ラーメン店の廃業が急増!山岡家、一風堂、丸源ラーメン…「有名ラーメンチェーン」の業績を比較

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2024年05月31日 09:11  日刊SPA!

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熟成醤油ラーメン肉そばや丸源餃子などが名物の「丸源ラーメン」
 今や日本人の国民食になっており、子供からお年寄りまで大人気のラーメン。しかし、そのラーメン店の倒産が増えている。東京商工リサーチに調査によれば、2023年度のラーメン店の倒産(負債1000万円以上)は、63件(前年度比173.9%増)で、前年度の2.7倍増と大幅に増加、過去最多を大幅に更新した。
 ラーメン店は全国に約1万8000店舗あり、そのうち約半数が個人店(経済産業省の経済センサス活動調査)であり、需要は6000億円市場と推計される。需要の割に競合店が多く、競争が激しくなっているのだ。

◆資本力のない個人店の淘汰が進む

 資本金や従業員数の少ない個人企業のラーメン店も孤軍奮闘しているが、店を取り巻く環境が厳しく、存続が難しい状態である。物価上昇やエネルギーコストの上昇などの状況が変わらなければ、今後もさらに倒産件数の増加が予測される。

 各店とも、価格、正さ方法、麵やスープに使う独自の食材の工夫、トッピング内容などで差別化を図っているが、競争優位に立つのは難しそうだ。

 ラーメンはいわゆる「1000円の壁」があり、1000円未満と内的参照価格(消費者が頭の中で抱いている基準価格)で判断する人がまだ多く、値上げに躊躇する店が多い。そのため、採算割れする店が増えて、資本力のない個人店の淘汰が進んでいるのが実情である。

◆有名チェーンの動向は?丸千代山岡家

 ラーメン店にとっては、水道光熱費の上昇、円安影響も含めた原材料高、人手不足や人件費の高騰は経営を困難にしているが、ブランド力のある店は採算性を重視した値上げを順調に進められて利益を確保している。また、インバウンド客から見れば、海外と比較して安く、円安も加わって高い価値を評価しており、満足度が高いようだ。

 丸千代山岡家は1980年、お弁当屋のフランチャイズとして開業し、1年間ノウハウを習得したのち、直営店を展開。1988年に「ラーメン山岡家」をオープンし、極煮干し本舗、味噌ラーメン山岡家 煮干しラーメン山岡家、餃子の山岡家を運営。直近1年では店舗を11店も増やし、計185店を展開している(2024年4月時点)。

 セントラルキッチンを持たず、各店舗でスープを仕込んでいる。100店舗以上のラーメンチェーン店で、セントラルキッチンや濃縮スープを使わず、手作りによるスープの仕込みや、食材の店内調理を実施していることが大きな特徴であり強みとなっている。

 効率より効果を重視し、ラーメン好きのお客様の満足度を追求しているのが、他社との明確な差別化になっているようだ。店舗立地は主要国道沿いの大型駐車場を併設した店舗が中心となり、24時間営業を基本としている。新規客を常連化し、固定化させて絶対的な支持客を確保し顧客基盤が盤石なようだ。

◆最新の決算資料を見ると…

 2024年1月期の丸千代山岡家の決算資料を見ると、売上は、264億9400万円(前期比41.9%増) 経常利益は21億3200万円(前期比266.1%増)である。経常利益率8%を達成し、過去最高を更新するなど業績を伸長させている。コロナ収束後の人流復活の恩恵を受け、曜日・時間帯を問わず、来店客数が前期比32.5%と大幅に増えている。

 この客数の増加は営業基盤の盤石さを物語っているようだ。原価率は低く28.2%、人件費は34.0%と若干高め、外食の重視する指標であるFLコスト(原価+人件費)は62.2%と理想の60%を少し超えているが、売上が伸びた分の変動費の増加だからそう問題ではないと思う。

 売上・利益とも好調に推移しており、先行きが明るいようだ。財務の安定性も、自己資本比率34.6%あるから大丈夫である。

【丸千代山岡家の決算(2023年1月期〜2024年1月期】
売上:186億7600万円→264億9400万円
原価:52億100万円(27.9%)→74億5800万円(28.2%)
営業利益:5億1400万円(2.8%)→32億9600万円(7.8%)

◆「博多 一風堂」の勢いも著しい!

 一風堂は1985年に福岡県福岡市中央区大名に最初のラーメン店「博多 一風堂」をオープン。国内の直営店の運営は株式会社力の源ホールディングスが担っている。国内は135店舗、海外は15か国・274店舗を展開している(2023年12月時点)。

 海外でラーメン人気を押し上げた立役者は「一風堂」と言われているくらい知名度は高い。2024年3月期の連結決算で、純利益は前期比34.3%増の21億8600万円となった。売上高は前期比21.7%増の317億7600万円、営業利益は同44.5%増の32億9600万円、経常利益は同50.3%増の34億8900万円となっている。

 本業の儲けである営業利益率は10%を超えており、伸長著しい売上と共に今後のさらなる成長が期待できる勢いがある。ちなみに原価率も30%を下回り29.5%とかなり優秀な原価管理をしている。
 
