家電の買い方が変わる? パナソニックも参入した“メーカー再生品”の可能性

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2024年05月26日 07:10  ITmedia NEWS

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家電大手のパナソニックが本格参入した再生品販売サービス「Panasonic Factory Refresh」

 日々の生活に欠かせない家電製品。これまでは、必要になったら家電量販店やオンラインストアなどで新品を購入するのが一般的だった。しかし、その常識が変わろうとしている。それが再生中古家電のメーカー販売だ。メーカー自らが中古家電を整備して販売する点が一般の中古品とは異なり、さらにメーカー保証も受けられる。


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 パナソニックは4月10日に、メーカーによる家電の再生品販売サービス「Panasonic Factory Refresh」を本格スタートした。これまで製品を直販してきたパナソニックストアで、再生品の販売も行うという。


●パナの検査済み再生品は全10カテゴリー


 Panasonic Factory Refreshは、店頭展示品やサブスクリプションでの返却品、そして初期不良などで戻ってきた製品を検査して、メーカー再生品として販売する取り組み。パナソニックでは厳格な出荷基準を設け、さらに1年の保証を付けて出荷するとしている。


 4月10日時点では、ドラム型洗濯乾燥機、冷蔵庫、食器洗い乾燥機、ヘアドライヤー、4K有機ELテレビ、ポータブルテレビ、ブルーレイ・DVDレコーダー、デジタルカメラが対象。そして2024年9月頃を目処に、電子レンジ、炊飯器を追加し、10カテゴリーの家電を取り扱う予定だ。


 現在、ストアに並んでいるのは、現行機種と1〜2世代前の機種だ。今後の製品ラインアップに関しては検討中だという。価格は新品より2〜3割安い。例えば、ななめドラム洗濯乾燥機「NA-LX129CL」の場合、パナソニックストアの新品価格が32万8680円(税込)に対して、Panasonic Factory Refreshでは26万3000円(税込)で、約2割安かった。


 価格に関しては「商品特性や市場動向を見ながら随時検討のうえ設定している」(パナソニック)とのこと。現状では供給できる製品数よりも需要が高いようで、品切れの表示も多い。値下げに関して尋ねると、現時点では否定も肯定もなかった。


 また面白い点としては、Panasonic Factory Refreshではドライヤーなどの一部製品は再生品のサブスクプランを用意していることがある。新品の月額料金よりも安く設定されており、学生でも使いやすい。販売方法は製品カテゴリーによって柔軟に調整していることが分かる。


 また同社は4月10日のPanasonic Factory Refreshに関する記者発表会で、「新・商売の基準」を発表。顧客との関係性について、製品を売った時点で終わるのではなく、「IoT延長保証サービス」の導入により「つながり続ける」こと、使いこなしのサポート、メンテナンスサービスの充実化など、新しいカタチが提案された。


 なお同社はこの再生品販売サービスについて、同社が2022年1月に発表した循環型の持続可能な暮らしを目指す「サーキュラーエコノミー」実現に向けた取り組みである環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」のうち再生・再利用の「循環スキーム」の一環だとしている。


●ヤマダ電機や日立なども再生品販売に積極的


 これまで中古の家電といえば、ハードオフやセカンドストリートなどのリサイクルショップで販売されるものだったが、その流れは大きく変わり始めている。例えば家電量販店最大手のヤマダデンキは、2001年からグループ会社で中古の冷蔵庫などのリユース販売を行っており、2022年には群馬県藤岡市に中古家電を再生する工場をオープン。さらに工場の増設、新設により、再生能力の増強も予定しているという。すでに日本全国の多くの店舗で、リユース家電の販売が行われている。


 2024年3月期のヤマダホールディングスの決算によれば、リユース家電を取り扱う環境部門の売上高は327億2600万円。グループ連結の売上高1.59兆円に対してはわずかな割合ではあるが、家電新製品を販売するデンキ部門と比べて、利益率が約1.9倍と高く、売上高も右肩上がりに伸びている。


 また日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立GLS)も、2022年10月からリファービッシュ(メーカー再生品)品の販売をオンラインストアで始めている。パナソニック同様にメンテナンスや補修、クリーニングを行った上で、1年間の保証付きで購入できる。


●サブスクやメーカー再生品で家電の買い方が広がる


 中古再生品以外にも、家電の販売方法は近年大きく変化している。毎月定額で支払うサブスクリプションプランや登場や、家電量販店で値引き販売をしない指定価格制度などがある。


 メーカー再生品はいわゆる中古販売とは異なり、きちんとメーカー自らが整備している点がメリットだ。環境保全の観点からAppleなどさまざまなデジタル機器販売で採用されており、この流れが家電製品にも広がってきているわけだ。


 しかしメーカー再生品を含む中古製品は、価格設定が難しい。パナソニックは多くの製品で指定価格制度を導入していることもあり、新品の販売価格より2〜3割安く価格を設定できた。しかし日立GLSのリファービッシュ品の価格は、市場とほとんど変わらないものもあり、メリットがやや薄く感じられた。メンテナンスや保証にコストがかかるため、安価に設定しにくいようだ。


 またメーカー再生品は、再生対象の製品仕入れが不透明なうえ、個体ごとに再生に要する時間やコストが異なるため、多くが一点モノとなってしまう。結果的にユーザーが指定の製品を狙って買うのは難しい。


 とはいえユーザーにとって、少しでも安く家電を購入できる点は大きなメリットだ。自動車業界における中古車市場のように、家電の中古市場が今後大きくなっていく可能性は非常に大きい。そのためにはまず、メーカー再生品そのものの認知が広がる必要がある。


 Panasonic Factory Refreshは、4月10日の発表後、在庫切れの製品が多数出るなど非常に好調だとしているが、販売数を追うのではなく、家電の新たな循環スキームの構築を第一義とした取り組みだと強調した。


 今、家電の買い方が大きく変わろうとしている。新品、中古、メーカー再生品、そして、月額払いのサブスクまで、ライフスタイルや予算など、さまざまな条件で選ぶことができる。メーカー再生品は今後、買い方のバリエーションの一つとして広がっていくだろう。


(コヤマタカヒロ)


このニュースに関するつぶやき

  • 大量生産からの転換には丁度いい。それに、日本では再生品でも、途上国では使用するには充分だから輸出という手だてもある。いつまでも大量に作って大量に消費するでは資源がいくらあっても足りん。
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