「私はこの映画を見て両親に電話をしました(笑)」凰稀かなめ『お終活 再春!人生ラプソディ』【インタビュー】

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2024年05月23日 08:10  エンタメOVO

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凰稀かなめ (C)エンタメOVO

 結婚50年を迎えた大原千賀子(高畑淳子)と真一(橋爪功)。一人娘の亜矢(剛力彩芽)の結婚を目前に控え喜びあふれる大原家だが、ある日、真一に認知症の疑惑が持ち上がる。一方、千賀子は若い頃に習っていたシャンソンのレッスンに通い始める。「終活」を題材に熟年夫婦の悲喜こもごもをつづった『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』(21)に続くシリーズ第2弾『お終活 再春!人生ラプソディ』が、5月31日から全国公開される。本作で、千賀子にシャンソンをレッスンする丸山英恵を演じた凰稀かなめに話を聞いた。




−最初に脚本を読んだ時の印象と、実際に演じてみて感じたことを。

 まだ決定稿ではない脚本を最初に読んだ時に泣いてしまいました。それを香月(秀之)監督に話したら、「それでいいんだよ、そのままやって」という感じでした。ところが実際に、現場で高畑さんや橋爪さんのお芝居を間近で見たら全く印象が違ったんです。先輩方のお芝居の声を聞くと、脚本の文字を読んだ感じとは全然違うと思いました。なので、撮影に入った瞬間に、「一度せりふは全部忘れよう。感じたままにやろう」と気持ちを切り替えてやらせていただきました。映画の内容としては、すごく楽しいですし、泣けるし、勉強にもなると思いました。今、両親が70過ぎで、私自身も40代に入ったので、テーマ的にもちょうど合うので、すごく勉強になりました。

−脚本と現場の印象が全く違ったということですが、それは役作りにも影響がありましたか。

 それほど大きく変わることはありませんでしたが、やっぱり人から直接受け取るものは大きかったです。高畑さんとの撮影が結構多かったのですが、高畑さんの言葉の一つ一つにすごく心に響くものがあって、涙が出そうになることもありました。高畑さんの気持ちがダイレクトに伝わってくるので、それをちゃんと受け止めてお芝居をしたいと思いましたし、台本上でなく、実際にお芝居をした瞬間に感じるものは大きいと改めて思いました。

−本作はシリーズ2作目ですが、ほとんどのキャストが前作から引き続いて演じています。今回はそこに新たに加わったわけですけど、難しさはありましたか。

 そうですね。まだ映像の方にはあまり慣れていないし、経験も少ないので緊張しましたが、スタッフさんもキャストの皆さんもすごく温かい方たちで、私が緊張しないようにと、皆さんがいろいろと話し掛けてくださいました。最初は第2作目なのでどうなるのかなという不安もありましたが、初めて現場に行った時からすぐにそれはなくなって、楽しく撮影させていただきました。

−今回は、シャンソンのコーチ役でしたが、大河ドラマ「光る君へ」の赤染衛門もいわゆる指南役ですよね。コーチ役が続いていますが、どんな感じなのでしょうか。

 確かに、年齢的にも母親役や先生役が多いんですけども、教えるのはすごく大変です。それぞれの良さを引き出すための教え方は一つではないので。例えば高畑さんだったら、少し低めの声が魅力的だということで、発声練習の場面も、最初は本物のピアノの先生が一番弾きやすいところを弾いていたんですけど、高畑さんの声を聞いた時に、キーをちょっと下げ目のところから弾いてみようとなって、その場でピアノを弾く練習もさせていただいて、本番では私が弾いたのですが、改めて、教えるって大変なことだな、エネルギーのいることだなと思いました。私も、若い子たちにその人の持ち味を生かせるような動きや、感情の作り方を教えたりもするので、すごく大変だなと思いながらも、その人が何かをつかんだ時に喜びを感じます。だから、高畑さん演じる千賀子さんが、人生を楽しむためのお手伝いができるという役は、すごく楽しくもあり、責任もありという感じでした。

−最後に、高畑さんが「愛の讃歌」を歌いますが、宝塚出身として聴いた感じはいかがでしたか。

 高畑さんの歌を最後に聞かせていただいて、とても感動しました。本当にすごかったです。おきれいですし、声もすごくすてきですし、シャンソンは一つ一つの言葉を大切にして歌わなければならないのですが、気持ちがこもっているのがよく分かりました。実際に歌っているのを聞いている場面も撮りましたが、感動して涙が出てきました。それまでに教えていた期間を経て、お客さまの前で拍手を頂いているのを見ると、やっぱりすごく感動するんです。ライトが当たった瞬間、高畑さんがとても輝いて見えました。

−この映画に出て、個人的にこういう発見があったとか、価値観が変わったことはありましたか。

 もともと興味はあったのですが、この映画に出てから介護や認知症についていろいろと調べたりしています。それで、いろいろなことを早めにやっておかなければと感じましたし、悩んでいるよりもやってみた方がいいとも思いました。この映画を経て、物事をポジティブに考えられるようになりました。ただ、ポジティブな気持ちになるためには、周りのサポートが大切だとも感じました。この映画の家族を、自分の家族と置き換えた時に、そうだなと思うことが山ほど出てきました。

−もともとは宝塚の舞台出身ですが、映画やドラマという映像の仕事は、舞台と比べてどんな印象なのでしょう。新たな挑戦のような感じなのでしょうか。

 そうですね。やっぱり最初の頃は、宝塚のイメージがすごく強くて、宝塚をやめてすぐにストレートプレーをやらせていただいた時に、「できるの?」という感じで言われたりもしました。元宝塚に対する厳しい意見は結構多かったです。それから、映像だと「抑えて」「大きい声を出さないで」というのをすごく言われます。マイクがあるので声の調整が難しいのですが、感情が乗ったら大きな声が出てしまうので、そうした葛藤はありました。でも、最近は「そうなっちゃったらしょうがないじゃない」という気持ちになって、あまり気にしなくなりました。映像だと撮り直しができます。だから「悪かったら何か言っていただけるので大丈夫かな」と。そういうところはいろいろと教えていただきながらやっています。

−最後に、映画の見どころも含めて、観客に向けて一言お願いします。

 サイドストーリーにはなりますが、お父さん(長塚京三)との関係は、英恵さんにとっては見どころです。聞くところによると、私が酔っ払っているシーンで笑いが起きると。「私強いんですよ」と言っておきながら、すぐに酔っぱらうから、ちょっとかわいらしさを感じさせるところがあるみたいで…。そういうお父さんとのストーリーも楽しんでもらえたらなと思います。この映画は、「楽しく生きる」というのがテーマになっているので、いろんなサポートを受けながらも、前向きになって人生を楽しむというメッセージを受け取って、人生を楽しく過ごしていただけたらと思います。「笑えて、泣けて、役に立つ映画」で、とにかく大原家が最高過ぎて、見ていてずっと楽しいので、いろんな方と一緒に見ていただきたいです。見終わった後は、きっと両親に電話をしたくなると思います。私は電話しました(笑)。

(取材・文・写真/田中雄二)


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