』(2018年)や『Vision』(2018年)の頃から、不思議と安定感がある。

 初の朝ドラ出演作となる『虎に翼』でも強く感じられる。第3週第15回のラスト、明律大学女子部を卒業して本科(法学部)に上がってきた寅子たちを遠目から見つめるひとりの男性の眼差し。

 画面の軸から寸分たりともブレずに、ぴたりとおさまる法学部1年の花岡悟(岩田剛典)を見て、あぁ、これは岩田剛典にしか演じられないな。そう思う初登場場面だった。

◆眉間の微動で役柄にアジャスト

 この初登場で注目すべきは、岩田の眉間。そう、彼の眉間こそ、その演技を安定させている最大要素のひとつ。各作品、役柄に合わせて眉間の微動をさまざまなレパートリーでちょっとずつ変えながら、アジャストするのだ。

 寅子たちを見つめるとき、特に眉間にシワが寄るわけではないが、左眉がわずかにピクつくのがわかる。「きたきた」と冷笑を浮かべる表情が、眉の微動によって輪郭づき、キャラクターの性格を一発で理解させる。

 花岡悟という人物は、表向きでは女子部の面々に敬意を払うが、実は根っからの差別意識を持っている。毎回、「はて」を契機に相手の間違いを正そうとする寅子が、花岡と対決することになるのは、時間の問題だなとハラハラする。

◆宙を泳ぐ岩田剛典

 第4週第18回。男女混合、本科メンバー全員でハイキングに出かける。いいなぁ、こういう戦前のハイキングの朗らかな雰囲気。が、楽しいのは昼食まで。レディファースト精神でうまく取り繕っていた花岡に寅子がついに噛みつく。

「男と同様に勉学に励む君たちを、僕たちは最大限敬い、尊重している。特別だと認めてるだろ」と花岡が語気を強める。寅子は、この「特別」にカチン。男性至上主義的な花岡の傲慢さを正すべく、食い下がる。

 食い下がりながら、勢い込んだ寅子は花岡を時折こずく。花岡の後ろは崖。危ないっ(!)。2回目に大きくこずいたあと、花岡は足元を取られて、落下。でもこの落下がどうもおかしい。

「あぁぁ〜」と叫ぶ花岡が、なかなか落下していかないのだ。うしろに引っ張られながら宙を舞い続けているように見える。なんだろこの画面。でも宙を泳ぐかのような岩田剛典を見てちゃんと思うことがあるのだ。

◆学生服を着ても違和感がない理由

 なかなか落下していかないあの画面について、岩田本人は「マトリックス落ち」と形容するが、あれって完全にヒッチコック落ちじゃないかと。

 アルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』(1960年)でも失踪事件を調査する探偵が、画面上を漂い、泳ぐような動きで階段から落下していた。

 それから、第19回で包帯ぐるぐる巻きで横になる花岡の姿は、『裏窓』(1954年)のジェームズ・スチュワートさながら。

 なるほど、考えてみると、常に安定し、無駄のない演技をする岩田剛典って、昔の俳優の演技っぽいのだ。特にスチュワートなどが活躍した1940〜50年代のハリウッド映画。花岡役で35歳の岩田が学生服を着ても何ら違和感がないのは、古典的ハリウッド映画の演技に由来する古風な佇まいのせいかもしれない。

◆スン状態が演技を安定させる

 もっというと古典的ハリウッド俳優の演技とは、余計なことをしない演技を最大の特徴としている。劇的な場面だからって、変にエモーショナルになったり、大袈裟に表情を作ったりもしない。

 起伏がすくない、フラットな演技ともいえる。それこそ『虎に翼』の登場人物たちがときに無の感情を表現する「スン」に近いかもしれない。本作の岩田は常にこのスン状態を保つことで、花岡役の演技を安定させている。

 そうした古典的演技についての理解を踏まえた上で、4月6日から放送が開始された『岩田剛典 サステナ*デイズ supported by 日本製紙クレシア』(TOKYO FM・毎週土曜あさ8時)に傾聴してみるとどうだろう?

 初回放送では、「Something For Tomorrow」と題して岩田セレクトの映画作品が紹介されていた。朝の番組には過激かもしれないと前置きしつつ岩田が紹介したのが、マーティン・スコセッシの『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(2013年)。

◆“朝の顔”がセレクトする映画作品

 曰く、「土臭いというか、泥臭い。そういう人間らしさがね、すごく僕は好き」と岩田が評する『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』は、実在の株式ブローカー、ジョーンダン・ベルフォードの破滅的な生き様を描いた作品。主演は、レオナルド・ディカプリオ。

「最高に爆笑できる名演技」と岩田が絶賛のディカプリオに対して、「どこからお芝居なのか、どこまでが本気なのか、ほんとに酔っ払ってるんじゃないかとかね、いろいろ考えちゃうくらいすごいリアリティのある芝居なので、僕はほんとそのシーンを見るだけにもこの作品を見る価値がある」と太鼓判を押す。

 岩田がディカプリオの名演に強く感心し、演技分析として興味を持った理由はわかる気がする。ディカプリオもまた、古典的なハリウッド俳優の系譜にある人で、ベルフォードに限らず、『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002年)以来スコセッシ監督作品では、常に過去の人物を演じている。

“朝の顔”がセレクトする映画作品としてはかなりファンキーだけれど、『虎に翼』の花岡悟役を演じる上での潜在的な参考例にしているかもしれない。我らが朝ドラ俳優・岩田剛典は、朝からぶち上がってるなぁ。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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