過熱化する小学校受験、「親の修業期間でもある」合格する親の3つのポイントとは?

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2024年05月31日 09:15  ORICON NEWS

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子どもに付きっきりで勉強を見ないとNG? 小学校受験合格する親の関わり方
 近くの公立ではなく魅力的な私立へ。コロナ禍以降、有事における対応の速さや、学習環境の良さ、中学受験対策などを理由に、私立小学校へ子どもを進学させる親御さんが増えています。まだ幼稚園に通い出したばかり、文字も読めない子どもたちを、どのように合格に導くのでしょうか。小学校受験専門「コノユメSCHOOL」を運営し、10年以上小学校受験をする親子を見て来た大原英子さんにお話を伺いました。

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■“生活全般”が試験範囲となる小学校受験、「親の修行という部分もあると思います」

 首都圏の小学校受験は、8〜10月に願書受付、9〜12月に面接や試験が行われ、11月にはほとんどの学校の結果が出ています。試験内容も、ペーパー試験だけでなく、行動観察、運動テスト、指示行動、口頭試問、絵画・工作、面接など多岐にわたり、事前の準備や練習が必要です。

 限られた時間の中で子どもを合格に導ける親の特徴として、大原さんは、「言い訳をしない」「子どもを中心にする」「判断力をもつ」の3つを挙げています。

「小学校受験は生活全般が試験範囲。やることが多いので、言い訳をしていると進まないんです。働いているから時間がない、子どもがやらない、子どもの気持ちがわからない、ではなく、そういう現状を前提にして、どうするかを考えるしかない。ポジティブに自分がコントロールできるところをどうしたらいいか考えていけば前に進めるのですが、言い訳をしていると何も現実は変わらないので、『言い訳をしない』ことが大事です」(大原さん、以下同)

 大原さん自身もお子さんの中学受験を通し、子どもが思い通りに動いてくれない歯がゆさは経験済み。その上で、「親のマインドシフト」が大切だと話します。

「受験は、親の忍耐、親の修行という部分もあると思います。私自身は比較的優等生タイプで親に言われたことを素直にやってきたのですが、私の息子たちは全く違う。どうして宿題をやらない状態であんなに元気に学校に行けるかな、と不思議に思うぐらいです(笑)。でも『自分ならこうする』と考えてもストレスしか溜まらないので、自分の成功体験や考え方、こうすべき、こうあるべきをいったん全部横に置いて、子どもがどうしたらもっとやりたくなるかを考える。そのマインドに親がシフトできると、強いと思います」

■受験に必須の習い事はある?「親の言葉は絶大、子どもの気持ちを汲み取るのも励ますのも親にしかできない」

 受験に向けて準備を進めていくうちに、あれもやらせたい、これもやらせたいと課題やノルマが山積みになることも。

「親が出すぎてしまうと、子どもはボーっとして置いてきぼりになってしまいます。親は全速力で走っているのに、子どもは付いて来ていないという状態の家庭は意外と多いんです。子どもの状態を良く見て、子どものペースに合わせて理解させていくのが小学校受験の勉強には必要です」

 受験すると決めたのは親なので、親のやる気が空回りするのかもしれませんが、そこは我慢。小学校受験の隠れテーマは「親子バトル」と言われるぐらい、幼児も「やらされることは嫌」なのです。遊び感覚で楽しく取り組めるよう、子どもとの向き合い方、声掛けの仕方などを親が工夫していく必要があります。これは習い事についても同じです。

「受験に役立つと言われている習い事もあるのですが、習い事で合否が決まることはないので、子どもがやりたいといったものを習わせてあげたらいいと私は思います。何を習うかよりも、習い事をどう親子で取り組んでいるか、それをどう成長につなげているかが大切です」

 子どもが習い事を辞めたいと言ったときも、親の対応が子どもの成長を左右します。

「本当に辞めたがっているなら辞めさせてあげて、何かにつまずいているだけなら親が手助けしてあげるなど、子どもの気持ちが大事なんです。3歳から6歳って、まだ生まれて数年じゃないですか。つい最近なんですよ。そんな子たちが親の声掛けによってすごく頑張れるんです。親の言葉は絶大で、苦しい気持ちを汲み取るのも、励ますのも親しかできないこと。そこで親御さんが子どもをしっかり見てあげると、逆に成長の機会になってくれるんです」

■ネット上にあふれる情報「良し悪しを判断する能力が求められる」

 限られた時間の中で前向きに、かつ、子ども中心に取り組んでいても、“お受験初心者”の親子が合格への最適解を見つけるのは困難なケースも多いです。ましてや、ネット上にあふれる情報が正しいのか、自分たちに必要なのかを判断するには経験値が圧倒的に足りません。それを補うのが、経験者や専門家のアドバイスであり、大原さんがサポートしたいと考えている部分の一つです。

「小学校受験って中学校受験よりも情報量が少ないのでブラックボックスというか…情報の正しさや子どもとの相性などを、一つ一つ判断していく必要があるんです。コノユメSCHOOLでは、私が精査した情報の提供や、在校生の親と話す機会を設けていますし、オンラインライブ講座での質問も受けていますので、足りない部分や抜けている部分を補えているのかなと」

