元なでしこジャパン・岩渕真奈が語る引退後の変化「結婚への欲は現役時代よりもなくなった」

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2024年05月30日 17:20  webスポルティーバ

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web Sportiva×BAILA special collaboration
feat. 岩渕真奈(元なでしこジャパン)前編

「ふだんはほぼノーメイクで過ごしているので、メイクをしてもらっているときに『こんなワザがあるのか!?』っていうくらい初めての体験が多くて、とても新鮮でした」

 働く大人の女性向けメディア『BAILA』とのコラボ企画(@BAILAでも異なる内容のインタビュー記事を配信)。女性誌で活躍中のヘア&メイクアップアーティスト、スタイリスト、カメラマンが撮影を担当。いつもとは違うメイクで彩り、ドレスアップして撮影に臨んだのは、昨年9月に惜しまれながら30歳で現役生活に別れを告げた元なでしこジャパンの岩渕真奈だ。

 30歳――世界を見渡せば、まだ代表で活動している選手はふんだんにいる。培った技術に経験がプラスされた円熟期と言ってもいい年齢ではあるが......。

 中学校進学時からその才能が花開き始め、15歳で出場したU−17女子ワールドカップで、小さな彼女が巧みなドリブルで突破していく姿は大いに脚光を浴びた。日本は準々決勝で敗れながら、彼女は大会のMVPを獲得。以来、世界中から注目される存在となった。

 そんな彼女にとって、30歳の区切りは、サッカーに十分に力を注ぎ尽くした末の決断だった。

 新しい人生のスタートをきった彼女は、現役時代にできなかった分野で楽しそうにチャレンジしている。今回の『BAILA』との企画もそのひとつだ。

「今は"これをやりたい"というのはなくて、いろいろなことをやらせてもらっていますが、今日みたいな仕事は楽しいです。メイクをしてもらったり、いつもの自分なら着ないような服をコーディネートしてもらったりして、自分では出せないもの(新たな自分や、内面に隠れていた自分)を引き出してもらっている感じがするので」

 そうしたチャレンジを楽しむ岩渕真奈が今、自らのありのままの心境を語る――。

――今回の企画では『BAILA』のスタッフと岩渕さんとでいろいろと話し合いながら、衣装から本格メイクまで決めていきました。実際に撮影を経験していかがでしたか。

岩渕真奈(以下、岩渕)こういう機会ですので、ふだんはあまり着ないような衣装を着たくて、自分でも着られそうで、かつスタッフの皆さんが「いい」って言ってくださったものを選びました。大人っぽく、キレイにしていただいて、うれしいです(笑)。

――ご自身のなかでのテーマは?

岩渕 テーマは「可愛く、カッコよく!」です。「ぶっちーも大人になったんだね」と言われそうですが、私も年相応に見られるようになりたいので(笑)。ポージングなんかも、恥ずかしながらチャレンジしてみました。うまくできているかはわからないですけど......。

――今回の企画のように、サッカーとは関係なく表に出る機会も増えました。

岩渕 今日みたいな撮影は楽しいです! 今はいろいろとやらせてもらっていますが、(試合の)解説はやっぱり難しいです。そもそも語彙力ないんですよね。

 でも、もっと(選手のよさを)うまく伝えたいっていう想いが出てきちゃって......。1回目よりも2回目、2回目よりも3回目と、経験を重ねていくとよくなってきている感覚はあるので、なんか今、無駄に(解説者として)上を目指しちゃっています(笑)。

――それはもう、アスリートの性みたいなものですね(笑)。特になでしこジャパンの試合解説では、最近まで一緒にプレーしていたチームメイトへの想いなどもあるでしょうし、そうした試合の解説をするにあたって、心がけていることはありますか。

岩渕 現役時代に解説される側だったとき、自分のことじゃなくても、誰かのことを否定されるのが自分は好きじゃなかったんです。自分はみんなのよさを一番知っているからこそ、みんなのいいところを伝えられる解説者でありたいです。

 けど、正直難しいですよ。(一緒にやっていたから)よくない部分もわかるわけですから(苦笑)。だとしても、一緒にプレーしていた自分だから言えること、伝えられることもいっぱいあるので、そこは意識しています。

――試合の解説をしていると、思わず身体が動いたりはしないですか。

岩渕 それがほぼないんです(笑)。トレーニングのない生活って、もう幸せでしかない。そう思う自分に気づいて、つくづく「現役時代はがんばってたんだな」って感じますね。全然身体を動かしていないので、ちょっと太ったというのと、ちょっと動いたら息が上がったりしますけど(笑)。

――これだけガラリと環境が変わると、恋愛感や結婚感みたいなものも変化したのではないですか。

岩渕 今、甥っ子が1歳ちょっとなんですけど、カワイイんですよ! でも、その甥っ子と触れ合うようになって、「子どもは大変だぞ」って、そっち側(の気持ちに)に走っちゃって......。カワイイんですけど、これが毎日一緒だったら......って考えたら、自分には無理だなぁ〜って。

