50歳貯金1300万円。築50年の団地で母と暮らしていますが、子どもの学校近くのマンションへの引越しを考えております

0

2024年06月05日 20:10  All About

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

All About

築50年の団地にお母さまと息子さんとお住まいの50歳のシングルマザーの方。ブラック企業に勤務しているため、退職して在宅ワークをすることを考えています。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。​​​​​​​

今の職場もブラックすぎるため辞めて、在宅ワークを考えております

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回のご相談者は、築50年の団地にお母さまと息子さんとお住まいの50歳のシングルマザーの方。ブラック企業に勤務しているため、退職して在宅ワークをすることを考えています。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

相談者

だーこさん
女性/会社員/50歳
関西/借家

家族構成

母親(82歳)、長男(15歳)

相談内容

シングルマザーで、母と実家で同居しております。

実家といっても自分が幼少期から育った団地で築50年です。家中に結露やカビが発生しても管理事務所はほぼ対応してもらえず、子どもの学校近くのマンションへの引越しを考えておりますが、そこは駅近で便利も良いため、家賃は今の家賃の2倍の10万円となってしまうのが懸念材料の1つです。引越しをしても大丈夫でしょうか?

もう1つは、今の職場がブラックすぎるため辞めて、在宅ワークを考えております。また、家計は母の年金と合算して計算しております(年金は月に12万5000円ほどです)。どうぞよろしくお願い申し上げます。

家計収支データ

だーこさんの家計収支データは図表のとおりです。
相談者「だーこ」さんの家計収支データ


家計収支データ補足

(1)収入について
在宅ワークで10万円が希望ですが、まだ何も見込みがありません。退職金は、100万円未満くらいではないかと推測の範囲で考えております。

(2)ボーナスの使い道
・車の維持費(税金と車検)10万円
・家電等の大きな買い物や予備費として15万円
・旅行・レジャー費10万円
・家族の小遣い5万円
・貯蓄8万円

(3)貯蓄と投資について
貯蓄は生活防衛費として300万円を常にキープする形にして、余剰資金は個別株の購入など、主に投資に回しています。毎月NISAの積立(オールカントリー)に10万円とiDeCoに2万3000円。子ども名義の証券会社の特定口座で5000円を積立。

(4)家計収支について
児童扶養手当は息子が18歳まで、養育費は20歳まで。ですので、その先、手当がないことも不安です。

(5)車について
車両費はガソリン代と自動車保険を月でならした金額です。マイカーローンはありません。車は8年ほど乗っていますが、まだ距離は7万キロほどで調子も良いので、あと5年くらいは乗れるかと思いますが、可能でしたら150万円くらいの中古車を数年のうちに買い換えたいな、とも思っております。

(6)加入保険について
母/
・生命保険(死亡保障200万円)=毎月の保険料7000円ほど

相談者/
・生命保険(死亡保障500万円)=毎月の保険料1160円
・医療保険(終身タイプ、終身払い、入院5000円、他に手術一時金など)=毎月の保険料2000円

子ども/
・医療保険(終身タイプ、終身払い、入院5000円、他に手術一時金など)=毎月の保険料1000円

※母の生命保険と、私の医療保険は、必要なしでよいかということも伺いたいです。

(7)子どもの進路について
高校は公立です。大学は私立になると思います。

(8)公的年金について
現時点で、公的年金の見込み額は月に10万2000円ほどです。

(9)家計を見直すにあたって
育ち盛りの子があることと、家族ともに好き嫌いがないので、譲れないのは食費でしょうか。

(10)母親の介護費について
母の預貯金も生活防衛費の300万円に含まれているため、特に用意しているわけではありません。その点も不安です。

FP深野康彦の3つのアドバイス

アドバイス1:住居費アップ、収入減であれば、支出を削減するしかない
アドバイス2:子どもの教育費は問題ないが、自身の老後資金に不安が残る
アドバイス3:引越しを優先するなら、収入は現状維持が必須条件

アドバイス1:住居費アップ、収入減であれば、支出を削減するしかない

家賃10万円のマンションに引越しをし、在宅ワークで手取り10万円の収入の生活に変わった場合のマネープラン、ということで試算していきましょう。

単純に家賃が5万円増え、収入が11万円減るわけですから、削れる支出を削らない限り、生活が苦しくなります。ただ、急な節約はストレスにもなりますので、まずは食費を6万円に削減するのは難しいでしょうか? 3人暮らしでも、やや食費は高めです。削れない支出として書かれていますが、他の支出は現状維持で構いませんので、食費の削減だけ頑張ってみてください。

食費を6万円にできれば、毎月の支出は25万円となります。一方、収入は28万3000円ですから、差額の3万3000円は貯蓄に回せますが、少々頑張って毎月3万5000円を貯蓄できるようにしましょう。年間で42万円です。児童扶養手当がなくなるまでの3年間で126万円が貯蓄に上乗せになります。