 例えば、志望校選びや願書対策の情報収集は熱心なのに、合否に直結する入試傾向分析が手薄になる家庭が多いので、その点も注意して欲しいと言います。

「小学校受験には、『巧緻性(こうちせい)』といって手先の器用さを見る試験があるのですが、雙葉小学校では1分程度でひたすらビーズを通して玉結びをする…など、毎年短時間でちょっとした作業をすることが求められます。一方、横浜双葉小学校は、紙を丸く切って色を塗って画用紙に貼って束ねる…などと指示がいっぱい出て、それをどんどんやっていくような試験が出ます。このように学校ごとに試験内容の傾向が違うのに、的外れなものを練習してしまう家庭がけっこうあるんです」

 入試傾向が変わる可能性があることを前提に土台を固めることは必要ですが、最終的な学校別の対策も必要。それなのに親御さんの中には、なんとなく幼児教室に通わせて満足している方やイメージで動いている方が多いのです。

「生活にまつわる全てが試験範囲となる小学受験。洗濯物をたたんだり、お弁当包みしたり、体操もあれば、みんなで飾り付けしたりゲームしたりと。試験範囲が幅広すぎるからこそ、志望校にどんな試験が出るかはちゃんと見ておく必要があります」

■親の心配が子どもを落ち込ませる「1つ1つの変化を重く受け止めすぎ」

 4月〜5月は様々な環境の変化があり、子どもの集中力がなくなってしまうケースも多く見られます。イマイチやる気がでない五月病のような状態で夏休みに突入し、スランプのような状態のまま、受験直前期に突入してしまうご家族も。このスランプ状態から立ち直るためには、どのようなことができるのでしょうか。

「そういう時は、しっかりと休ませることが大事です。4月になって年長さんの役割が出てきたり、先生が変わったり、部屋が変わったり…大人だって環境が変わったら緊張して疲れるじゃないですか。子どもはもっと小さくて、もっと疲れやすいのに、親御さんはスランプだと思ってしまう。お子さんの1つ1つの変化を重く受け止めすぎちゃうんです」

 親にとっても、それが初めて経験する子どもの受験であることが多いです。経験値が低いため、不安で繊細になってしまいます。冷静になって周囲を見れば、皆が同じような状態なのに、自分の子どもだけを見て心配を募らせてしまのです。そんな時、一番良くないのは、「親も元気をなくしてしまうこと」だと大原さんは言います。

「子どもが元気なくなる大きな理由のひとつが親なんです。親が心配して、『大丈夫?』『できた?できてない?』と言い続けていると、呪文のように聞かされ続けた子は『自分はできてないんだ』『元気がないんだ』って思い込んで、元気がなくなっちゃうんです。だから、何かうまくいかないと感じた時は、親がリセットしなければいけないんです」

 ところが、多くの親御さんは自分がリセットしなければならないとは思っていない。そのため、親子ともに元気のないまま悩み続けてしまうのです。

「子どもがスランプだ、元気がないと感じたら、いったん落ち着きましょう。大丈夫です。3ヵ月前と比べてみてください。できることがすごく増えているはずですから」

■幼い子どもには酷? 小学校受験の経験をどのように“糧”とするか

「昔は模試だと言って本番に向かわせることが多かったのですが、今は子ども自身が受験と認識して受ける時代。面接で、『この学校の名前はなんでしょう?』『なんでこの学校に来たの?』と聞かれるので、子どもが本番と意識していかなければ対処できません。だからこそ、不合格だった時は親子ともに自分のせいだと落ち込んでしまうこともあります。でも、どれだけ頑張っても落ちるときは落ちるのが受験です。全力でやっても、いいときも悪いときもあり、それは誰のせいでもないんです」

 社会人になってからは結果だけが求められることもありますが、子ども時代の失敗は成長のプロセス。全力でやったのなら問題ないと大原さんは断言します。

「10年ほどスクールを運営していますが、実は小学校受験がうまくいかなかったご家庭から連絡をいただくこともあります。『小学校受験は全部落ちたけど中学受験で難関校に受かりました』とか『学ぶ習慣がつきました』とか『これを頑張ろうって決めたことをその後も頑張って特技になりました』など、物事に対する取り組み方を幼い頃から学んだので頑張れたという声をいただけるんです。合否に関わらず、小学校受験の範囲は生活全般なので、この時期学んだことは、生活力や考え方、プレゼンテーションなどの土台になると思います」

 準備に必要な時間や労力は親子共に相当なものになる小学校受験。それでも、子どもの将来を考え、悩み、一緒に過ごした時間は、子ども自身と家族の成長を促す大切な時間となることは間違いありません。

取材・文/森下なつ

PROFILE/大原英子
株式会社コノユメ 代表取締役
東京大学卒業後、大手通信会社勤務。その後、自身の母親が30年続けている受験絵画教室のメソッドを活かし、2011年小学校受験専門幼児教室設立。小規模教室ながら、慶應義塾幼稚舎42名、早稲田実業学校初等部39名、慶應義塾横浜初等部46名(2022年度実績)など、難関校に多数合格者を輩出。2022年5月に株式会社コノユメを設立。苦しい子育てをクリエイティブでエキサイティングな子育てに変えるべく奮闘中。自身も二児の母。

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  • でも、慶応や早稲田程度じゃ本当に優秀な人はいないからなぁ。
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