資格スクールに通いはじめたハズが“怪しいサプリ”を売るハメに!? 真面目な女性のハマった落とし穴とは

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2024年05月29日 16:00  女子SPA!

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女子SPA!

※写真はイメージです(以下同)
―連載「沼の話を聞いてみた」―

「巫女(みこ)の資格で、本業に特色を出したい」
「教養として正しい所作を学びたい」
「巫女として活動したい」

聖なるものへの憧れという需要を拾う、民間の「巫女養成スクール」がある。今回はそこが怪しげな商売の「狩り場」となっている話を紹介しよう。
話をしてくれたのは、50代の石倉絹江さん(仮名)。長年スピリチュアル業界で仕事をしてきたつながりから巫女養成スクールの起ち上げに携わり、さまざまな内情を知る立場になったという。

◆目標は「社会での活躍」

巫女養成スクールを運営しているのは、地方に本部のある神道系の某新宗教団体である。神社庁(※)に所属していない神社であるので自由度が高く、また、スクールから送り出される“認定巫女”たちの活動も同様である。

(※神社庁:神社本庁の地方機関として、各都道府県に設置されている。神社庁の管理指導を行うのが、神社本庁。伊勢の神宮を本宗と仰ぐ全国約80,000社の神社を包括する団体である。有名な神社(伏見稲荷大社や日光東照宮、靖国神社など)も、神社庁に所属しておらず、神社本庁以外にも神社神道系の包括宗教法人があるので、どれが「正当」ということはない。)

そもそも一般的には、巫女になるために特別な資格は必要ないとされているが、このスクールでは「巫女の精神を学ぶことで、社会で活躍できる女性になれる」というようなことがウリにされている。

◆発信源は、マルチの上位会員

コミュニティ提供の場でもあり、スクールが主催するさまざまなイベントで、学びをアウトプットする機会も設けられている。しかしそうした場が、どうもきな臭い。

「巫女養成スクールの生徒たちがイベントに派遣されてコンパニオンのように扱われたり、そこで酔客からセクハラに遭ったり。スクールで教える内容が一部、適当なものであったり。問題は多々ありますが、いちばん見過ごせないのは、スクール内で蔓延(まんえん)するマルチ商法と疑似科学ビジネスです」

巫女認定のための受講は短期間で終了するが、スクールから認定証を授与された巫女たちは、横のつながりを保ったまま、さまざまな活動に参加している。そのコミュニティの古株メンバーが、某マルチ商法会社の上位会員なのだとか。そして認定巫女たちのあいだで、マルチ商法が広がりつつある。

さらに、効果の怪しげな健康器具を販売する代理店の勧誘もある。

スクールの生徒には、絹江さんの元教え子が複数人いる。絹江さんが起ち上げに関わっているとSNSで知ったことが、参加のきっかけだった。それゆえ「責任を感じ、スクールに関わったことを後悔している」と苦しい胸のうちを筆者に打ち明けてくれたのだ。

元教え子である20代の女性は、巫女養成スクールでマルチ商法会社に登録したきっかけを、こう話していたという。

「商売にそんなにガッツリ関わるつもりはなくて、お小遣い程度の収入になればいいかなってくらいの気持ちです! 私もサプリはよく飲むから、会員価格で変えるならありがたいし」

◆スクール側も野放し状態

巷のマルチ商法も、こうした軽いノリで登録する人は多いだろう。仮に損はしなくても、そうした業者へ個人情報を渡すのは、業界内で共有される騙(だま)しやすい人リストに入れられているようなものだと説明しても、後の祭りである。

「スクール発足前は、運営団体からこんな話も聞いていました。巫女の活動を通じて地域とつながり、生徒たちが手に職を得たり、地域のボランティア的に独居老人の助けになったりするといいね、と。

それには私も、賛同していたんですけどね。ところがどんどん、そんな健全な理念を掲げる場から、かけ離れたものとなっていきました」

スクールが開催するイベントでは、生徒たちがそれぞれの活動を生かしたブースを設置している。そのなかには、マルチ商法の商品を使ったサービスを紹介するブースや、謎の免疫水の代理店を募集するブースもあった。

まるで狩り場のような有り様であるが、スクールの運営がそれを許しているのだ。

◆和の文化を伝えるはずが

本来の目的を告げずに勧誘するのでなければ(ブラインド勧誘)、違法ではないが、「和の文化を伝える巫女の催し」に参加してそれらに遭遇したら、なかなかのインパクトである。

個人的には「神仏に携わる人が清廉潔白であれ」とは一切思わないし、巫女といってもいろいろな業態があるだろう。しかしマルチ商法に疑似科学健康器具の代理店勧誘が蔓延する団体とは、吹き溜まり感がすごい。

神聖なイメージの巫女たちが、怪しげな商売に手を染めているとは、漫画のような話である。

スクールの行事の後に、巫女装束でさまざまな業種の経営者たちを接待する場が設けられていると以前の記事でも書いたが、マルチ商法などのビジネスに関わったことから、客の新規開拓のために積極的に参加するというような背景も想像がつく。

◆入ってからしかわからない実態

「要は民間のカルチャースクールなのだから、そうしたノリが嫌ならやめればいい」

そう思う人もいるだろうが、一見はごく真面目なスクールに見えるのが問題だ。入り口は品行方正な伝統あるスクールに見えるのに、入り込むと中の風紀は乱れ、活動は極限までカジュアル化されている。

やめるのは簡単だが、費やした金と時間と傷ついた気持ちは戻らない。スクールに入った絹江さんの元教え子も「伝統的な巫女神楽(かぐら)を習いたかったのに、実際は全然違った」と肩を落としている。

◆対策はできるのか?

こうした事態を回避するには、イメージにつられず、まずはしっかり下調べするしかないのだろうが、昨今はネットの口コミも“やらせ”が横行し、あてにならないものが多いだろう。

この記事のように「こういう例もある」と広める以外に、手はあるのだろうか?

少なくとも関わってしまった絹江さんは、「うつ手がない」と困り果てている。

<取材・文/山田ノジル>

【山田ノジル】
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru

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