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「今年4月、神戸市立医療センター中央市民病院で、ステージIの大腸がんの患者が告知日に来院しなかったことから放置してしまい、1年3カ月後に他科の医師が告知忘れに気づいたときは、ステージIIIに進行していた医療事故が判明。
3月には、岐阜県の東海中央病院が、肝臓がん手術を受けた患者3人が医療事故で死亡していたと公表。すべて同じ40代の男性外科医が執刀していたとされています。
さらに、赤穂市民病院(赤穂市)で8件の医療事故を起こし手術禁止までされたという医師が、転職先の医誠会病院(大阪市)で透析治療をせずに患者を死亡させた疑いで裁判沙汰になっています。その医師は現在でも別病院で働いていると報じられています」(全国紙記者)
考えられないような医療事故が相次いで報じられているが、医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんは、こう語る。
「一般的に誤診はごくまれに起こるものと思われていますが、人間がおこなっている以上、一定確率で起こります。
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しかし、ほとんどの医師は、事故調査がなければ、ことを荒立てることはありません。カンファレンスで“これはおかしい”と思うケースも黙っているので、隠れた医療事故も多いのが現状。
大病院の730件におよぶ病理解剖録を調べたことがありますが、食道の真菌感染症を食道腫瘍と間違え、放射線を当てて死亡させたケースなども見ました」
こうした医師や、医療事故から身を守るため、患者サイドではどのような対策が必要になってくるのだろうか。実例をもとに、上さんに解説してもらった。
■話を聞いてくれるのが「よい医師」とは限らない
まず、冒頭の神戸市の事例のような告知忘れは、医師の怠慢にも見える。
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「医師の仕事は膨大で、処理能力が求められます。患者への伝え忘れなど、処理能力が低い医師が起こす可能性が高いです。
通常、外来において一人当たり10分も時間をかけてくれる医師を“話を聞いてくれるよい医師”と思いがちですが、処理能力の高い医師は1時間に10人以上の患者を診ることができます。
医師の人間性や相性などは別に、処理能力が高いほど、やるべきことをすぐにやり、やるべきことを忘れたりしないものです。外来の患者のさばき方も見ておくべきでしょう」(上さん、以下同)
告知ミスに関しては、名古屋大学病院でも4月に公表されたケースがある。
前立腺がんの治療のため泌尿器科を受診した患者が、CT検査で肺がんの疑いあったことから放射線医が再検査を推奨したが、泌尿器科医が見過ごし、治療が2年10カ月遅れ、患者が死亡したのだ。
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「あくまで一般論ですが、放射線医から“がんの疑いが濃厚”と報告があれば、素早く対応をしますが“がんの疑いが否定できない”程度であれば、放置してしまう医師もいます。それは、医師のなかに他科の医師に診察を依頼するのを嫌がる傾向があるためです。
院長クラスであれば『君、精密検査をお願い』の一言で済みますが、20代、30代のコミュニケーションが苦手な若手医師は、『この書類の書き方がなってないよ』と注意されたりするのが嫌で、他科へ患者さんを紹介するのを敬遠してしまったりするのです」
コミュ障の若手医師は要注意ということだ。
こうした告知ミス同様、前出の東海中央病院の医療事故のように、医師の能力不足も見分けたい。
「肝臓がんの摘出手術のような大きな手術の執刀医は、基本的に主治医の紹介になります。
医師が紹介するのは、大学の先輩後輩などの縁故と、実績のある医師に大別できます。当然、厄介なのは、前者の縁故です」
ホームページなどで医師の実績を調べることも大切なのだ。
「一生に一回受けるような大手術の場合、セカンドオピニオンを受けておくことも重要。逆にセカンドオピニオンに難色を示す医師は要注意です」
病院や医師の技量を示す、もっとも有用なデータは、症例数だという。
「病院ホームページや書籍などでも調べることができます。症例が多ければ医師の技量も上達するものです。逆に少なければ、未熟である可能性があります」
■名前確認をきちんとしているかも重要
ありえないような患者や検体の取り違えも報告されている。白内障手術の際、患者Aの手術中に、看護師は患者Bの手術だと勘違いして、他人の眼内レンズを誤って挿入した事例が、昨年12月の『医療安全情報NO.205』(日本医療機能評価機構)で報告されている。
少しさかのぼって2021年には、千葉大学病院で、乳がんのある左胸の標本を右胸と勘違いするなどして、本来必要のない右胸も摘出してしまった事例が報告された。
「前述のとおり、まずは病院の症例数を見ることが重要です。
また、このような大きなミスが起こるのは、経営が悪い病院で起こりやすい。経営難に陥れば人件費から削られ、医師の疲労によってミスが起こりやすくなると考えられます。
スタッフ不足の場合、医師や看護師が雑務に追われたり、疲弊した表情をしていたり、服装が乱れていたりするものです。また、古めかしい医療機器が多い、昼間、医師が他院にアルバイトに出かけ“無医村”となっている病院なども要注意といえるでしょう」
ケアレスミスは、クリニックでも起こりうる。
「電子カルテであれば、同姓同名はアラートが鳴るので気づくのですが、受付で呼び出した患者が、別人だったということもあります。
患者さんにも知ってほしいのは、医師が患者名や顔を覚えているとは限らないこと。診察、検査、薬局などで、医療機関がしっかり患者の名前を確認するかも、医療の質を見極めるポイントです。
別人のカルテを見て診察している場合、誤投薬の原因にもなってしまいますので、症状など話がかみ合わない場合は、確認を求めることです」
いまや、患者の“医療機関を見る目”も求められているのだ。
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