高橋ヨシキが映画『猿の惑星/キングダム』と 『ありふれた教室』をレビュー!

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2024年05月17日 17:10  週プレNEWS

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高橋ヨシキが映画『猿の惑星/キングダム』と 『ありふれた教室』をレビュー!

日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 新生『猿の惑星』シリーズの第4弾が登場!&校内秩序の崩壊を活写したサスペンススリラー!

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『ありふれた教室』のレビューにも注目!

『猿の惑星/キングダム』

評点:★3.5点(5点満点)

〈人間に近づく〉ことで失われるもの

とてつもなく高度なVFXにまずは圧倒される。

『猿の惑星』は60年代のオリジナル・シリーズからずっと特撮技術と共にあり、2001年にティム・バートンが監督したリブート版においても当時最先端の技術を用いた差別化が図られていた。2011年から始まった新シリーズはCG技術の進歩と共に歩んできたわけだが、本作が到達した洗練と高みは驚くべきものだ。

舞台は前作から300年後の未来。知能を持った猿がややプリミティブな文明を築きつつある世界はまさに1968年のオリジナル版『猿の惑星』の世界観と通底するものだが、今回は何が語られるのかといえば、結局のところ「〈人間性〉のうちには一種の邪悪さが埋め込まれているのでは?」という根源的な問いかけである。

技術と力を追い求める猿の王の姿が物悲しさを帯びるのは、そこに『ジャングル・ブック』(67年)のキング・ルーイと同様のジレンマ、すなわち「〈人間〉に近づくことの見返りに、永遠に損なわれてしまうもの」があることが明白だからだ。

80年代のファンタジー映画によく見られる、いわゆる「行きて帰りし物語」の構造になっているところも興味深い。エイプス・トゥギャザー・ストロング!

STORY:高い知能と言語を得た猿たちが人類を押しのけ、帝国「キングダム」を築いた300年後の地球。若き猿ノアは誰より賢い人間として猿たちから狙われる女性と出会う。ノアは彼女と一緒に行動するうち、キングダムに違和感を抱き始める。

監督:ウェス・ボール
出演:オーウェン・ティーグ、フレイヤ・アーラン、ケビン・デュランドほか
上映時間:145分

全国公開中

『ありふれた教室』

評点:★4点(5点満点)

「ありふれた」世界にぽっかりと開いた穴

規模の大小を問わず、どこの職場でもどこの学校でも何かしらの盗難事件は「必ず」起きる。手癖の悪い人間というのはどこにでもいるからだ。

問題はそういう事件が起こったときにどういう応対をするかで、一つ間違えれば「魔女狩り」めいたことになってしまうし、特に職場や学校のような、人工的な人間関係しかない場所では疑心暗鬼がすぐに広まってしまう。

本作では、何の変哲もないドイツの中学校で盗難事件が起きたことがきっかけで、生徒と教師、教師と教師の関係があれよあれよと悪化し、事態を収拾しようとしてとった行動がさらなる諍いの種となってしまう。

主人公は若く真面目で「正しくあろう」としている先生だが、やることなすこと全てが逆に出てしまい、どんどん身動きがとれなくなっていくという意味において、本作はまごうことなき「地獄巡り映画」だといえる。

本作を全くの他人事として見られる人はおそらくあまり存在しない。それほど「ありふれた」世界の「ありふれた」事件の中に、まっすぐ地獄へと繋がる道がぽっかりと開いているわけで、それがとても恐ろしい。手を尽くしても他者の思惑をコントロールできようはずもないからである。

STORY:仕事熱心な若手教師カーラは校内の盗難事件で教え子が犯人に疑われ、独自の犯人捜しを開始。職員室を撮影した映像にある人物の盗みの瞬間が。しかし、事件を巡るカーラや学校側の対応は保護者の批判や生徒の反発を生み.......。

監督:イルケル・チャタク 
出演:レオニー・ベネシュ、レオナルト・シュテットニッシュ、エーファ・レーバウほか 
上映時間:99分

新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開中

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