【力の源ホールディングス決算(2023年3月期〜2024年3月期】
売上:261億1600万円→317億7700万円
原価:77億4800万円(29.7%)→93億6700万円(29.5%)
営業利益:22億8100万円(8.7%)→32億9600万円(10.4%)

◆バブル崩壊から再スタートした「田所商店」

 味噌ラーメン専門店「田所商店」の店舗数も、2019年の109店舗から、コロナ禍においても毎年11店、14店、21店、7店と出店し続け、4年間で48.6%の大幅増と勢いがある。運営は株式会社トライ・インターナショナルが担っており2003年に設立されて、業歴がまだ20年と比較的浅い企業である。

 事業内容は味噌らーめん専門店の経営・フランチャイズ展開、自社工場での各種味噌・タレ類など、食材および加工食品の製造・販売・輸出入などである。社長の田所史之氏は、ラーメン・居酒屋で起業し、バブル崩壊で挫折した経験を持っている。その反省を踏まえ、田所商店で再スタートさせたとのことである。

 田所氏の実家は味噌の醸造を家業としており、田所商店の創業にあたっては「置き味噌」に徹底的にこだわったそうである。チェーン売上高132億9700万円、うち海外売上高9億9500万円(2022年度実績)となっている。

◆「餃子の王将」が相変わらず強い!

 ちなみにラーメンチェーン店売上で首位は「餃子の王将」である。餃子の王将は、チェーとしての統一性を遵守しながら、地域に根差した店づくりもしており、基本メニューは画一化し、各店が独自にその地域のニーズに合致したオリジナルメニューを販売するなど地域密着型の経営をしているから業績も好調である。

 餃子の王将はラーメンも600〜700円で、看板の餃子だけでなく麺飯類や酒のおつまみなど一品料理も多数用意され、食事動機や飲み動機などあらゆる機会に利用できるのが魅力である。業績を時系列でみると、効果的な経営戦略と卓越した経営管理技術で安定経営を実現しているのが明白である。

 前年2023年3月期の売上は前期比9.7%増の930億2200万円で2桁に近い伸び率で成長が著しい。今年度2024年3月期の実績も直営全店売上は925億56百万円(前年比109.1%)、と、通期においても過去最高売上を達成している。ちなみに客数8万1735人(前年比105.9%)、客単価1132円(前年比103.1%)はすべて前年を上回っている。

 また、FC売上を含む全社売上高(決算上の売上高)は26か月連続で同月比過去最高を更新しており、通期では創業以来初めて1000億円(1009億8400万円)を突破している。さすがラーメンチェーン首位だけに利益を積み重ねており、自己資本比率が74.6%と財務基盤も盤石である。

◆「丸源ラーメン」の店舗数は2桁成長!

 熟成醤油ラーメン肉そばや丸源餃子などが名物の「丸源ラーメン」はこの厳しい環境下で店舗数を年々増やしており、196店舗を出店している(2023年7月時点)。店舗数の伸びが鈍化しているラーメンチェーン店の中で前年同時期に対して13店舗店を増やしており群を抜いている。

 発祥は愛知県だが、焼肉食べ放題で人気の「焼肉きんぐ」と同グループの物語コーポレーションの傘下にあり、焼肉きんぐに次ぐ店舗数を誇っている。人気の秘密は、無難な味とは一線を画したラーメンの美味しさだ。

 しかしながら、ご家族連れ向けにも適した店づくりであり、ラーメンマニアから家族連れまで幅広い顧客層を標的にした二代目丸源、ラーメンマニアをターゲットの選定した小型店の熟成醤油ラーメンきゃべとんなど、新業態の開発も進めている。

◆今後のラーメン市場から目が離せない!

 せっかくコロナが収束し、人流が復活し、インバウンド効果で外国人旅行者も増えてきている中、日本のラーメンは外国人旅行者にも人気で需要は伸びている。

 観光庁の訪日外国人消費動向調査(2023年7〜9月期)によれば、訪日客が日本滞在中に行ったことは「外食」が首位であった。その内訳で「1番満足した飲食」(単一回答)は「肉料理(焼肉・すき焼きなど)」(32.2%)が首位で、2位が「ラーメン」(18.8%)だった。供給側の要因で、その恩恵を享受できないのは残念なことであり、もったいない話だ。

 廃業が増えて心配される個人ラーメン店も、ラーメンチェーン企業の訴求力に負けないようにインスタグラムを中心にSNSを積極活用し、訪日外国人客とラーメンマニアの誘致にもっと一生懸命になってほしい。

 大手に対抗する個人経営のラーメン店は過小資本のために、真っ向から勝負を挑んでも勝つのは難しいが、追加メニューで単価を上げるなど潜在需要の顕在化のための店づくりへの転換も必要だと思う。その立地のポテンシャルを分析し、施策に反映させて生き残ってもらいたい。

<TEXT/中村清志>

【中村清志】
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan

このニュースに関するつぶやき

  • ラーメン店の協会みたいなのがあれば怒るんじゃないの?日本唐揚協会が「唐揚げに悪い思い出でもあるのか」っておかんむりだったように。
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