新人俳優たちが涙…池松壮亮&奥山大史監督ら『ぼくのお日さま』に約8分間のスタンディングオベーション

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2024年05月20日 18:01  cinemacafe.net

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『ぼくのお日さま』 (C) KAZUKO WAKAYAMA
現在開催中、第カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション部門の中で日本作品として唯一選出された『ぼくのお日さま』のワールドプレミアとなる公式上映が、フランス現地時間5月19日、ドビュッシー劇場で行われ、監督の奥山大史、キャストの池松壮亮、越山敬達、中西希亜良、主題歌の「ハンバート ハンバート」佐藤良成が登壇した。

本作は、田舎町のスケートリンクを舞台に、吃音のあるアイスホッケーが苦手な少年タクヤ(越山敬達)と、選手の夢を諦めたスケートのコーチ荒川(池松壮亮)、コーチに憧れるスケート少女さくら(中西希亜良)の3人の視点で紡がれ、雪が降りはじめてから雪がとけるまでの、淡くて切ない小さな恋の物語を描く。奥山監督が撮影、脚本、編集も手掛けている。

グザヴィエ・ドラン&是枝裕和監督らが見守り「ある視点」部門で公式上映
この日、公式上映がはじまると映画祭ディレクターのクリスチャン・ジュネが登壇し、上映に「駆けつけました」とコンペティション部門の審査員を務める是枝裕和監督を紹介。その後に「ある視点」部門の審査員長グザヴィエ・ドラン監督を紹介すると、劇場は一気に興奮につつまれた。

公式上映の場では『CLOSE/クロース』のルーカス・ドン監督、西川美和監督、山下敦弘監督が見守る中、『ぼくのお日さま』チームが紹介され、「ハンバート ハンバート」の佐藤さん、荒川役の池松さん、タクヤ役の越山さん、さくら役の中西さんが紹介され拍手で迎えられたあと、クリスチャンの大きな呼び声で奥山大史監督が登壇。

奥山監督は、満席となった1,200席の観客に「この作品はドビュッシーの『月の光』が繰り返し流れる映画なので、こうしてドビュッシー劇場でワールドプレミア上映されることを本当に光栄に思っています」と挨拶。

本作は、クロード・ドビュッシーの代表曲「月の光」にのせてフィギュアスケートをする少女さくらに、主人公のタクヤが心を奪われるところから物語が動き出す。そのドビュッシーの名前が冠された劇場で、ワールドプレミア上映されたことについて感慨深げの様子。

そして、企画段階から奥山監督を支え、コーチ荒川役として出演する池松さんは「カンヌ映画祭に感謝します。楽しんでいってください」と挨拶。4月に15歳になり、撮影当時から12cm以上も身長が伸び167cmにもなったタクヤ役の越山さんは人生初の海外旅行がカンヌ国際映画祭となり、「1,200人の皆様、集まっていただきありがとうございます!最後まで楽しんでいってくださいっ」と軽快なマイクパフォーマンスでカンヌの観客を沸かせた。

6月に13歳になる現在12歳で、語学に堪能な中西さんは流暢なフランス語で「みなさん、こんにちは。来てくれてありがとうございます。楽しんでください」と挨拶すると温かい雰囲気に包まれた。

会場のチケットは即完売となっており、満席の会場の中、上映がスタート。上映中は、タクヤが奮闘する姿にやさしい笑いが漏れ、クライマックスに近づくと緊張感のある雰囲気が会場に広がった。

そして本編が終わり、主題歌「ぼくのお日さま」のエンドロールが流れ終わると、拍手喝采と「ブラボー」という声援と共にスタンディングオベーションが約8分間続き、最初に越山さんが涙をみせると、中西さんも涙。

会場全体から監督、キャストたちにエールが送られる中、ルーカス・ドン監督と奥山大史監督が握手を交わすシーンもみられ、会場を出たあとも興奮冷めやられぬ観客に囲まれ、サインを求められるなどしていた。

池松壮亮「奥山監督はリアリティの中にファンタジーをのせることが上手」
ワールドプレミアでの興奮がつづくなか、『ぼくのお日さま』一行はレッドカーペットへ。この日、奥山監督、池松さん、越山さんの3人はお揃いのタキシード。タキシードのブランドは、フランソワ・トリュフォー監督やアンディ・ウォーホルが愛用した老舗のブランド「ベルルッティ(Berluti)」のもの。そして中西さんは「セリーヌ(CELINE)」の今シーズンの秋冬ドレスとなるミニドレスを着用し、ひときわフレッシュで眩い魅力でメディアを魅了、カンヌ初参加となった4人はお互い笑顔を見せあいながら和やかな雰囲気でレッドカーペットを歩いた。

その後、奥山監督、池松さん、越山さん、中西さんらはメディアからの囲み取材に参加。公式上映後の観客からの反応について奥山監督は「温かい反応を頂けて、まずは安心しています。嬉しかったというよりも、一安心という気持ちが大きいですね」と述べ、レッドカーペットについては「公式上映とはまた違う、ずっと見ていたカンヌの文化に触れさせて頂いたので、フラットに楽しめた」と笑顔、キャストの3人らも揃って「夢のような舞台だった、また来たい」と声を揃えた。

公式上映後、エンドロールから涙が止まらなかった越山さん。その理由について「撮影中『こういうこと言われたな』とか、『こういうふうに撮影したな』とかエンドロールに流れる本作の主題歌を聴きながら思い出し」感無量になったことを、はにかみながら告白。そして「物語がわからないまま撮影がスタートしたが、初めての主演映画だったので、どれだけ自分の自然の形で撮影を楽しめるか、ということに重点をおいてやっていました」と、撮影当時をふり返った。

また、いまの時代をどう切り取るかや、問題解決の提示する作品が多くなる傾向にある映画祭という場所、そして「今の時代に向き合うということをどう考えているのか?」という取材終盤の問いに対して、奥山監督は「あくまで自分は、それだけを重視するわけではなく、自分が描きたいものを描き、その上で、例えば「<これは多様性を描いているね>と言ってくれたらそれは嬉しい」と回答。

池松さんは「リアリティの中にもファンタジーの中にも、現実を語る力っていうのは実はちゃんとどちらもあって」と話し、「どちらに向けるのか、どう直接的に語るのか、それともファンタジーに包んで語るのかの違いだと思う」「この映画も非常に残酷な部分も写っているし、奥山監督はリアリティの中にファンタジーをのせることがとても上手で、そのことを諦めていない」とコメント。だから「本作は、より観客を選ばないし、この映画を見てもらえるのではないかなと期待してます」と想いを込めた。

今年の第77回カンヌ国際映画祭は、是枝監督がコンペティション部門の審査員として参加しており、「ある視点」部門は俳優で監督のグザヴィエ・ドランが審査員長を務めることでも注目されている。本作は「ある視点」部門の最優秀作品賞、審査員賞、監督賞などの賞の対象となり、これまで同部門では黒沢清監督が2008年に『トウキョウソナタ』で審査員賞を、2015年に『岸辺の旅』で監督賞を、2016年には深田晃司監督が『淵に立つ』で審査員賞を受賞しているが、もし同部門で最優秀作品賞を受賞すると日本史上初の快挙となる。

第77回カンヌ国際映画祭は5月25日(土)まで開催中。「ある視点」部門の授賞式はカンヌ現地日時の5月24日(金)に行われる。

『ぼくのお日さま』は9月、テアトル新宿、TOHO シネマズシャンテほか全国にて公開。





(シネマカフェ編集部)
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