どれだけ知ってる? 教習所で教わらないバイクTips 第43回 地味だけどバイクの乗り味を決定づける「フレーム」の秘密

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2024年05月22日 16:01  マイナビニュース

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バイクを選ぶ時はデザインやエンジンなどに目がいってしまうもの。対して「フレーム」はタンクやカウルの下に隠れている地味な存在ですが、ヒトの身体なら「骨」や「筋肉」に相当する重要なパーツです。



「フレーム」はバイクの種類によってさまざまな形状や材質があり、それぞれの特長を理解しておくと、それまで見えなかったバイクの特性も分かってきます。今回はそんな「バイクのフレーム」について解説します。

■フレームの種類と名称



最初は自転車のようにシンプルな「シングルクレードル」から始まったバイクのフレームですが、エンジンの排気量やパワーの向上、車両重量の増加とともに進化を続けてきました。現在に至るまでさまざまな種類のフレームが考案されましたが、大まかに分けると以下のようになります。

○<ダブルクレードル>



シングルクレードルを二重にしたような形状。国産車では「ホンダ・CB」や「カワサキ・Z」など、左右に張り出した並列四気筒エンジン車に数多く採用されている。

○<セミダブルクレードル>



ダブルクレードルの一部分(ダウンチューブ)のパイプを一本に減らしたタイプ。主に軽量車や、車体幅の狭い単気筒、二気筒エンジン車に用いられる。

○<ダイヤモンド(バックボーン)>



エンジン前方から直下に伸びるパイプ(ダウンチューブ)を排した形状。小型車ではエンジンを吊り下げているだけだが、パワーのある中・大型車ではエンジン自体をフレームの一部として利用している。

○<ツインスパー(ツインチューブ)>



左右からエンジンを包むように極太の角パイプ材で構成されたフレーム。アルミが使用されるようになって以降、ハイパワー・スポーツ車で主流になった。

○<トラス(トラリス)>



パイプをトラス(三角形)形状に溶接して構成したフレーム。一般的にはスチール製のパイプを用いるが、アルミを使用したものもある。軽量でデザイン性も高い。

○<そのほか>



そのほか、クルマのボディのように箱状の「モノコック」や、エンジン自体がメインフレームとなり、前後にステアリングステムやスイングアームピボットのサブフレームを取り付けられたものもある。スクーターなど、足元を回る形状のフレームは「アンダーボーン」と呼ばれる。


■フレームに使われる金属



現在のバイク用フレームに使われている素材は「スチール(鉄)」と「アルミ」が大半です。厳密には他の金属を混ぜた「合金」ですが、それぞれ以下のような特徴を持っています。


○<スチール(鉄)>



溶接などの加工が容易で、曲げられても元に戻ろうとする「弾性」が大きい。コストも比較的安い。強度を上げるためパイプの径や肉厚を増やしたり、構成する本数を増やせば重量の増加が課題となる。

○<アルミ>



スチールよりも軽量だが強度は劣るため、同等かそれ以上の強度を持たせるにはパイプの径や肉厚も大きくしなければならないが、それでも圧倒的に軽く作れる。コストは高く、溶接などの加工も難しい。



「スチール」は古くから使われてきたスタンダードな素材ですが、エンジンパワーが向上し、ラジアルタイヤも登場した1980年代には軽量・高剛性を目的として、高性能スポーツモデルで「アルミ」が採用されるようになりました。



そのため、旧車やストリート系は「スチール」、スポーツモデルは「アルミ」というイメージが根強く残っていますが、現代は炭素鋼管や高張力鋼管といった強くて軽いスチール材も登場し、コンピュータの解析技術も進んだことで、軽量なスチール製トラスフレームが大型の高性能車にも採用されています。



また、フレームに使われるパイプは「丸」と「角」の断面形状があります。前者は捩じりに強く、後者は曲げに強いといった特性を持ち、それぞれ適した箇所に使われています。


■フレームは硬いほどよい!……というわけでもない



ここまで解説してきたように、形状や素材の改良によってフレームの強度は日進月歩の勢いで向上し続けました。しかし、現在はとにかく硬ければよいわけではなく、世界最高峰のレースシーンでも適度な“しなり”があった方がライダーはバイクをコントロールしやすく、旋回性も向上することが分かっています。



フレームの“しなり”と言っても、初心者はもちろん、長年バイクに乗っている人でもなかなか分からないものです。しかし、自転車の経験がある人ならロードスポーツとシティサイクルで乗り味の違いを感じたのではないでしょうか。



上下に二本のフレームを持つロードスポーツはガッチリしたフィーリングですが、荒れた路面ではハンドルやシートに衝撃が伝わってきます。対してフレームが一本のシティサイクルの場合、立ち漕ぎでは車体が歪むような動きを見せるものの、歩道などの段差を乗り上げた際は車体全体でショックを吸収してくれます。



ライダーが分からなくても、自転車同様にバイクのフレームは走行時に変形しています。スポーツ走行ではそれなりに剛性が高い方がコントロール性は上がりますが、一般道のツーリングでは適度にフレームがしなる方が心身ともに疲れにくいものです。ライダーの好みにもよりますが、公道のワインディングを走る際は、少しフレームがしなるバイクの方が面白いというユーザーもいます。


■サスペンションなどもフレームの一部



一般的には「フレーム」と言うと、ステアリングステムとスイングアームピボットをつなげる「メインフレーム」を示しますが、「フロントフォーク」や「スイングアーム」、前後の「アクスルシャフト(車軸)」も車体の骨格となるパーツです。これらを変更することでもフィーリングはずいぶん変わってきます。



昔からカスタムの手法として行われてきたのは他車のパーツを流用することで、同じメーカーの後継機種なら簡単に交換できるケースもありました。また、人気のある車種はボルトオンのスイングアームやサブフレームなどがパーツメーカーから販売されています。



有名メーカーのフロントフォークやスイングアームは交換工賃も含めると非常に高額になりますが、少し足廻りのフィーリングをシャープにしたいなら、2〜3万円ほどで販売されているクロームモリブデン剛のアクスルシャフトもおすすめです。“一本の棒”にしては高いと思われるかもしれませんが、交換は簡単でユーザーの満足度も高いようです。



フレームは外装やエンジンに比べると地味なパーツですが、バイクのハンドリングや乗り心地を決定づけるものです。試乗会などでさまざまなモデルに乗った際はフレームの形状や材質なども観察してみてください。自分にとって理想的な乗り味を演出するフレームの条件が分かってくるかもしれませんよ。



津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら(津原リョウ)

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  • 読む人いない��アルミ材は引き抜きや押し出し材とキャスト材で靱性が違うし、引き抜きや押し出し材の溶接の熱や経時による硬化の問題にも触れてほしかったな。
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