政府が国民に「貯蓄から投資へ」を奨励するなか、SNSでは頻繁に投資関連の広告が表示されるようになった。有名人が広告塔になっているケースも多いが、それらのほとんどは詐欺だった!社会問題化するSNS投資詐欺の手口とは?
◆交際相手にお金を借りて、ボーナスも注ぎ込んだのに
介護職で収入が低く、老後資金に不安を抱えていたと話す前田さん。昨年10月にSNSで表示されたニセひろゆきの投資スクールの広告を発端に詐欺被害に遭った。被害額は120万円だという。
「ひろゆきさんは、真実をストレートな物言いで語る著名人というイメージがありました。そんな方がやっているセミナーなら、ぜひ受講してみたいと思ったんです」
指定されたLINEグループに入ると、指南役が登場。指導を受けるには投資しなければならないと言われた。手持ちのお金があまりなかったため、費用面について相談したところ、「5万円からでも可能」だとアドバイスされ、投資してみることにしたという。
前田さんが入金したのは英国のFXサイト「SenXGlobal」だった。専用アプリもあり、ログインすると自分の投資状況が常に確認できたという。
「慎重な性格なので、実在する会社なのか、海外の企業評価サイトなどで確認はしたのですが……」
◆詐欺師に振込先を提示されるがまま、計120万円を振り込んだ
指示に従って投資を始めると、あっという間に利益が出た(実際の残高は架空のもの)。すっかり“投資の先生”を信じていた前田さんは、「外貨への両替が必要」と詐欺師に振込先を提示されるがまま、交際相手に100万円を借り、さらにボーナスも注ぎ込んで計120万円を振り込んだ。
「投資詐欺は、お金に目がくらんだ人が被害に遭ったと思われがちで、周囲から理解されにくく、どこにも打ち明けられないのが苦しい」
前田さんは細い肩を震わせて、そう語るのだった。
◆私の名を騙った投資広告は絶対クリックしないで!
「本当に困っています!」
こう憤るのは、経済ジャーナリストの荻原博子氏だ。荻原氏が詐欺に利用されていることに気づいたのは、昨年6月頃だという。
「私の著書が投資詐欺に利用されていると聞いて驚ました。『投資なんか、おやめなさい』という本を書いているくらいで、投資を否定しているわけですから」
弁護士に相談したものの、対策は思うように進まなかった。さらに、FB広告をクリックすると出てくる、ニセ荻原氏のLINEグループが存在することを知る。
「私はSNSをやっていないのに、FBには100以上の『荻原博子』のアカウントがある。次から次に出現するので、とても潰しきれません。警視庁の方に聞いたら、犯人は組織的に動いているそうです。みなさん、私の広告が出ても絶対にクリックしないでください」
◆有名人を見て信用してしまう原因は?
プラットフォーマーは対策に及び腰で、期待できないと言う。
「審査を厳しくすると広告が入らなくなるので、あえて緩くしているそうです。法律で規制するしかないでしょう」
荻原氏は、有名人を見て信用してしまう原因のひとつに、政策が影響しているのではと指摘する。
「いま政府は国を挙げて投資を呼びかけているので、やらなければという強迫観念にかられる人が増えているのではないでしょうか。お金を出してしまうと、投資について了承したことになるので、絶対に出さないと決めておくべき。どうしても気になるのであれば、お金を出す前に消費者センターや警視庁などに相談するべきです」
騙されないためには、リテラシーを高める必要がありそうだ。
【荻原博子氏】
経済ジャーナリスト。経済の仕組みを生活に根ざして解説する、家計経済のパイオニア。近著に『知らないと一生バカを見るマイナカードの大問題』
取材・文・撮影/週刊SPA!編集部 写真/Shutterstock.com
―[[フェイスブック有名人詐欺]の実態]―