 なんか、結婚への欲は現役時代よりもなくなった気がします(笑)。現役時代は、結婚したいから「何歳になったらサッカーをやめよう」とか思う時期もあったんですけどね。

――引退会見のときに、女子レスリングのリオデジャネイロ五輪金メダリスト(48kg級)の登坂絵莉さん、プロテニスプレーヤーの穂積絵莉さんと、障がい者スポーツに関わる一般社団法人を立ち上げるといったお話をされていました。この活動のきっかけは何だったのでしょうか。

岩渕 登坂絵莉とはリハビリで通っていたJISS(国立スポーツ科学センター)で出会って、それをきっかけにして仲よくなりました。穂積絵莉は登坂絵莉と名前が同じで、珍しい漢字なのにそれも一緒で、しかも同世代のスポーツ選手ということで「すごい!」となって、ふたりはつながっていて、そこに(私も)紹介してもらった、という感じです。

(社団法人の話は)最初、登坂絵莉がこの話をしてきて、素敵なことだなと思って、すぐに賛同しました。

――岩渕さんは小学校時代、自閉症の生徒さんと触れ合う経験があったと聞いています。

岩渕 そうなんです。小さい頃から触れ合ってきていたので、自分自身に偏見というものがなく、これまでずっと過ごしてきたんです。

 だから現役時代には、ブラインドサッカーをはじめ、脳性麻痺の障がいがある方とか、デフサッカー(聴覚障がい者のサッカー)の代表チームのユニフォームが、自分たちと違うことに気づいて「何でなんだろう?」って思っていました。「サッカーファミリー」と謳うなら、「みんな同じユニフォームになればいいのに」って、小さな疑問を持っていたりもしました。

 そして今、そういうのを解消できるお手伝いができたらいいな、と。自分たちだから何かできることがあるんじゃないか、と登坂絵莉とふたりでそこに行きついて、穂積絵莉を誘ったら、彼女もすぐに賛同してくれました。

――それぞれの競技で、3人は同じような想いを抱いていたんですね。

岩渕 そうだと思います。ただ、ふたりの絵莉は個人競技で、勝つことがすべてというか。登坂絵莉の場合は、オリンピックに行けるのも(ひとつの階級で)ひとりだけ。穂積絵莉はまた、個人で海外を転戦している。翻(ひるがえ)って、サッカーはチームスポーツ。それぞれ(競技においては)目線が違って、3人で話をしていると、まあ(話が)かみ合わない(笑)。

 それが面白いんですけど、スポーツの楽しさって、勝つことだけじゃなく、いろいろとあるじゃないですか。何かひとつ、サッカーで言えばリフティングとかドリブルとか、それができたってことだけでも、それもスポーツの楽しみのひとつじゃないの?っていう話をしたりして、「それを手助けできる活動をしようよ!」ということで(社団法人の)設立に至りました。

――具体的には今後、どんな活動をしていきたいと考えていますか。

岩渕 たとえばサッカーなら、いろんな障がいを持ちながらも活動している日本代表があるじゃないですか。もちろん、代表になることだけがすべてではないんですけど、おそらくその存在さえ知らないことも多いと思うんです。

 ですから、まずはそういう存在を知ってもらうこと。スポーツをすることで仲間を増やすことができるのは、スポーツのいいところなので、スポーツに触れる機会の少ない子どもたちのところへ足を運んで、スポーツの楽しさを伝えたいと思っています。

(つづく)◆岩渕真奈が30歳で引退を決断したワケ>>

岩渕真奈(いわぶち・まな)
1993年3月18日生まれ。東京都出身。2005年に日テレ・メニーナ入りし、2008年にトップチームの日テレ・ベレーザに昇格。同年、U−17女子ワールドカップに出場して活躍。日本は準々決勝で敗れたものの、大会MVPを獲得して世界的に脚光を浴びる。2010年には16歳ながらなでしこジャパン入り。その年、U−20女子ワールドカップにも出場した。翌年、ドイツで開催された2011年女子ワールドカップに出場し、世界の頂点を味わう。2012年ロンドン五輪、2015年女子ワールドカップ・カナダ大会にも出場し、ともにチームの銀メダル獲得に貢献した。所属クラブは、2012年にドイツのホフェンハイムに移籍。以降、バイエルン・ミュンヘン、INAC神戸レオネッサ、アストン・ヴィラ、アーセナル、トッテナムでプレー。2023年9月、現役引退を発表した。現在は解説者をはじめ、さまざまなことにチャレンジしている。Instagram>>

<スタッフ>
吉崎沙世子(io)●ヘア&メイク、辻村真理●スタイリスト、動画撮影&制作●市川陽介、動画ディレクター●池田タツ(スポーツフォース)

<衣装クレジット>
ベスト¥36300・パンツ¥35200/ティッカ ブレスレット¥15400(イットアトリエ)・ネックレス¥8580(エイチアッシュ)・リング¥22000(オンブル ビジュー)/フォーティーン ショールーム 靴¥59400/ティースクエア プレスルーム(テラ) インナー/スタイリスト私物

ティースクエア プレスルーム 03-5770-7068
ティッカ https://ticca.jp/
フォーティーン ショールーム 03-5772-1304

★★★ 【@BAILAでも岩渕真奈さんの記事を配信中!】 ★★★
→インタビュー記事&写真はこちら>>>「@BAILA」

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