角田裕毅の7位入賞に「なんて速さだ」エンジニアも大興奮 「メルセデスAMGと互角に戦えるなんて...」

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2024年05月07日 17:01  webスポルティーバ

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 ランド・ノリス(マクラーレン)の初優勝に沸くマイアミ・インターナショナル・オートドロームで、RBのピットガレージも角田裕毅の7位入賞の興奮に包まれていた。

「メガ! メガジョブ! 7位だ!」

 レースエンジニアのマッティア・スピニのレースフィニッシュを伝える声も興奮していた。

「なんて速さだ。なんてレース週末だ。こんなにポイントが獲れるなんてね!」

 角田も最高のレース週末が信じられないといった様子で返した。RBはスプリントと決勝で合わせて12点も獲得してみせた。

 優勝したノリスと同じように、28周目のセーフティカーでピットインを済ませたことで、角田はポジションアップを果たした。しかしそれができたのは、スタートから28周にわたってミディアムタイヤを保たせながらハイペースで走ることができていたからだ。

「もちろんそれ(セーフティカー出動のタイミング)もありますけど、その前の5周、(メルセデスAMGのジョージ・ラッセルがピットインし)フリーエアになってからのペースがすごくよくて、自己ベストをどんどん更新していけたのが大きかったと思います。あそこでメルセデスAMGに匹敵するタイムを出せたことが、その後の結果を大きく変えたと思います」(角田)

 レース序盤に中団トップを走っていたのは、ハースのニコ・ヒュルケンベルグ。しかしタイヤのタレが早く、後続の動きに合わせて12周目にピットインし、早々にハードタイヤに履き替えた。

 ヒュルケンベルグが入らないのなら、先にピットインして新品タイヤで飛ばしてアンダーカット(先にピットインして抜くこと)を狙う戦略も考えていたが、ヒュルケンベルグが入ったため、角田は可能なかぎりステイアウトする当初の戦略を貫くことにした。

 メルセデスAMG勢のうしろでくっつきすぎないよう、2秒のギャップを開けてタイヤをセーブしながら走り、ラッセルがピットインして前がクリアになったところでペースを上げた。

【ドライバーが自信を持って走れている】

 ソフトタイヤを履いた土曜午前のスプリントレースでも、角田は前でルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)とケビン・マグヌッセン(ハース)が争っているのを見て、「彼らが戦っている間はタイヤを温存して、できるだけレースのうしろのほうに取っておくという戦法を採っていました」と冷静な判断を見せていた。

 その結果、スプリントでは15番グリッドスタートから8位入賞を果たした。

 マシン自体の速さもあった。スプリントでは僚友ダニエル・リカルドが予選4位から、決勝でもフェラーリを最後まで抑えて4位を守りきった。

 ホンダの現場運営を統括しRB側の責任者も務める折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーは、今回投入されたフロアのアップデートによってマシン性能が大きく向上したことと、金曜の走り始めからセットアップがうまく決まっていてフィーリングがよかったことを、好調の理由として挙げている。

「今回投入したアップデートが効いているのと、ドライバーが自信を持って走れていることで、今までよりも一段上のレベルで戦うことができたと思います。アップデートだけでメルセデスAMGやアストンマーティンを追い越したというわけではないと思うのですが、サーキットによっては彼らが落ちてくるところも見えてきたので、その両方が噛み合うと今回のような展開もありうるのかなと考えています」

 VCARB 01は特に低速域が速く、長いストレートの立ち上がりで後続を寄せつけなかった。そのためリカルドも、フェラーリを抑え込むことができたのだ。

 それに加えて、VCARB 01のリアカウル上の排熱ルーバーは最小限の数に絞られていた。気温30度の暑さのなかで作動温度領域を上げた今季型パワーユニットのアドバンテージを最大限に使いきり、空力的なメリットをマシンにもたらしただけでなく、集団のなかで走行するレース中も温度上昇によるパワーダウンの必要性に迫られることはなかった。

【RBは実力で4番手を争うチームになっていた】

 スプリント予選では、1アタックでSQ2をクリアするという戦略が裏目に出て、角田は脱落してしまった。だがそれでも、スプリントレースではホンダ勢として2015年のF1復帰から初めてとなる4台入賞を果たすことに成功した。

 角田は決勝でもミディアムタイヤで好ペースを維持し、新品ハードに換えたヒュルケンベルグと同等かそれ以上のペースで走り、ギャップを縮めさせなかった。

 仮にセーフティカーが出なかったとしても、後半は20周フレッシュなタイヤで易々と抜いて引き離すことができたはずで、8位入賞は間違いなかった。

 セーフティカーの恩恵は、メルセデスAMG勢の前に出られたことだ。ハミルトンを抑えることはできなかったが、タイヤが4周古いラッセルよりも角田のほうがペースが速く、最後まで危なげなく単独走行で7位フィニッシュを果たした。

 マイアミGPのRBは、実力で4番手を争うチームになってみせたのだ。

「今までは届かなかったメルセデスAMGやアストンマーティンに対して、ペースで彼らを上回ってこの結果を手にすることができたのは大きかったと思います。セーフティカー後もメルセデスAMG勢を相手に落ち着いてタイヤマネジメントをしながらうしろをどんどん引き離していったので、裕毅のレースの組み立ても非常にうまくなったなと感じました」(ホンダ折原伸太郎エンジニア)

 上位勢と戦える可能性は、角田も感じている。開幕から6戦の間にマシンのアップデートが次々と進み、着実にパフォーマンスが向上してきているからだ。

「チーム全体がクルマの開発をどれだけプッシュしているかが結果に表われていると思いますし、今回のアップグレードがなければここまでの結果は出せていなかったと思います。シーズン序盤に比べると、メルセデスAMGと互角に戦えるクルマになるなんて想像もしていなかったので、本当にとてつもないスピードでマシン開発が進んでいると思います。

 チームが一丸となってシーズン序盤からずっと開発を続けてきたからこその結果ですし、今日はメルセデスAMGの1台よりも速かったくらいで、このまま前進を続けていけば(ランキング)5位も見えてくるかもしれないと思います」

 マシンも、チームも、そしてドライバーの角田も、急速に成長を遂げている。荒れたレースでチャンスが巡ってくれば、まさに初優勝を挙げたノリスのように、今の彼らならしっかりと掴み取ることができる。

 これからの戦いとさらなる成長が、また一段と楽しみになってきた。

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