40代男性、課長への昇進を機に突如訪れた“異変”。頭の中に響く罵詈雑言の「恐ろしい正体」

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2024年05月24日 16:01  日刊SPA!

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蓋をしていた幼少期の記憶。思い出さなくとも当時聞いた暴言が、職場の仲間の声となって再現され、不調に苛まれた
夫婦喧嘩でつい八つ当たりしたり、塾通いを強制したり――親の言動が、子どもの将来に悪影響を及ぼす可能性がある。幼少期の“トラウマ”が引き起こす「第4の発達障害」があるのだ。実態を追った。
◆課長への昇進で突如訪れた異変

関西在住の大島芳樹さん(仮名・40歳)は、妻子とともに郊外のマンションに暮らす市役所職員。「平凡だけど幸せな人生を送ってきたはず」そう自身でも振り返るが、2年前の4月、突如異変が訪れる。きっかけはヒラ職員から課長への昇進だった。

「役職がついたことで、自分の意思で判断して部下に指示を出さなくてはいけない。その行為に異常な恐怖を覚えたんです」

◆頭の中に響く罵詈雑言

大島さんの心身は、半年もしないうちに悲鳴を上げた。

「たとえば上司に送るメールを作成するだけで、その上司の声で『大島は使えない』『能力がない』と僕への罵詈雑言が頭の中に響く。一挙手一投足に部下や上司、同僚の声がつきまとい、パソコンを前に体が凍りついている状態でした。実際は職場の人に暴言など吐かれたことなど一度もないのに……。

そのうち、メールを一本送るだけで半日かかり、会議に遅れたり、書類の記入ミスも増えましたね。結局、上司の勧めで心療内科を受診、適応障害と診断され休職しました」

◆頭の中に飛び交う声の正体は…

休職中、大島さんは心療内科だけでなくカウンセリングも受けることにした。そこで判明したのが、幼少期のトラウマと現在の症状の意外な関係だった。

「僕が小学校低学年のころ、両親は不仲で夫婦喧嘩が絶えませんでした。専業主婦の母にとって一人息子の僕はまるで小さな恋人。父の愚痴を聞いては母を励ますのも日課でしたね。実は、頭の中で響いていた“声”は夫婦喧嘩の際に飛び交っていた暴言や、母が愚痴っていたときのセリフとほぼ同じ。業務中に感じていた恐怖は幼いころ両親の喧嘩を目の当たりにしたときの感覚にとても似ていたんです」

◆脳内の暴言や恐怖感は、トラウマの再体験だった

余裕のない両親に甘えることができず、大島さんは自分の気持ちを押し殺しながら、家庭で居場所をつくってきた。

「両親に振り向いてほしくて、小学生のころテストはいつも満点。100点だと親は一瞬喜ぶのですが、僕の努力を褒めてくれることはありませんでした。甘えたいという気持ちを伝えたことはなかった。心理カウンセラーの見立てでは、職場で上司として自分の意思を示そうとした反動で居場所を失う恐怖が蘇り、トラウマの蓋が開いたのではないか、とのこと。脳内の暴言や恐怖感は、幼少期のトラウマの再体験だと説明されました」

現在は仕事に復帰しているという大島さん。症状の根底にトラウマがあると知り、適切なケアを受けたことで回復に向かっている。

取材・文/SPA!第4の発達障害取材班

―[見落とされた[第4の発達障害]]―

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