半年前の円安が現在の生活を直撃? 電気代を左右する為替レートや資源価格 補助金終了の余波で夏の電気代はさらに上昇か

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2024年06月01日 19:10  まいどなニュース

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電気代に頭を悩ませる季節に(naka/stock.adobe.com)

これから夏に向けてエアコンの出番が増えてきます。そこで気になるのが電気代です。最近のニュースでは、円安が進んでいると報じられています。円安が続くと、電気・ガス代といった光熱費が上がってしまうと言われています。

【グラフ】為替レートと燃料費調整額の関係…3か月の時を経て、こんなにシンクロしています

東京電力のデータをもとに試算してみると、夏の電気料金は8%弱は値上がりする見込みです。また、円安が夏以降も続くと、秋や冬に電気・ガス料金は大きく上がってしまう可能性があります。

ずっと日本で暮らしていると、円安は遠い世界の出来事と思われるかもしれません。しかし実は、円安が続くと、電気料金など光熱費が増えていく仕組みになっています。また、電力会社が過去最高益をあげたと報じられましたが、円安にあらがうように値下げを続けるのは難しそうです。

円安が進むと夏の電気代が値上がりするのか?

7月分の電気料金が、電力各社から発表されました。例えば東京電力では、平均モデル家庭では8,930円の料金になると見込まれています。6月分の平均モデル料金は8,538円ですので、6月分と7月分を比べると5%近く電気代が高くなる計算です。これから夏の電気代はどうなるか、そして円安がどう関係するのか、を見ていきましょう。

日本で電気を作るには、原油や天然ガス、石炭などのエネルギー資源が必要です。為替レートが円安になると、海外のエネルギー資源を買うために、より多くの日本円が必要になります。日本では4月以降、円安がどんどん進みました。今年1月は1ドル=146円ほどだったのが、4月29日には1ドル=160円まで円安が進みました。

電気・ガス料金は、原油や天然ガスなどの燃料費にあわせて、自動的に調整される仕組みです。こうして通常の電気料金に上乗せ、あるいは減額される部分を燃料費調整額といいます。燃料費調整額は、半年〜3カ月前の資源価格や為替レートをもとに決められます。

東京電力が公表している「燃料費調整のお知らせ」を見てみましょう。7月分の電気料金では、今年の2月〜4月の為替レートの平均である1ドル=149.7円をもとに、原油や天然ガスなどの燃料費を計算しています。半年〜3カ月前の為替レートを使って、今の電気料金がいくら値上がりするかを求めます。

8月分以降の電気料金には、より円安になった為替レートが反映される見込みです。5月以降は1ドル=155円とおいてみると、

・8月分は1ドル=152.0円(3〜5月の平均)
・9月分は1ドル=154.0円(4〜6月の平均)

といった為替レートを使って、燃料費調整額が計算されます。

7月分と9月分の電気料金で用いられる為替レートを比べると、1ドル=149.7円から154.0円へと円安となっています。これだけで3%ほど電気料金を押し上げる効果があります。

さらに、7月分の電気料金からは、激変緩和措置による補助金も終わります。東京電力が試算した平均モデルの計算例だと、6月分の電気料金は補助金なしだと9,006円、ありだと8,538円です。補助金により5%ほど値下がりしています。補助金がなくなる7月分以降は、それ以前と比べて5%ほど電気代が上がります

円安と補助金終了の2つの影響を合わせると、夏の電気料金は8%弱値上がりする見込みです。

円安がさらに進むと、冬の光熱費も上がってしまうおそれ

夏が過ぎても円安が進んでいくと、秋以降の光熱費はさらに上がるおそれがあります。特に、冬の電気・ガス料金が増えないかが懸念です。

2022年7月〜2023年5月には、円安や資源価格の高騰により、電気料金の値上がりが大きな話題になりました。この時期の円安と燃料費調整の動きを、データから見てみましょう。

東京電力の平均モデル家庭の設定にもとづくと、2022年7月には1,000円ほどの燃料費調整額でした。2023年に入ると燃料費調整額が3,500円近くに達しています。電力自由化に伴う新しいプランを契約した家計は大きな負担を強いられ、ニュースにも取り上げられました。

当時、電気代が上がっていた理由の1つが円安の進行です。日本銀行が公表している当時の為替レートを見てみましょう。燃料費に反映される為替レートは

・2022年7月分料金では、1ドル=118円(22年2月〜4月の平均レート)
・2023年1月分では、1ドル=140円(22年8月〜10月の平均レート)

でした。円安の効果だけで、半年間に20%弱も電気代が値上がりしました。円安が私たちの光熱費に大きな影響を与えていたことが分かります。

今後、円安は落ち着くだろうという見解もあります。しかし、海外と比べて金利が低い状況が続けば、さらに円安が進んでもおかしくありません。円安の進行は、3か月〜半年たった後に、燃料費調整額を通じて電気代の値上がりにつながります。秋以降の光熱費を考える際には、これからの円安の動向も大きな材料になります。

電力各社が過去最高益を達成したというニュースが報じられていました。そんな中、なぜ電気代が上がるのか不思議に思う方も多いかもしれません。しかし、

・電力の安定供給のために、発電・送配電施設の更新が必要である
・今後、天然ガスなどのエネルギー資源の値上がりが予想されている

ことを考えると、電力会社は多額の資金を必要としています。円安が進んでしまうと、電気料金の値下げに期待するのは難しいかもしれません。

円安が続いたら、少し貯蓄を増やしてみましょう

これから夏を迎えるにあたり、円安を通じて電気代がどれくらい上がるかを見てきました。円安と補助金終了の影響により、9月にかけて電気料金が1割弱ほど値上がりしそうです。円安がさらに進めば、秋や冬の電気料金がいちだんと高まってしまう可能性もあります。

日本国内に暮らしていても、円安は私たちの生活に影響を与えます。私たちにできるのは、日常生活の中で、円安がどれくらい進んでいるかを知っておくことです。為替レートは、新聞やインターネットの経済記事などで毎日報じられています。そして円安が続くようなら、貯蓄を少し増やすように心がけてみてください。貯蓄があれば、将来の電気料金の値上がりにも備えられます。

【参考】
▽日本銀行 主要時系列統計データ
▽TECPO 燃料費単価調整等一覧

   ◇   ◇

◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。

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  • 飲み屋街の電気を消せばいい。どうせ入らないよ。
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