納期ギリギリまで粘って提出した資料がやり直しに…… 上司が求めるものとズレる原因と、完璧主義から脱却するための3つのポイント

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2024年06月04日 17:00  ログミー

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上司に依頼され、力を入れて作った提案資料がやり直しに……

島名祐紀氏(以下、島名):では事例をもとに、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。営業職5年目の田中さんのケースです。上司から顧客への提案資料の作成を依頼され、締め切りは1週間後です。田中さんはさっそくPowerPointで資料作成を始めました。

きれいなデザインを考えて、30枚の構成の中から1枚1枚丁寧に作っていき、深夜残業しながらも、納期ギリギリで提出できました。それを上司に見せたところ、こんなことを言われました。

「あれ? なんで現状分析のデータがたくさん入ってるの? もうすでに先方には提案してあるんだけど」「それよりも肝心のスケジュールが入ってないけど、これ技術部と調整してる?」「デザインがちょっとカラフルだなぁ。これは先方の役員が見る資料なんだけど、ちょっと見せられないんじゃない?」。

田中さんは「すいません、すぐ作りかえます」と言ったものの、上司からは「もう時間ないからこっちでやるよ。それよりも明日のW社への部長同行。大事な面談があるけど、準備終わってるの?」と。

田中さんは「いや、この資料にかかりっきりで、これからやります」とバツが悪そうに答えます。上司からは、ぽつりと「仕事のやり方、改善したほうがいいね」と言われた……というケースです。

これは「痛いな」「あるな」って思われた方もいると思います。ぜひみなさん、この事例を見て共感するポイントを、チャットに投稿をお願いいたします。「頼まれた時に力が入ってしまう」、わかります。パワポを作ってると、つい細部にこだわってしまいますよね。

「評価されたくて、自分が思う完璧な状態で提出したくなる」「デザインにこだわってしまう」。確かに。「資料を作ることのみに一点集中になって自爆する。ほかのことは忘れてしまう」「もっと良い資料を作成したい。後悔したくないからもっと時間をかけたい」。

「納期ギリギリ」「完璧はキリがない」「自分でなんとかしようと思っちゃう」。「途中の現状報告を入れてないところ」、改善点までありがとうございます。「1発でいいものを作ろうとする」「情報量が多くなっちゃう」……たくさん挙がってきましたが、古川さん、いかがでしょうか。

5年後も仕事のやり方を改善せずにいたらどうなるか?

古川武士氏(以下、古川):いやぁ、わかりますよね。この5年目の人が、めちゃめちゃ仕事ができないかと言うと、決してそんなことはなくて。やはりみんなこういう道を通っていく。大切なことは、こういうところにハマった時に、次の段階にいけるかどうかだと思うんですよね。

島名:「毎日忙しくて、残業が深夜に及ぶ」というコメントもありました。そういうふうにがんばってらっしゃる方もいますね。もう1つ聞いてみたいと思います。もし田中さんがこのまま仕事のやり方を改善せず、5年間キャリアを重ねたら、どんな未来になりそうでしょうか。ぜひこちらもチャットに投稿をお願いします。

「病みそう」「仕事を頼まれなくなってしまう」「本人が苦しい」「ストレスフル」「体調を崩す」「辞めそう」「疲弊」「長時間残業」「パンクする」「プライベートのない人生」「上司の評価が上がらない」「大事な仕事ができない」「会社にとっても無駄な出費が増える」「評価されない」「我が道を行く部下」(笑)。

「周りの信頼を得られない」「相手のことがわからない人っていうレッテルを貼られてしまう」「なんでこうなるのか自分でもわからなくて、とても困っている5年後」、確かに。「僕はこんなにがんばってるのに、なんでだろう」って、自分を責める人生。「本当の幸せに気づけない」「成果があがらない」。古川さん、いかがですか? 

