井上尚弥、東京ドーム決戦 日本ボクシング界の“仇敵”ルイス・ネリの悪行三昧を振り返る

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2024年05月06日 18:01  日刊サイゾー

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 6日、プロボクシングの4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチが東京ドームで行われる。日本ボクシング史上最高傑作との評価を確固たるものにしている王者・井上尚弥に挑むのは、メキシコの“黒豹”ルイス・ネリ。ボクシングファンにとっては、その名前は激しい憎悪とともに記憶に刻まれている。

 2018年の両国国技館。会場は殺気に満ちた沈黙に包まれていた。かつてWBCバンタム級のベルトを12度も守った元王者・山中慎介はマットに横たわり、ネリはコーナーに駆け上がって両手を突き上げ、勝利の雄たけびを上げている。

 2.3kgのオーバーウエイト。

 前日計量で発表されたその数字は、怒りを通り越して「あり得ない」と感じさせるものだった。ボクシングの世界は厳密に体重で区分されている。規定の体重を作ることが試合成立の大前提である。

 バンタム級のウエイトは53.5kg。2.3kgオーバーのネリはその時点で、2階級上のフェザー級の選手だったことになる。

 当然、保持していた世界タイトルは剥奪されたが、その後に課された当日計量の条件をネリがクリアしたことで試合は成立。山中には「卑怯者のネリを倒せ」という大きな期待がかけられることになった。そして山中自身の中にも、この試合に絶対に勝たなければならない理由があった。

 その7カ月前の17年、山中はネリにタイトルを奪われている。4ラウンドでのノックアウト負け。13度目の世界タイトル戦で防衛を果たせば、具志堅用高が持つ日本記録に37年ぶりに並ぶことになる重要な試合だった。

 この試合で山中はネリの豪打にさらされながら、決して倒れなかった。フラフラとリング上を彷徨うチャンピオンを救ったのはセコンドからのタオル投入だった。

 自陣のギブアップによる、王座失冠。山中のダメージは明らかだったが、このセコンドの判断もまたファンの間では大きな議論を呼び、再戦への機運は高まっていった。

 そんな中、この試合でのネリのドーピング違反が発覚。試合結果に消化不良を募らせていたファンのストレスは、一気にネリに向くことになる。

 ネリのドーピング違反は意図的ではなかったと統括団体に認められ、ネリはベルトを持ったまま山中との再戦のために来日した。そうして乗った体重計で、ネリは2.3kgのオーバーという失態を披露したのだ。

 試合後、事態を重く見た日本ボクシングコミッション(JBC)はネリの日本でのライセンスを無期限停止処分とした。事実上の永久追放である。海外のリングで復帰し、スーパーバンタム級で一度は世界タイトルも獲得したネリだったが、二度と日本のリングに上がることはないと思われていた。

 今回、JBCが規定を変えてまでネリの永久追放処分を解いたのは、たぶんに興行的な側面が大きいだろう。井上の価値を考慮すれば軽量級での待遇が悪い欧米ではなく国内開催が必然だが、すでに4団体を統一している現在の井上に相応しい相手を見つけるのは容易ではない。

「ネリなら盛り上がる」

 ファンが求めるカードを提供するのが、すべてのプロボクシング関係者に課せられた使命だ。

 今回、ネリは計量をクリアした。正々堂々、試合が行われることになる。ネリを応援するファンはいないだろうが、「ネリが弱い」と思っているファンもいない。山中を沈めた風車のような連打もまた、ファンの脳裏には焼き付いている。

 東京ドーム、34年前にマイク・タイソンが大番狂わせに遭ったあのリングで、井上とネリが相対することになる。

(文=日刊サイゾー)

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