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自転車で「捨てゼリフ」を残していくママ友
「上の子同士は小学校で同級生、下の子は同じ保育園に預けているママ友がいるんです。仲良くしてきたのに、なぜか急に嫌われるようになったみたいで……」困惑したようにそう話すジュンコさん(40歳)。上は8歳、下は3歳になったばかりだ。そのママ友・ユイさんとは働くママ同士、この3年ほどいろいろ話し合ってきた。
「ユイさんの下の子は5歳だから、育児についても相談に乗ってもらったことがあります。うちの下の子は男の子で、妙に頑固で凝り性なところがあるので」
働き方の変化でママ友と亀裂が?
ユイさんの態度に変化があったのはジュンコさんが働き方を変えてからだという。ジュンコさんの勤務先がリモートワークを推奨するようになり、昨年あたりからかなり勤務時間が自由になった。「むしろ会社に来なくてできる仕事なら、来ないでくださいというノリに変わってきちゃって。ただ、月に1度は出社しますし、うちの部署は月に3回は集まることになっています。
でもよほど突発的なことがなければ月4回の出社でいい。もちろんその分、家ではけっこう濃密に仕事をしなければいけないんですが」
それでも出勤時間が減らせるのは非常にありがたかったとジュンコさんは言う。保育園にも毎日お迎えに行ける。
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「ユイさんともそんな話をしたことがあります。彼女は毎日出勤しなければいけないので、『いいわねえ、羨ましい』と。そのとき、ふと彼女から漏れた言葉にびっくりしたんです。
『聞いている限りでは、あなたの仕事、たいしたことしてないのにね』って。え、と思ったんですが、彼女は子どもを自転車に乗せて走り去っていきました」
それ以来、ジュンコさんが驚くような「捨てゼリフ攻撃」が続いているのだという。
「そういう子って…」またも捨てゼリフ
数カ月前、保育園に息子を迎えに行って、のんびり帰る道すがら。交差点で自転車に子どもを乗せたユイさんと顔を合わせた。ところが、信号が青に変わっても息子は道端の雑草に気をとられて動こうとしない。「ほら、行くよと声をかけても動かない。しょうがないなあと手をつないで一緒にしゃがみこもうとしたら、ユイさんが『行かないの?』と。こんなんだから、もうちょっと付き合うわと苦笑したら、『信じられない。そういう子、ろくなもんにならないわよ』と。
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せっかく以前より時間的余裕ができたから、頑固で凝り性な息子に付き合ってみようとジュンコさんは思っている。それをユイさんにとやかく言われる筋合いはない。
ユイさんはいつもせわしなくて大変そうだとは思うが、かつてジュンコさんも同じだった。たまたま環境が変わっただけなのだが、ユイさんはそれが気に食わないのだろう。
表向きは頼れるいい人キャラ
「自転車での捨て台詞攻撃は続いています。彼女の姿を見たら私は離れるようにしているんですが、信号待ちのときなど自転車でそばに来るんですよ。それで『息子ちゃんの偏執狂は病気じゃないの?』と先日も言われました。『いいかげんにしてよ』と叫んだのですが聞こえたかどうか。ただユイさんって、責任感が強いから周りから頼られてもいるんです。小学校では役員をしているし、保育園でもバザーなどの中心的人物。
だから彼女のことは誰にも相談もできないし愚痴も言えない。みんな頼れるいい人だと思っているから」
だからひとりでじっと我慢するしかないのだという。彼女の本性を暴いてもしかたがない。それとなく離れ、言葉を交わさないように気をつけるしかないと思っているそうだ。
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ユイさんにとって、ジュンコさんに嫌味を投げつけるのが唯一のストレス解消になっているのかもしれない。そう考えると、腹立たしいけど、なんとなくやるせない気もすると彼女はつぶやいた。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))