古川:やはり5年目ぐらいまでだとよくあるかもしれないですけど、これが10年目になった時に、どうなるかですよね。やはりメンタル的なストレスがピークになってしまう。あとは、周りから評価されてない感じもどんどん出てきたり。だんだん管理職や主任とか次のステージに周りはいってるんだけど、自分は評価されないままみたいな。

そうすると、「この会社にいていいんだろうか」とか「この会社で役に立ってないんじゃないだろうか」と転職を考えたりするんだけど、転職先でもあまりうまくいかない可能性もありますよね。

上司が求めているものとズレる最大の原因

島名:みんなが気になるのは、「どうやってこれを解決したらいいの?」というところだと思います。完璧主義からの脱却について、解説をお願いしてもよろしいでしょうか。

古川:では、完璧主義から完全主義になるための3つのポイントを見てみましょうか。まず1つ目、「目的とゴールから考える」のが、最善主義の人がやる考え方です。一方で、どちらかと言うとプロセスから入っちゃうのが、完璧主義の感覚かなと思います。

島名:最初に目的とゴールだけをつかむのが大事ってことですかね。

古川:そうですね。まず誰が見るのか、どういう場で使われる資料なのか。あとはそもそも、何かを知ることが目的なのか、意思決定することなのか、実際に動いていくためなのか。

もちろん上司の指示が悪いんですよ。でも部下からしても、「これを作って」と言われた時に、「どの文脈で、誰がどうなることを目指して作るのか」の背景がわからないまま作り始めるのは良くない。上司が求めているものとズレる最大の原因なんじゃないかなと思うんですよね。

島名:確かに。

古川:だから「役員が見る」っていう時点で……。

島名:スライドでイラストを使ってる場合じゃないですよね。

古川:「これは役員に見せるものだったんですか?」みたいなことが起きる。今回は現状の分析はもうやってあって、実行計画の段階で、「みんなに動いてもらうこと」がゴールだった。目的とゴールがはっきりわかっていれば、そもそもスライドの構成も変えられると思うんですよね。

島名:確かに。まずそこが足りてなかったですね。

「できる部下」と思われる仕事の進め方

古川:そうですね。2つ目、一発勝負でいくのが完璧主義で、途中の段階で(確認をとって)ブラッシュアップをするのが最善主義です。

島名:でも、チャットにもあるように、「とっておきのものを一発で出したい」って思いもわかりますよね。

古川:そうそう。「ちゃんとしたものを出さないといけない」「途中の段階で聞いたら、上司も迷惑なんじゃないか」って思うんですよね。自分の側で見ればそうなんですけど、任せる上司からすると、「納期ギリギリでちゃんとしたものが上がってくるのか」って、めっちゃ不安だったりする。

だから最善主義だと、目的を聞いた後で、「まずはラフ案を作ってみるので、そのイメージがズレてないか、明日の午前中までに一度確認させてもらえませんか。それでOKだったら、詳細を作っていくやり方でもよろしいですか?」と言う。

「いつまでにこの資料があったらいいですか?」って聞くと、「1週間後なんだけど、できれば金曜の午前中までにあると、午後に出張するから助かるわ」みたいな。「わかりました、じゃあ午前中までに仕上げます」って言うと、「いやぁ、できる部下だな」となる。

島名:報連相というか、コミュニケーション能力も関わってくるのかな。

古川:そう。段階を追って、相手の立場で(考える)。方向性がズレてないか確認しながら、ちょっとずつ仮で進めて、最後にもう1回修正できるようにバッファをとる。ズレを調整する時間を、最初に見込んでいるかそうでないかで、だいぶ違うんじゃないかな。

最後のギリギリのところで、全部ひっくり返して作り直すことになると、上司がやらないといけなくなっちゃうので。これだと「別の人に任せよう」ってなっちゃうんじゃないかなと思います。

「時間をかけるべきところと、かけないところ」の強弱をつける

島名:そうですね。今2つ教えていただきましたが、ほかにありますか? 

