SNSで友達の赤ちゃんの写真にイイねが押せない。「子どもは可愛い」は呪いですか? <漫画>

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2024年05月28日 09:10  女子SPA!

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女子SPA!

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男女が出会って結ばれて、いつまでも幸せに暮らしました。それはおとぎ話の結末に過ぎず、私達が知りたいのは結末の先なのです。『子どもが欲しいかわかりません』は、男女が結ばれたその先を鋭くえぐった物語。

◆多様化した女性の人生を問う

愛する男性の子どもを生むか、生まないのか。そもそも子どもはかわいいのか?自分の子どもは無条件にかわいい、というのは理屈に過ぎないのでは?と、不安に苛(さいな)まれる女性はきっと多いはず。

「子どもがかわいいと思えない」という、今作の主人公も、そんな自分を疑問視し、もがき続けるのです。

◆生まないことに引け目を感じる?

主人公の青木カナコは37歳。カナコの夫の青木リョウは35歳。子どもを持つなら急いだほうがいい、と背中を押される年齢です。

とはいえ、多忙な出版業界に勤務しているカナコにとって、子どもは未知な存在。仕事に邁進(まいしん)し、結婚後も恋人同士のような付き合いをしている日常に、「子ども」の入る余地がないのです。

カナコの大学の同期、西野マリカも妊活中。ほぼセックスレスなカナコ夫婦は、人工授精に取り組んでいました。セックスがないから愛情がないというのではなく、カナコの夫は子どもを欲しがり、カナコも「子どもを生むなら夫との子ども」という確固たる意思があるのでしょう。

子どもが欲しい、というのは当人にとっては純粋な欲求です。目的は人それぞれだとしても、「欲しい」というのは心の奥底で芽生える本能のようなもの。

だからこそ、愛する夫がいて、子どもを持つのに何の障害もないカナコは、子どもを欲しいかわからない自分が不思議で、苦しいのです。社会的な責任逃れをしているような、大人の女性としてどうなのかと、悩んでしまうのかもしれません。

◆女性の生き方に優劣はない

SNSやLINEで流れてくる、友人や知人の赤ちゃんの写真、妊娠の報告。カナコはイイネが押せず、「おめでとう」も言えません。

ドライに割り切って祝福すればいいのに、自分が社会の圏外にいるようでつらいと、カナコは胸を痛めます。「普通」や「まとも」からあぶれているようで、引け目を感じてしまうのです。

カナコの親友、森本ハルミも仕事と恋愛で人生を充実させています。年上でセレブな彼がいますが、結婚にも子どもにも興味はなさそうです。彼が好きで、彼と一緒にいる自分が好きなハルミは、カナコに言います。

「そこにやっぱ子どもってピースはハマらなくてさ〜」

子ども、結婚。悩んだ末に見つけたハルミだけの幸せが、そこにありました。

カナコの10年来の酒飲み友達、河野サキはワーキングマザー。夫と協力しながら育児と仕事にフル稼働です。そんなサキがカナコに送ったひとことが、「今の生活が変わっちゃう怖さよりも、自分とケンちゃんの子どもに会えないで一生が終わる怖さのほうが勝っちゃったから」。

◆おとぎ話ではないリアルな結末

大切な人達の言葉に包まれて、カナコの気持ちが少しずつ動いていきます。同時に、いつも寄り添ってくれた夫のリョウの大切さを再認識するのです。

リョウの本心を聞き、カナコは次のステップに進もうと決心します。一歩踏み出した矢先に、カナコの体に異変が起こるのです。

子ども、妊活、女性の生き方。ふわっとしたハッピーエンドで終わってしまえば、おとぎ話と同じになります。大人の私達には絵空事になってしまうのです。

現実は一筋縄ではいきません。本書ほどリアルな結末はないのではないでしょうか。

カナコの心と体の行方、そして「子どもが欲しい」という思いはどこへいくのか。ぜひ、あなたの目で確かめてみてください。

<文/森美樹>

【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx

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