3年後には児童扶養手当2万8000円がなくなりますが、ここでも少々頑張って毎月1万円の貯蓄をしましょう。年間で12万円。養育費がなくなる2年間(今から5年後)で、24万円。ここまでの貯蓄の上乗せ額は150万円となります。

残念ながら、その後は収入が増えない限り、貯蓄は難しいでしょう。在宅ワークに切り替えるのであれば、支出をしっかりと管理し、毎月の貯蓄は確実に行うようにしてください。

アドバイス2:子どもの教育費は問題ないが、自身の老後資金に不安が残る

5年後に、母親は87歳、ご相談者は55歳、子どもは20歳です。この間に子どもの高校、大学の学費が必要になりますが、それは心配ありません。

現在の貯蓄・投資の合計が1300万円、5年間で貯められる貯蓄が150万円で、合計1450万円です。ここから高校が公立として150万円、大学が私立文系として450万円、合計600万円を差し引くと、残りは850万円です。車の買い換えで150万円使えば、残り700万円です。教育費が増えたとしてもほぼ問題ありませんが、ご自身の老後資金としては、心許ないと言わざるをえません。

貯蓄ができないとしても収支が赤字にならない限り、ご相談者が公的年金を受給するまでの間は、現状維持で生活はできます。しかし、厳しい言い方になりますが、それも母親の年金があってこそで、いつかは、ご自身の収入だけで生活しなくてはならなくなります。そのときに収入10万円では、毎月赤字となり、700万円の貯蓄はあっという間に底をつくことになってしまいます。

ご相談者が65歳のとき、母親は97歳。母親に介護が必要になっていれば、母親の年金は介護にあて、ご自身の生活はご自身の年金でまかなうしかありません。このとき子どもが自立していれば、月の生活費は18万〜20万円程度に減っているかもしれませんが、公的年金の手取りが120万円とすると、年間90万円ほどは不足し、貯蓄から取り崩していかざるを得ません。700万円の貯蓄は6、7年でなくなってしまいます。

アドバイス3:引越しを優先するなら、収入は現状維持が必須条件

ここまでは、家賃が5万円アップし、収入が10万円に減ってしまった場合の計算になります。ご相談者に健康不安がなければ、在宅ワークでも転職でもいいので、現状と同じだけの収入を得るという選択もできるはずです。

現状と同じ収入であれば、毎月10万円は多く貯蓄ができ、年間で120万円、50歳から65歳までの15年間で1800万円を貯めることができるわけです。60歳まででも1200万円です。収入15万円であれば、毎月5万円の貯蓄で、15年間で900万円。ご自身の老後資金を準備できるのは、今後10〜15年です。その間に、収入を十分に得て、貯蓄を増やしておく必要があります。

住まいを引越すことが優先であれば、収入は現状キープが必須条件になるでしょう。退職する時期については、慎重に考えてください。賃貸契約にも影響がでると思われます。

最後に、現在、貯蓄300万円に対し、投資が1000万円です。今後、教育費がかかってきます。投資は適宜、売却してキャッシュを確保しておくことも大事です。また、退職後はiDeCoの所得控除のメリットを十分に使えなくなります。投資を続けるなら、NISAだけでいいと思いますが、これまでのように月10万円の積立はできなくなりますので、現預金で貯めることも考えて、投資とのバランスは慎重になさってください。

保険については、母親と子どもの保険は不要です。ご自身の保険は現状維持で大丈夫です。保険解約で浮く金額は貯蓄に回すなど、お金は残しておくようにしてください。

子どもの進学のこと、母親の介護のことなど、これからお1人で担っていくのは大変だと思いますが、どうぞ健康第一で、お過ごしください。

相談者「だーこ」さんから寄せられた感想

深野先生、本当にありがとうございました。気になっていた子どもと母の保険の解約はOKということや、住居費アップと収入減での試算により支出を削減する、教育費のために少し株を売却してキャッシュを多めにするなど、私の細かな疑問をスッと解決してくださり、指標が明確に見えてきました。また、これからの介護予定、子どもの自立後の生活もアドバイスを拝見して覚悟のようなものも湧いてきました。

やはり、マネープランクリニックに思い切って応募して良かったな、と思うと同時に、不安なだけだった未来が自ら切り開いていく未来に変わりました。先生がおっしゃってくださった通り、母がいてこその生活ですので、みんな健康を第一に、生活したいと思います。このたびは本当にありがとうございました。これからも楽しみに読ませていただきます!

教えてくれたのは……深野 康彦さん

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/伊藤加奈子
(文:あるじゃん 編集部)

    前日のランキングへ

    ニュース設定