古川:3つ目は、よくパレートの法則(結果の80パーセントは、全体の20パーセントの要素によって生み出されているという法則)で「80:20」って言い方をしますけども。「時間をかけるべきところと、かけないところがどこなのか」の強弱は必要だと思います。

先ほどの例では、現状分析の資料を集めていた。でもそれはもう資料があるから、「前回はこういうふうにやってます」と、確認程度にして、スケジュールを入れないといけない。だけどそこはやってない。

あとは、僕も資料を作る時に思うのは、そもそも提案の時間が15分しかないのか、30分あるのか1時間あるのかによって、資料の枚数がぜんぜん違うじゃないですか。

島名:そうですね。5枚ぐらいしかダメという場合もありますよね。

古川:(そんな時に)30枚も作ったら無駄なんですよね。作ってこられたほうも、説明の時間が長くなるから、無駄だと思う。だから時間から逆算して枚数を決める。あとはフォントがどのくらいの大きさか、とかもあると思うんですよ。そうしたら自ずと情報を削っていかないといけないので。

ちゃんと制約を設けた上で、何に力を入れて、何を(資料に)載せないのかの強弱をつけないといけないんです。イチから要素を足していくと、「あれもこれも」とガチャガチャした資料になって、手直しが多くなる。

島名:うーん、なるほどね。今3つのポイントを教えていただきました。1個目が「ゴールと目的を明確にする」、2つ目が「一気にやらないで、一回出す」。そして最後は「ステップを踏む」ということですね。最後が「20:80の法則」ということで、「上位20パーセントは何なんだろう?」と考えるということですね。

古川:そう、どこに時間をかけるかですよね。

やるべきことは「相手のニーズ」優先で決める

島名:この場合だと、現状分析じゃなくて、スケジュールの実行のところをメインにしてほしかったということですよね。

古川:そうですね。ちょっとしょうもない例なんですけど、先ほどの打ち合わせで「なるほどな」と思ったのは、(相手から)「こういうチラシを作りたい」と言われたので、僕が「じゃあ1週間後までに、今見せてもらったようなものを出しますね」と言ったら、少し怪訝そうな顔をしていたんです。

なんでかと思ったら、「チラシは自分たちのデザインで作りたいんです」って。だから、チラシの中の文言を(僕から)もらえればいいらしいんですね。

島名:「こっちで作りますから」という。

古川:そうそう。その代わり、明日までに文言を出したほうが、1週間後に丁寧に作ったものを出すより、相手にとって親切なんですよね。(大事なのは)相手のニーズなんです。

島名:なるほどね。みなさんいかがでしょうか。ここまで何か気づいたことがあれば、ぜひチャットにアウトプットしていただけるとうれしいです。

「たたき台は大事やね」「プライドは不要」。確かに。ありがとうございます。「目的とゴールが大事ですね」「時間のかけどころが大事」「仮を作って確認して、バッファーを持たせて納品する」「自分に矢印が向いているか、相手に向いているかの違いだよね」。

「途中報告」「相手不在で仕事をすると事故る」「相手のニーズに合っているか」「最善主義が一番効率いいのかも」。そうなんですよね。40点でも50点でも出しちゃうほうがいい。やはり「相手」というのもけっこう出てきますね。古川さん、みなさんのアウトプットを見ていただいて、いかがでしょうか。

古川:これはさっきの5年目の人だけじゃなくて、常に我々に言い聞かせないといけない部分でもあるなと思います。本を作っていてもそうなんですよね。やはり自分が書きたいものがあっても、それを読者の人が求めているかどうかは、自分じゃわからないんですよ。

だから編集者の人とかにどんどん聞いて軌道修正しないといけないんだけど、理想主義は「書き切ってから考えたい」といった発想なんですね。でも一回呼吸を入れて、目的やゴールを考えて、強弱をつける必要があります。これは意図してやり続けるのが重要ですよね。

島名:確かに。ありがとうございます。

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