『くるり』第8話 記憶喪失は“迷い”に似ている 「勇気」と「正直」の話

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2024年05月29日 14:01  日刊サイゾー

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日刊サイゾー

 それにしてもめるるは本当にかわいいよなー。というわけで生見愛瑠主演の『くるり〜誰が私と恋をした?〜』(TBS系)も第8話。いよいよ佳境に入ってきました。

 今期は全曜日で1本ずつ、週7でドラマレビューを書いてるわけですが、『くるり』がいちばんおもしろいです。今週もおもしろかった。

 振り返りましょう。

■普遍的な言葉を響かせる

 今回は、まことさん(めるる)が過去の自分を思い出すことを恐れ始める回でした。

 事故で記憶を失い、自分が誰で、どんなキャラだかわからない。そうして始まったドラマはやがてまことさんに、自分探しをやめて「今の自分」を周囲にさらして生きていく決意をもたらしました。

 そうして今の自分を信じていくことにしたまことさんでしたが、今度は「もし思い出してしまったら」という不安にさいなまれることになります。自分の手元には、過去に誰かにプレゼントしようとしていた指輪がある。「今の自分」で誰かを好きになってしまった後に、その指輪の彼と出会ってしまったら。そんな懸念がまことさんを足踏みさせることになるのでした。

 そんなまことさんに、記憶を失った後に出会った2人の女性が言葉をもたらします。

 向かいに住んでいたカフェ店員(丸山礼)は「勇気」、若年性認知症を患っているメンタルクリニックの受付女性(片平なぎさ)は「正直」。

 ありきたりな言葉なんですよね。「勇気」とか「正直」とか、当たり前にそこらへんに転がってる言葉です。そういう普遍的な言葉を、しっかりとした重みをもってシーンの中に置いてくるんです、このドラマは。

「勇気」や「正直」という言葉がなぜ当たり前で、ありきたりなのかといえば、それは長い歴史の中で多くの人間にとって必要な言葉だったからにほかなりません。ありきたりであるがゆえに響きにくいこうした言葉をちゃんと響かせてくる。セリフというものに、作り手が実直に向き合っているからこそできることです。

 今回まことさんは、元同僚でいちばん仲が良かった友達の朝日(神尾楓珠)に誘われるままに、デートに出向きます。相手の好意を知ったうえで、「勇気」を持って自分の「正直」を確かめに行く行為です。デートしてみて好きなら付き合うし、その気にならなかったら、それもちゃんと言う。自分に向けられた気持ちに正面から向き合ってみて、その反射で「今の自分」の心がどう動くかを確かめ、その心に従って生きていく。

 朝日とのデートを経て、まことさんは指輪を部屋に置いたまま元カレの花屋に会いに行くことにしました。

 記憶喪失は、迷いに似ています。自分が何を考えているか、どうすべきか、わからなくなってしまったとき。どう行動すべきかを『くるり』というドラマは説き続けています。

■そしてミステリーとしても

 そんなまことさんの周囲にいる3人のイケメンは、3人ともまことさんにウソをついていました。元同僚の朝日は別に仲良くなかったし、元カレの花屋はどうやら元カレじゃなさそうです。一目惚れのIT社長は、一目惚れではなく昔からの知り合いでした。

 まず元同僚については真実が明らかになりましたが、花屋とITがいったい何者で、どんな意図でまことさんに近づいたのか。そして、事故の日にあの神社で何があったのか。ミステリーとしても、ちゃんとおもしろくなってきました。

 そして、ずっと気になっているのです。『くるり』って不思議なタイトル、どういう意味なんだろう。ここまでの完成度を見てると、その結末にも期待しかありません。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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